パンドラの箱、開けゴマ!!
翌朝。俺は目を覚ますと金縛りに遭っていた。
意識はしっかりしているのに、身体が動かな___あれ?
「んー…っ」
金縛りだと思っていたそれは、トウガだった。
ちょうど目の位置が布団で隠れて真っ暗に見え、身体を硬く縛っていたのは、布団ごと俺に抱きつきながら寝ていたトウガだった。
…そっか。下は二人が寝てるから上にはここしか寝るスペースがないのか…。悪いことしちゃったな。
…でも、俺はこんなことなんて、望んでない。望めない…。
「あ、あの…。…起きて。ねえ、起きて。トウガさん」
「んん…ぅ…」
「起きてってば…!」
俺は強引にトウガの身体を引き剥がすと、俺の手と彼に触れた箇所に黒い霧が舞う。
今何か、俺の筋力とは別の力が働いたような…?
「キョウスケ…どうした…の……?」
寝ぼけ眼のトウガは薄目で俺に問う。しかし、その意識は朦朧としていて、今すぐにでも夢の世界に舞い戻ってしまいそうだ。
「どうしたじゃないよ、一緒に寝るなら寝るで布団入る前になんか言ってくれれば良かったのに…。トウガさん、寝づらかったんじゃないの?なにも無理してこんな狭い布団で二人で寝なくても…」
「…いいの…。オレがしたくてしたことだから…。それに…。キョウスケの匂い、と…肌…良かった……やっぱオレ___」
トウガはそこまで言うと睡魔との戦いに負け、再び眠りについてしまった。
…本当にこの人は自由だ……。でもそこが好きっていうか…。なんか憎めないんだよな…。
俺はトウガの前にあぐらをかくと、改めて彼の顔や身体をまじまじと見た。
やはり一番目を引くのは、彼の紫黒色に煌めく、美しい羽根。一枚一枚の羽根はアオサギの羽根のように滑らかで細かく、離れて見ると呪力の影響なのか、紫色に輝いて見える。
…今なら寝てるし、羽根、触れるかな。
俺はそっと、撫でるようにしてトウガの羽根に触れた。本物の鳥の羽根みたいにツヤツヤしていて、それでいてどこかふわふわしていて。でも、形は天使の羽根みたいでなんだか面白い。付け根に手を入れてみる。じんわりあったかい。なんか変な感じ。
「…キョウ…スケ…」
「ヒィッ!?」
俺は慌てて羽根から手を離す。
ヤバい____トウガさん背中向けてたし、完全に油断してた…!
「ヤバいから…オレ…。やめて…?」
「…へ?」
こちらをちらりと向いたトウガの顔は、これでもかというほど赤面していた。
え、え、死神にとって羽根ってそういう場所…!?
「え…そ、そういう…!?だから前触るなって…?」
「い、いやっ!!アレは違うよ!あれは過去の記憶のフラッシュバックというかなんというか…。とにかく、あの時はごめんね。驚かせちゃって…」
「いや、全然…。俺の方こそ、勝手にごめん…」
「ううん!今のキョウスケなら大丈夫!えっと、そろそろ支度して行こうか!二人が待ってるだろうしね!」
「うん!」
そして俺たちは霊界のゆったりとした朝の空気に包まれながら、身支度を整え始めた。
………
……
…
「行こっか」
支度を終えたトウガはジャケットを羽織ると、ピシリと襟を整え、こちらに振り返る。
「うん」
俺はトウガに続き、歩みを進めた。
「あ…っと、その前に」
「ん?」
トウガは俺の手を掴むと、呪力で俺を包んだ。そして私は再びキョウの姿になる。
エミとユウキとはいえ、これから仕事だからかな?
「ありがとう」
「いいえ。外出る時は一応この姿の方が安全だからね」
「…?どういうこと?」
「えっとね、一応キョウスケはオレとセイロク様の所に行った後、オレが対処した手筈になってるんだ。だから、キョウスケが霊界をウロウロしてるってことは絶対にあっちゃいけないことなの。でも、キョウなら別人なわけだから、大丈夫ってこと」
「そっか。あの時トウガさん、セイロクさんのことガン無視して無理やり私を死神にしたんだもんね」
「えっ」
「じゃあ私も気をつけないと!よしっ、行こうっ!」
私は唖然とした様子のトウガを部屋に残し、一人エレベーターへと乗り込んだ。
エミとユウキの元に戻ると、二人はとうの昔に起きていたようで、楽しげに話し込んでいた。
「お待たせ。遅くなっちゃってごめんね」
「おー、おはよー!全然大丈夫だよ。久しぶりにユウキとお泊まり会できて超盛り上がってたトコ!」
「…そっか」
うん、見ればわかる…。
「___キョウー!置いてかないでよーッ!って、ぬああああッ!?!?」
「あっ、トウガさ〜んっ!おはよーございます!なんか可愛いお洋服いっぱいあったから、色々二人で試着してますっ!」
「なっ…なんで…。隠してあったはず……。呪力が無いと開けられないはず…」
「んー、よくわかんないけど、『開けゴマーッ』って二人でしたら、開きました!私たち一人ずつだと開かなかったけど。とにかく、男子禁制なんで!ユウキこう見えてメチャクチャ乙女だし!!ほら、キョウちゃん、手伝って!」
「え、待って、俺中身男…」
「あ、そうだった。ユウキ、どうする?」
「同志なら気にしないよ」
「え」
「ハイ、一名追加ァーッ!!」
「のぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」
私はエミに引っ掴まれると、トウガをリビングに残して寝室へと引き摺り込まれた。
扉の中に広がっていた景色は、度肝を抜くものだった。
一番奥のクローゼットの扉だけが唯一全開になり、トウガのものと思われる女性もののコスプレ衣装がベッドの上にズラリと並ぶ。しかしそれだけでは収まらず、床にも数着、水着なのか下着なのか分からないような衣装があった。
あの人、こんな趣味なのか…。というか、なんでこんなのあるんだ…。
「そういえばキョウちゃんってさ」
「は、はい」
「アタシの身体作ってくれたよね?アレってユウキにもできるの?できるなら、最期のお願い…。ユウキを女の子にしてほし___」
「エミ、いいよ。確かにそんなことできたらめちゃくちゃ幸せだし、それこそもう死んでもいいって思えるけど…。でももういいよ。今こうしてエミに会えて最期に二人きりで楽しい時間を過ごせただけで十分幸せだったし。それに、来世でまたちゃんと男になるか女になるかできれば、その時ちゃんと今世分も幸せになるから。だから、心配しないで」
「…来世って___」
「任せろ」
俺は前に出掛かったエミを抑えると、ユウキの両手を取った。
彼女はきっと俺が思う以上に辛い思いをしている。最初に聞いた話では自殺だと思ってたけど、本当の話では実の母親に殺されていた。それも、ただ肉体と実際の性別が違ったというだけの理由で。
それだけじゃない。それまでの人生で彼女は何回も殺されている。生まれた瞬間も、彼女の肉体と内面の性別が違ったというだけで存在自体を両親から殺され、学校に行っても恋愛感情を殺され、仕舞いには自分自身の感情を殺すことになった。俺以上に、悲しい、苦しい、辛い、痛い、色んな感情を経験しているはずだ。それなら今はただ、俺が出来ることを___。
俺は全神経を集中させるとユウキの手を伝って、彼女の身体に流れる霊力に乗せて俺の呪力を流し込んだ。
すると、彼女は白く温かい光に包まれ、ユウキの面影を受け継いだ、可憐な少女の姿が現れる。元々ユウキは華奢な方ではあったが、更に女性特有の丸みや柔らかさが出て、可愛らしくなった。
「…嬉しい…。ぼく…本当に女の子に…なれたんだね……。ありがとう…本当に…ありがとう……」
彼女から発された声も元のユウキとさして変わらぬ少し鼻の掛かった低めの声だ。
「いいえ。…俺からのせめてものお詫び」
「お詫び…?」
「うん」
「昨日は邪魔しちゃってごめんっていう。それとね。多分この後二人の準備が整い次第、転生の準備に入ると思うんだ。詳しいことは俺もわからないけど、二人は来世では双子として転生することができるらしい。ただ、そのためには相性チェックとかを受けたりする必要があるみたいだから、その辺だけ一応伝えとく」
「本当に家族になれるんだ…」
「まだわからないけどね」
「…わかった!じゃあせっかく女の子になれたんだし、最後にこれだけ…!着替え終わったら、すぐ行く!!」
「好きなだけ着てみなよ。俺たちいくらでも待つし。トウガさんもそれくらい許してくれるだろうからさ」
「キョウちゃん…。ありがとう!!じゃあお言葉に甘えて…!よぉっし、ユウキ!ガチマジの女子会じゃあッ!」
「「オーッ!!!」」
俺は二人の満面の笑みを見届けると、そっと寝室の扉を閉め、リビングへと戻った。
俺は温かな想いを胸にリビングの方へ顔を向けると、いつの間にかトウガの姿は消えていた。
「…あれ?」
賑わう寝室を背に、俺はリビングの中心にあるソファへ腰掛けようと一歩踏み出した。しかし、いつもはそこに居るはずのトウガがどこを見ても見当たらない。
トイレかな…。
俺は部屋の入り口すぐのトイレを見てみるが、中はもぬけの殻。
「トウガさん…?」
じっとりとした汗が俺の背を伝う。俺の知らぬ間に、何かあったのだろうか。それとも俺が何か、要らぬことでも言ってしまったのだろうか…。
「どうしよ___」
よーっす、今日もお疲れ〜( ´ ꒳ ` )ノ
キョウスケだよ〜ん。
そーそー、あとめっちゃ重大発表!!
『死神さん』が遂に!!評価ポイント&感想、頂きましたーーーーーッ!!!!!(゜∀゜ノノ"☆パチパチパチ★
いやーーー、マジめでたいね!
トウガさんなんかはもう喜びすぎて俺の肋骨折るし、(抱く力強すぎて)ジェイは感動の余り呪力漏れで面割れるし、エミとユウキは「パーティーだーっ」とか言ってコンカフェ行っちゃったし…笑
マジで色々てんやわんやだったよ笑笑
でもお陰で更に霊界もみんなも活気づいた感じするし、これからも温かく見守ってくれると嬉しいな!!
そんじゃ、また明日もお楽しみに!!まったね〜〜
ヾ(・ω・)




