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騒乱のコンカフェへ

 

暗闇を抜け収容所に出ると、その景色はどこか懐かしく感じた。あの時と同じように魂たちで活気に満ち溢れ、今日もふわふわとした、和やかな空気が漂っている。


「トウマ。そのコはどんな感じの子なの?」


「んー…。僕と同じでアニメが超大好きで、甘いモノに目がないコだったな。でも、男の子のクセに僕よりも女子力が高くて美意識も高くて、可愛い感じのコだったよ。感情表現は苦手だったんだけどね」


「なるほど…」


さっきからちょくちょく思ってたんだけど、見た目と声と一人称が変わっても、結局喋る内容や所作がエミのまんまだから、結構ヒヤヒヤするんだよな…。本人は気を付けてるんだろうけど…。…って、もしかしてトウガさんも私に対して同じこと思ってたりするのかな…?


「そうだ。丁度お昼時だし、食事も兼ねて食堂に行こうか。あそこならスイーツもいろんな種類が揃ってるし、そのコもいるかも」


「食堂?」


「うん。まあ行けばわかるよ」


トウガは横目でトウマを見ると、雑踏の中へと歩みを進めた。


宿泊地帯から少し歩き、娯楽施設が集うエンタメ地帯。

その中の一角、一番大きな建物が私たちの前にそびえ立つ。あたかも、横浜市のランドマークタワーが麻布台ヒルズに建て替わったかのような景観だ。そしてその中は全部、丸々食堂になっているという。


「___え。この建物全部食堂なんですか?」


「うん。一階の食券機で注文したら、横のエレベーターから好きなコーナーに行くんだ。コーナーごとに雰囲気が違うから、それぞれの食事に合った雰囲気が楽しめるよ。ただコンカフェとかメイド喫茶ってなるとちょっと再現に限界が出て来ちゃうから、その辺は特別なゴーグルを付けて、専用のスペースで食事をしてもらってる。言うなれば、VRみたいな感覚かな」


「なるほど…って、そんなのまであるんですか!?すごい…」


「え、じゃあ___」


すると、トウマは何かを思い出したように私の服の裾を引っ張った。その顔はエレベーターの方を向いていて、何か言いたげだ。


「どうしたの?」


「も、もしかしたら…その…。コンカフェ…期間限定だったけど、あったの。一回、一緒に行ったことがあったの…。狭いところだったけど、みんなそれぞれの推しと来てて、幸せそうで…。ユウキもその内の一人で…。ある、かな…」


「どのくらいの期間やってたの?」


「二十日足らず…。だから部活もあったし、バイトもあったしで一回だけ…」


トウガは顔を歪めると、指を鳴らした。刹那、驚いた様子のジェイが白煙と共に現れる。

文字通り、面からは疲れた様子が滲み出ており、どこか忙しない様子だ。


「そこ、提供は後にして現場に____ってにゅぁッ!?え、ぇ…ぁ…トウガ様っ!?どうかなさいまちたか?」


「確認してほしいことがある。コンセプトカフェで、『トウマ』というキャラクターが出てくるものを探してほしい。期間限定のものらしく、二十日足らずのようだ。頼んだぞ」


「ハ、ハイでちゅッ!!」


唐突に呼び出されたジェイはトウガの指示を聞き終えるやいなや、再びぼわんと音を立てて消えてしまった。


なんだか忙しなかったな。


「…あるかなぁ…。ないなら、どこに居るんだろう……」


「…わからない。でももしそこに居ないならシアターの可能性はあるかも。シアターはとにかく作品数が尋常じゃないから、そこでそのアニメの映画見てるとか。コンカフェがダメだったら、行ってみよう」


「うん、ありがとう」


そして、私たちはジェイが調べている間に簡単に食事を済ませて待つことにした。



結局軽食では時間潰しにならず、そのままブランチを取ることにした。

初めに注文したものに加えてサイドメニューを頼み、その後、食後のデザートに舌鼓を打つ。トウガは特に甘いものに目がないようで、イチゴのチョコソースパフェにずっしりとしたガトーショコラ、フルーツてんこ盛りのしゅわしゅわパンケーキまで頼んでいた。


よく体型維持できるな…。


「あ、あの…。トウガさんって現世ではどんな人だったんですか…?」


「んー、オレ?まあフツーだよ。ちょっと仕事と家族関係でストレス酷かったから、自殺しただけ。周りとなんも変わんないよ」


「…そう、ですか」


トウガは最後に残ったいちごパフェを口に運びながら、平然と答えた。けれど、私からは彼が嘘をついているように見えた。彼は嘘をつく時、右上を見て首を傾げるクセがある。

今回も同じようにして、その仕草をしていたのだ。


…なにがあったんだろう。


「それじゃ、食べ終わったら先にシアター行ってみよっか。もしかしたら、そっちに居るかもだしね」 

「まだ食べてるの、トウガさんだけですよーっ!」


「え、トウマいつの間に…」


「僕、意外と食べるの早いんですよ!」


「ちょっと待って…。急ぐから…っ」


気付かぬ間に一人取り残されていたトウガは焦ったように言うと、唇の端にクリームを付けながら、急いでパフェを食べ進める。

途端に、ジェイがトウガの眼前に現れる。


「「お待たせしましたでちゅ____ッ!」」


突然のことに驚いたトウガは咄嗟にスプーンを引く。


が、反対にその先端はパフェのグラスの底を突き、大きくグラスが揺れる。


「「!!」」


トウガは咄嗟に手を出すが、その手はグラスの下部に触れ、揺れていたグラスは遂にトウガ側へと傾いた。そして、パフェの中身は勢いよく彼の服へと飛散する。


「「ア゛____ッ!!」」


「…ッ!ごごご、ごめんなさいでちゅ____ッ!!」


「だ、大丈夫ですか…?」


ほんの一瞬の出来事だったが、永遠とも言えるほどに長く引き延ばされたその一瞬は、トウガの楽しみを瞬く間に奪った。


「…ジェイ。この件がひと段落したらもう一度オレの所に来い。『調教』してやる」


「ひ、ひぃぃ…っ!?」


「ど、ドンマイ、ジェイ…」


「ボク、人魂にされちゃいそうでちゅ…」


ジェイは面の上に涙を浮かべると、愕然と無い肩(・・)を落とす。しかし、トウマはそんな彼に迫るようにして問い詰めた。


「ねえ!結局ユウキは!?コンカフェはあったの!?」


「そっ、その…。ありましたでちゅ。ただ___」


「ただ何!?」


「いつもはガラガラのそのコンカフェだけが、今に限って熱狂的なファンが来てて大変なジョーキョーなんでちゅ。さっき言われて調べたら、丁度そこを指してるってコトがわかって…。ボクもその応援に入ってバタバタしてて、それであんなコトに…」


「…熱狂的な…」


「ファン…」


私は思わずトウマの方を見つめる。すると二人も同じことを思ったようで、三人で頷いた。


「案内して、ジェイ」


「…!わかりましたでちゅ!」


そして私たちはジェイの案内の元、騒乱のコンカフェへと向かった。

ちなみにトウガさんの服はジャケットだけが汚れていたので、ことなきを得ました。一応。



現場に着くと、そこには目を疑う光景が広がっていた。部屋の中心で抱き合うエンジェビルと、それを見て湧き上がる奥の二人の魂たち。他にも複数のエンジェビルたちが中心のエンジェビルの周りを囲み、何やら盛り立てている。


きっと彼らにはエンジェビルはキャラクターたちに見えているんだろうけど、私目線でいうとシュール以外のなにものでもない。無表情な面を付けた彼らが抱き合ってる様を見ても、どう言えばいいのやら____。


「お待たせでちゅっ!戻ったでちゅ!!あとトウガ様と、そのお知り合いの死神様たちもいらっしゃってるでちゅ!!」


「「…!!!いらっしゃいませでちゅ____ッ!」」


ジェイの一声に中心にいたエンジェビルを除いた全員が振り返る。そして、その内の一人がこちらに向かってきた。


「初めまちてでちゅ!今日はちょっと珍しくバタバタしてまちて…。奥の若いお客さん、初めてのご来店なんでちゅけど、ここ最近ご来店してくれてるお客さんと意気投合したみたいで…。そしたら記憶フィルムがオーバーヒートして…。それからもうみんなで回してるんでちゅ。きっと、ここは全て記憶で賄っているから、現世での妄想が実際の作品との記憶と合体して、パンクしちゃったんでちゅ…!!」


そんなことあるのか…。コイツらも大変だな…。でも、自分の妄想が現実になるって考えたらちょっと楽しそうかも…。コイツらには悪いけど…。


「とっ、とにかくオマエはお客さんの対応を続けるでちゅ。ボクはフィルムの修復に戻るでちゅ…!あ、あの…っ、トウガ様。奥にいるのがトウガ様がお探しの者だと思いますでちゅ…。ボクは作業に戻るので、ここで失礼しますでちゅ…」


「わかった。…無理しないようにな」


「…!ありがとうございますでちゅ…っ!!頑張りますでちゅーーーっ!」


トウガはジェイの余りの縮こまりように小さく笑みをこぼすと、彼を優しく送り出した。


「よし。じゃあ早速行こうか」


「「はい!!」」


私たちは再び気合を入れ直すと、エンジェビルのキャストの壁を越えて、二人の魂へと近づいていった。


「…!ユウキ________ッ!!!!」


キャストの壁を越えると、一つの魂がトウマの視界に入る。彼は一瞬嬉しそうに口元を緩ませたかと思うと、一直線にその魂の元へと突進していく。


「あっ…!トウマ!!」


「「!?」」


当然のごとく驚いたその魂は寸前のところでトウマを交わすと、咄嗟に私たちの方を見て、再びトウマに視線を戻した。


…汚らわしいものを見るかのような目だ…。


「ダレ…?」


「え!?アタシだよアタシ!エミだよ!!!」


「エミは男じゃないけど…。てか、なんでエミのこと知ってんだよ…。軽々しくアイツ名乗んじゃねーよ」


「えっ、え…待って…ユウキ……」


途端にトウマは言葉を失い、私たちの方を振り返った。

そんな彼の瞳には涙が浮かんでいる。


「ねぇ…。どうすればいいの…?」


「…どうすればって…」


私は思わず、隣に立つトウガの顔を見上げてしまった。すると、彼は死神の時(・・・・)と同じ目をして言った。


「一旦、外に出ようか。トウマも、ユウキくんも」


「「は、はい…」」


その場にいる全員が凍りつくような冷え切った声と、ユウキに向けられた刺すような視線は「拒絶」の二文字を選ばせなかった。



私たちが外に出ると、トウガは静かに口を開いた。


「…トウマ。まずキミには、一度死んでもらう必要がある。…けど、こんな場所で人殺しなんてしたら、オレも立場ってもんがあるからね。ちょっと一緒に来てもらおうか」


「…!なっ…!オッサン!!何言って…ッ!?」


咄嗟に、ユウキはトウマを庇う。


「確かにぼくはコイツがエミのこと名乗ったことについては怒ってるけど…!でもコイツは何も殺されなきゃいけないようなことしてないでしょ…!!」


「ふふ、やっぱキミは優しいね?じゃあ、キミも来よっか。…キョウ、キミも手伝ってね?」


「…ぇ」


トウガは転移魔術を起動させ始めると、呪力で私たちを包み込んだ。そして、辺りの景色は黒い光の粒に飲まれて消えていった。

こんばんは、今日も一日お疲れ様でちたでちゅ!

今日からボクたち、『死神さん』のキャスト陣があとがきを担当しますでちゅ!!よろしくどじょー。


えーと、なに話せばいいんでちゅかね?

____お、ジェイ、あとがき担当か。頑張ってるな。

トウガ様!お疲れ様でちゅ!!ボク、初日に任命されたのは嬉しいんでちゃけど、プレッシャーでなに話していいかわからなくて…

んー、こーゆー時は自分の生い立ちとか、今作の見所とか次回予告とか?まあ色々あるな

あっ、じゃあアレがあるでちゅ!

おっ、なんだ?

トウガ様の寝姿は胎児型____

……ッ!?!?!ハイっ、それではまた明日もお楽しみにーーッ!!!


   なんで終わらせるんでちゅーッ いゃオマエが____

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