06話「忍者部隊」だべ
【勇者ベロン】
ドワーフの自称美少女。伝説の魔法アイテム「魔王の杖」が使える予言の勇者である。
前世で観たアニメや特撮の必殺技を魔法で再現でき、変身能力で3分間だけナイスバディになれる。
前世では土建業の作業員だったのでドワーフ界は適職である。
【ボルゲル】
ベロンのお供をするダメなオタク医者。
なぜか軍学や兵法に詳しい。
【フォール】
元法皇庁傭兵隊のレンジャー隊長。
冒険者としても一流の技術と知識を持つ。
【ザーグ】
村人C。酒好きで怪力でお人好し。
良いドワーフを目指して頑張っている。
【若い神官】
やたら魔法や予言に詳しい法皇庁のエリート神官であり冒険者ギルドを運営しているギルドマスターでもある。名前は知らない。
【大魔王】
10000年前に巨人と戦い消滅した。
そのさいに3本に折れた最強魔法アイテム「魔王の杖」と7950年後の巨人と悪魔の復活。そして勇者ベロン誕生の予言を残す。
この冒険者村…というか、この傭兵砦に来てから二ヶ月、俺は相変わらずトンネルの拡張工事に勤しんでいたのだ。
トンネル内に防御用の横穴やら、居住スペースやらを造る。
最近は社長の『あの兄いちゃん』も給料を出してくれる様になった。
いっぱい貯めたら、お姉さんたちの店に行く約束をしてるが、あのお姉さんたちがどんな仕事をしているのかは俺は美少女だから知らないけどな。たぶん。
それにドワーフ式トンネルは涼しくて快適だ。
しかし男の現場だから仕方ないが、毎日肉体労働ばかりだな
まぁ俺は美少女だけどな。
さて今日は峠側の柵を補強する作業だ。
丸太なんて番線が有れば簡単に組めるが、ここでは針金も高級品だ。縄で縛べ。
最強村人Cの名前はザーグという。
大男で腕の太さがドワーフ美少女のコロコロしたウエスト周りぐらい太い。
甲冑着けた傭兵たちを片手で掴んで投げ飛ばせる。
ウソかホントか素手で熊を倒したらしい。空手家か?
しかしコヤツ、腕っぷしは強いが、こういう作業は意外と下手だな。
そんなことでは良いドワーフにはなれねぇべ!
「違うだべ『イボ結び』はこうだべ!輪っかを作って交差した所にこう潜せるだべ。
あ〜『垣根結び』はだな、輪っかを作って交差した所にこうこう潜らせるだべ。
重しを結び付ける時はだな、輪っかを作って交差した所にこう潜らせるのが『俵結び』だべ」
「アネさん、この結び方はどこがどう違うんですかい?」
「名前ぇが違うだ」
「なるほど、さすがアネさんですぜ!」
いや〜熱血指導にも熱が入る。
まぁ俺は美少女だけどな。
さて昼飯食ってたらまた社長の『あいつ』の部屋に呼ばれた。
「なぬっ神馬人だと?」
「ええ、森の奥地、湖の中の小島に現れるらしいのです」
と、例の若い法皇庁のエリート神官兼ギルドマスターが爽に言う。
『こいつ』の名前はまだ知らない。
というか彼が何者なのか今でもよく分からない。
だいたいこの笑顔がすごくウソくさい。
しかしなんで毎回コスチュームが違うんだよ。ギルドマスターと呼ばれてるが、ホントはコスプレ喫茶のマスターじゃねえのか?と疑っている。
若い神官は爽な笑顔を向けてくる。
「その神馬人の棲家に行くためにはですね『あの怪物ども』を駆除しないと近づけないのです」
なんか怪獣退治の専門家にされつつあるな。
「俺の旅の目的はドワーフの三種の神器を探す事だべ。悪いが寄り道はできねぇだべ」
エリート神官はニヤリと笑った
「巨人族の住む世界に行けるのは神馬人ぐらいですよ」
俺はビックリして飛び上がった。
「巨人だと?!なぜそれを知ってるだ?」
若い神官は素知らぬふりで話を続けた。
「あなたのその斧と、ログピック(鳶口)の杖はAクラスの魔法神器です。
まぁそれくらいの魔法兵器なら我々も所持していますけどね」
「へぇ、これってAクラスだったんか。さすがドワーフの鍛治職人だべ」
「Aクラスなのは柄にされてしまった魔王様の杖の部分だけです。ドワーフが付け足した斧や鎌の部品はEクラスの野鍛治工具です」
あ、そうなの。
「ですが三つの杖が完全に揃えば魔王の杖が復活し、無敵の神器となるでしょう。
あなたは神にも悪魔にもなれるのですよ」
マジンガーかゲッターになるのか。危ない予感しかしねぇが。
「悪魔が再び活動を始めたなら教会としても戦う準備をしないとなりませんからね。
なので、その魔王の杖を揃えることに関しては、ぜひ私たちギルドも協力したいのです」
なるほど悪魔と戦うのも教会の仕事だな。
とりあえず俺も魔物討伐隊に加わることになった。
この村の教会に偽装した傭兵砦は、森を行き来する冒険者を組織的に管理するベースキャンプでもある。
ある時は冒険者組合。
ある時は傭兵派遣の口入屋
ある時は反政府ゲリラのアジト。
その黒幕が法皇庁とはね、敵に回すと最悪だが、味方に付ければ有益な相手だ、取引も悪くは無い。
メシも給料も貰えるしな!
さて飯も食ったし鍛冶場にいるフォールの手伝いにでも行くか。
ブラブラ歩いていると、10頭ほどの馬に荷物を積んだ商隊が村に来ていた。
商人たちは全員ベドウィンの行商隊みたいにヒラヒラした衣装にターバンの様な頭巾を深く被っている。
顔は布で覆われて見えないが、かなり鋭い目つきだ。
衣装の隙間から赤や緑のカラフルな毛並みが見える。獣人だろうか?
この砦に出入りできる民間人は限られている。食糧や雑貨の搬入業者や、お姉さんたちの所属している夜のお店など、ギルドと契約している軍属の民間業者ぐらいだ。
もっとも俺はまだ美少女だから、あのお姉さんたちがナニをしている仕事なのかは知らないけどな!
「勇者ベロンさんですね」
キャラバンの一人が声をかけて来た。
「そうだべ」
「私はこの商隊長をしているゴモンと申します」
挨拶するゴモン氏の手は青い獣の手だった。
鋭い目が光っているが、やはり顔は布で覆われていた。
「勇者が地下要塞を造られたと聞き、拝見させていただきました。
じつに素晴らしい仕上がりでした」
「お!わかる?いい仕事だべ」
トンネルを褒られると嬉い。思わず自慢してしまう。
しかし…軍用の秘密トンネルに民間人が入れるとは思えない。やはり彼らも教皇庁の工作員なのだろうか?
「我々も西のエルフの工芸品を取り扱っておりますから、何ごとも仕事の良し悪しには気をつかっております」
「エルフって工芸品作るだか?」
「エルフは非常に長生きですので、千年単位で芸術を極めた職人も多数おります」
「そりゃ凄い。葛飾北斎もびっくりだべ」
「他にも魔術や武芸など脅威的な名人達人が居ます」
エルフか。一度見てみたいものだ、きっと美しくて優しくて素晴らしい人たちなのだろうな。
「ゴモンさんもその辺の生まれだか?」
「いいえ、私はエルフの森よりさらに西の獣人の国から来ました」
あれ?獣王国って隣の森じゃなかったのか?
まぁいいや。
しかし西の動物はずいぶんカラフルなんだな。
まぁ異世界ファンタジーだからてきとうにカラフルなんだろうな。
最後にふとゴモンがつぶやいた。
「しかしここはだいぶ悪魔の臭いがしますね」
「ん?どういう意味だべ?」
ゴモンは何も答えずにキャラバンのテントに戻って行った。
鍛治場。
ここには軍属の鍛治専門職人も居るが、自分たちで武具を調整する兵士もいる。フォールは自分で矢尻やナイフを作っていた。
フォールはなかなか良いドワーフだ、どっかの古本屋とはえらい違いだ。
「悪魔の臭い…ですか」
鍛冶場でフォールに悪魔の臭いを尋ねてみたが分からない様だ。
「いったいあの連中は何者なんだべ?」
「彼らは獣王直属の精兵と呼ばれる部隊です。ふだんは情報収集をしているらしいですが、戦場にいきなり現れて、たちまち敵を殲滅して消え去るとか」
「忍者部隊か!何か強力な武器を持ってるだべか?」
「いえ、何度か彼らの装備を見ましたが、ふつうの剣と弓だけでしたね」
「え?それだけ?槍や盾や魔法兵器とか、拳銃は最後の武器だとかは?」
「ありませんね」
そうだな。フォールがそれを見落とすはずが無い。
「やはり『あの男』が呼んだんだべか?」
「ええ、ギルドマスターでないと呼べない部隊でしょうね」
しかし獣王国相手に人間界の法皇庁の権威が通用するとも思えない。
これはたぶんあの若いギルドマスターが獣王国に何かコネクションを持っているのだろう。
そういえばトンネル工事現場で『大魔王聖下の祝福』と唱えていたのも気になる。
なぜ教皇庁の神官が魔王の名前で祝福したんだろうか?
「悪魔の臭いがします」ふとゴモンの言葉が頭をよぎった。
法皇庁のエリートが?まさか。
いったい何者なんだ…
その時、突然、法螺貝の様なツノ笛の音が村中に鳴り響いた。
「敵襲です!」
と、叫ぶとすでにフォールは弓と剣を掴んで飛び出している。早い。
また恐竜か狼だろうか。ヤツらは森や山岳部から突然現れる。
そう考えるとゲリラ討伐は正規軍というより冒険者か警視抜刀隊の仕事だな。
森の方に向かうと、先ほど補修した柵の向こうに大量の狼の群れが居た。
兵士たちが櫓から弓を射掛ているが、狼の数がずいぶん多い。
櫓からザーグがデカい石を投げ付けてるのが見える。
背後から「ピーッ」という高い口笛の音が聞こえた。
「回り込まれた!南側だ!」と甲高い声がする。
白い商隊の商人たちが剣や弓を持ち走って行くのが見えた。
ゴモンの仲間の忍者部隊か、獣人なのに特に動物っぽい素早い走りには見えないな?
引き返して村に戻ると、教会の中庭を数匹の狼が走り回り、迎撃に出た兵士たちを薙ぎ倒していた。
峠側から攻めて来ている狼の群れは囮で、本隊は森の中を迂回して村の方から回り込んで来たのか。
狼には黒い甲冑を装着した薄黒い怪物が乗っている。
人間の様でもあり、獣の様でもある。
顔の横からは猪のような牙が突き出ていた。
「なんじゃコリゃ?」
(獣人?まさかゴモンの仲間か?)
六、七騎ほどの黒い怪物の集団が矢を射掛ながら、もの凄いスピードでこちらに迫って来る。
怪物の矢が飛んで来る中をフォールが弓を撃ち、一騎を射落とす。
すれ違いざまにさらに一人射落とし、
飛び退きながら狼の脚を刀で斬り落とした。
たちまち怪物の群れは半減した。
スゲぇ!さすが元レンジャー隊長だ、魔法を使っても勝てる気がしない。
残り4匹の群れが俺の方に走りながら矢を射掛て来る。
ダブルトマホウクを投げ付けて二人倒したが、下の狼だけでこちらに襲い掛かって来た。
「ディバイド!」鳶口の空間湾曲バリアを振り回して狼どもを弾き飛ばす。
残り二騎の怪物は弓を捨て抜刀し、左右に分かれながら走り込んで来た。
(挟み撃ちにするつもりか!)
弓を捨てて剣で挟み撃ちにするなんて、こいつらただの魔獣じゃない。
まるでプロの戦士だ。
こいつらはヤバい!!
一人はバリアで弾き飛ばしたが、狼がバリアの脇を潜抜けて来るので、斧で狼を叩切った。
だがそのスキに最後の一人に背後に回られてしまった。
(しまった!背後を取られた!)
その時、一筋の矢が的確に怪物の頭を射抜た。
怪物は倒れて地に落ち、狼はそのまま走り去って行った。
助かった。いったい誰が?
振り返れば誰も居ない。
あれ?キョロキョロと見回せば、はるか彼方の崖の上にゴモンが居た。
えええっ?あの距離から当てたのか?!
見ればフォールの方も片づいている。
白いヒラヒラ服の商人たちが戻って来た。
あの黒い魔人はゴモンの仲間たちが倒した様だ。
こんな短時間であの魔人騎兵を撤退させたのか!
おそらく口笛を吹いたのも彼ら獣人たちだろう。
やはりトンデモない忍者部隊だ。
「ご無事な様ですね」
「え?」
振り向くと、いつの間にかゴモンが横に立って居た。
「ええ〜っ??」
どうやってあの崖からここに降りて来た??
ひょっとして獣人ってテレポートでもできるのか?
やはり只者では無い。
フォールが峠を指差す。
「ベロンさん、まずいです。
柵の外も続々とオークが増え続けています」
あれがオークか!
前世で見たゲームやアニメだと豚だと思ってたが、実物はずいぶん恐ろしげな魔人だ。
「オークはエルフと人間を素材にした改造魔人です。獣のパワーと人間の頭脳、エルフの魔力を備えています」ゴモンが鋭い目で見ながら言った。
何そのインチキ設定。なんか勝てる要素が無いですやん。
「エルフが素材なんだべか?」
「はい女王様がたいへんお怒りでした」
あれ?獣王って女性なのかな?
なぜエルフの事で獣王国の女王が怒るのかはよく分からないが。
しかしあのオークの戦闘力はヤバい、ヘタすると砦が全滅するぞ。
「トンネルを使いましょう」ゴモンが提案してきた。
俺は一瞬、躊躇した。
コイツの狙いはあのトンネルの情報だろう。
あのトンネルは獣王国にとっては軍事バランスを崩す脅威となる存在のはずだ。
だが背に腹はかえられない。こうなってはトンネルを使ってオークの軍勢を背後から襲うしか勝ち目は無い。
「村側の守りは我々の仲間にお任せください」ゴモンが鋭い目を向けてくる。
獣人の忍者部隊か、彼らならオーク相手でも大丈夫だろう。
「よし!トンネルさ行くだべ」
ゴモンを連れ立ってトンネルに向かった。
トンネルでは斧を赤熱化させ松明代わりにかざしながら走る。
「ほう、それが魔王の杖ですか」
獣人の目が鋭く光った。
魔王の杖を知っていたのか、さすがに目が効くな。
「この二本だけでは魔王の杖にはならねぇだべ」
「なるほど、それでもすごいパワーです」
(この魔力が感じ取れるのか…)
ゴモンもまた得体の知れない力を持っている様だ。
出口の明かりが見えてきた所でゴモンが気づいた。
「これは…」
足を止めた。
この距離で気がついたのか、すごいな。
近づいて見れば分かるが、透明なガラスの壁がある。
「水晶だべ、厚さは1メートル。俺の身長ぐらいの厚みがあるだ。
こちらを暗くしておけば向こうからこちらの姿は見えないトラップになっているだ」
このトンネルには前回の『卒然』との戦いを踏まえて二重三重に罠を仕掛けておいた。
ガラスや水晶を造る魔法もゲットしたしな。
まぁドワーフのトンネル技術なら朝飯前の朝茶の子だけどな!
「見た事も無い仕掛けです。素晴らしい」
ふふ〜ん、ドワーフとしてはちょっと自慢できるな。
トンネルを出て峠の細道まで登ると、遠方からまだ後続のオークや狼が走って来るのが見える。
ゴモンはヒラヒラした着衣の下から弓を取り出すと、次々と遠方のオークを射落としていく。
早い!なんでこの距離で当たるんだよ??
見たところゴモンの弓はフォールの言ってたとおりふつうの弓だった。
魔法の弓とは思えない。
むしろ古くて質素な弓だ。
ここの兵士たちの最新のボウガンの方が高級に見える。
だとしたら弓の腕のレベルが常人とは違うのだろう。
「こちらは私にお任せください」
ゴモンは会話しながら遠方の敵を安易と射落としていく。
スゲぇ…この人が敵じゃなくて良かったは。
俺は後方はゴモンさんに任せて峠の細い道を走った。
砦が見えて来たが、すでに峠側の柵は破られてしまっていた。
続々とオークの群れが侵入しようとしている。
遅かったか!
俺は走りながら鳶口を振り上げた「変身!」
「ぴぴるまぴぴるま超力招来!!」
鳶口の先から光の輪が発生し、俺の全身を引き伸ばす。
手足はスラリと長く伸び、長く飛び跳ねた赤い髪、クビレたウエスト、ピチピチの小さな服からはみだしそうな大きな乳!
今日は緊急事態なので走りながら揉んだ!
とは言っても峠の九十九折の道ではスピードが出ない。
全力で曲がりくねった峠道を走っていると、また頭の中にあの声が響いてきた。
『鳶口の重力操作を使え。「重力子』を集めれば、その方向に落下できる』
重力制御?そうか!ワンセブンのグラビトンか!
峠の曲がり角でザザザっと立ち止まった。
直線距離にすると500メートルほど。
やれるか?
「超重力!グラビトン!!」
鳶口を水平方向に構えると、いきなり身体がグンと引き寄せられて峠の崖を飛び越えた。
「ウギャ!早い!怖い!!」
ものすごい勢いで砦の柵とオークの群れが近づいて見える。
いや、このまま重力制御マックスでぶつかればオークごと潰せないかな?
メタルダーの重力キックだ。
足を蹴り出し、重力子を足方向に集めて飛ぶ。
「行くど!水平ドワーフキック!」
オークの群れめがけて重力操作フルパワーのパンチラキックを放つ。
まるで落下する様にグングン加速して行き、ついに音速を超えて砦の柵に衝突する。
超音速の重力衝撃波は入り口に詰まっていた数十匹のオークを吹き飛ばし、ついでに砦の柵までバラバラに崩した。
「あ、ヤベぇ止まり方が分からねぇ」
櫓が傾いてザーグが落ちそうになりながらしがみついているのが見えた。
あちゃ〜せっかく修理したのに。
キックの勢いのまま着地したが、着地の衝撃で地面が吹き飛び、周囲の家屋は崩れて、教会の塔が傾き、数十メートルほどの範囲で地面をえぐってしまった。
ありゃあ〜こりゃあ…魔法のパワーが上がっているな。自分でも驚いた。
砦の兵士たちもあんぐりと口を開けて見ていた。
なんか俺がやらかした被害の方が大きい気もするが、気のせいだろう。たぶんな。
まぁパンチラをサービスしておいたから許してくれ!
砦の中に侵入していた数十匹のオークたちが一斉に俺の方に向かって来た。
俺は腰にぶら下げたヒョウタンを取って「一杯行くど!湧き出ろ!」と魔法の呪文を詠唱しながら振り出す。
するとヒョウタンからドワーフ火酒が勢いよく吹き出し、オークどもに火酒が浴びせ掛かる。
この瓢箪は俺が旅立つさいに、親父が長老と呑み比べで勝ってブン取った魔法アイテムで無尽蔵に酒が吹き出てくるドワーフの至宝だ。しかも旨い!
さらに俺は火酒を口いっぱいに含んで赤熱化した斧に吹きかけた。
酒は炎となって飛び散り、オークたちは火だるまになる。
「よっしゃ!イケる!」俺はさらに火酒を呑みまくり、走りながらオークどもに手当たり次第に火炎を吹きかけて行く。
オークや狼どもは火だるまになって転がり回り、そこを兵士たちに槍で突かれた。
さすがにオークの群れも、たまらず退却して行った。
これがドワーフの火炎魔法だ。ヒック
ちょっと酔った。
「しかしオークの野郎、俺の酒が呑めねぇとはべらぼうめ!見上げたもんだよ屋根屋のフンドシとくらあ!もってけ泥棒!ヒック」
ボルゲルの話ではあの後、酔った勢いで裸踊りをしていたらしいが、二日酔いで覚えて無い。
つづくだべ!
あとがき
【ボルゲルのファンタジー用語解説】
⚫︎ イボ結び、垣根結び、俵結び
これは全部同じ結び方です。ポピュラーな結索法なので地域や職種によって名前が変わるのでしょうね。
⚫︎ 軍属
軍隊からの依頼で基地の下請け作業をしている民間業者ですね。
建設工事業者や食堂、売店や、お姉さんなどです。
⚫︎ 忍者部隊
そういえば忍者部隊月光は白黒放送だったのですが、赤青黄色のヘルメットをかぶったカラー版の忍者部隊月光があったと信じていました。まぁ今考えると魔人ハンターミツルギだったのですが。




