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④⑦ ジェラールside5



その言葉を聞いたベルナデットはピタリと動きを止めて、顔を上げる。


「そ……そうよね!骨、骨ならそうだわ。ヴィヴィアンの聖女服と骨が見つかったのね!ここではあの子しか聖女服を着ていないもの」


「……そうに違いない」


「アハ、そうだわ!そうに決まってる。そうじゃないとおかしいわ」



ジェラールもベルナデットも自分に言い聞かせるように呟いた。

そうでなければ辻褄が合わないではないか。

心臓が口から飛び出してしまいそうなほどに脈打っている。

ベルナデットと体を離してからジェラールは椅子に腰掛けた。

そんな中、ベルナデットが小さな声で呟いた。



「も、もしかして生き返ったり……したら」


「──するわけないだろうッ!?」


「ひぃっ……!」



ジェラールがバンッと立ち上がりながらテーブルを叩いたせいでベルナデットから悲鳴を上げる。

そんなことはあってはならない。

もしヴィヴィアンの口から自分たちがやったことが公になればどうなってしまうのか、わからないほど馬鹿ではない。

もし…など考えてはいけないのだ。



「あるわけないだろう!?」


「……っ!」



ベルナデットは何度も頷いているが、その表情には怯えが滲む。

ジェラールは自らを落ち着かせるようにため息を吐いた。

「すまない」と謝るとベルナデットは顔を伏せてしまった。

気まずい空気を変えるようにジェラールは口を開く。



「スタンレー公爵はこの一件を聞いて、なんと言っている?」


「お父様はラームシルド公爵家に行って、自分たちのしたことがバレてないか探りをいれてみるって言っていたわ。毒を盛ったことも、その……細心の注意を払ったから大丈夫だって」


「そうか」


「とにかく何もせずに連絡を待ってと。わたくし、それを伝えにきたの」


「わかった。スタンレー公爵を信じて待とう」



いつものベルナデットとの楽しい時間は嘘のように部屋は静まり返っていた。

登城してくるスタンレー公爵はいつまで経っても部屋を訪れない。

扉をノックする音が聞こえて、二人は一緒に立ち上がる。

しかしジェラールとベルナデットの前に現れたスタンレー公爵の顔は真っ青だった。



「お、お父様……どうされたのですか?」


「…………ッ」


「スタンレー、公爵?」



ジェラールも問いかけるもののスタンレー公爵は口元を押さえてしまう。

その手は小さく震えているような気がした。

二人で唾をゴクリと飲み込んでスタンレー公爵の言葉を待つ。



「わ、私は……あの場にいなかったが殿下の話は全て本当ですよね?」


「何の話だ?」


「ヴィヴィアンを、その……剣で」


「ああ、もちろんだ。僕がこの剣で……っ」



しかしジェラールがそう言った瞬間、スタンレー公爵は目を見開いて、その表情は更に怯えたものとなる。



「ヴィヴィアンは綺麗な肉の形を保っていた」


「は……?」


「お父様ってばそれって、どういうこと!?体が腐っていないなんてありえないわ!骨でしょう?」


「確かに肌は青白く、服は薄汚れていたが、間違いなくヴィヴィアンだと原型がわかるほどだ」



ジェラールはスタンレー公爵の言葉に絶句するしかなかった。

どうやらスタンレー公爵はラームシルド公爵邸にお見舞いがてらヴィヴィアンを見に行ったようだ。



「ねぇ、お父様……アンデッドになってないの!?」


「ああ……なっていない。だからこうして連れ帰ってきたんだ」


「今まで死の森に入った人間が帰ってきたことなどないではないかっ!何故だ、何故なんだ!スタンレー公爵っ」


「ジェラール殿下、静かに!それは私にもわかりません」


 

ヴィヴィアンの姿を思い出したのかスタンレー公爵の瞳は恐怖からか左右に揺れ動いている。

ベルナデットは首を横に振りながら、目を見開いて口元を押さえていた。



「ヴィヴィアンの死因や綺麗に肉の形を保っていることで調査を行われたくない。剣の刺し傷が肌にあることがバレてしまうと困りますからな……」


「だがどうしたらいい!?もしバレたら……」


「ラームシルド公爵にはヴィヴィアンが今後、アンデッドになってしまう可能性も示唆しました。国民がヴィヴィアンに会いたがっていることを伝えて、すぐにでも国葬をしたい意思があることを伝え、国王の意思だと言った」


「え……?」


「今から国王陛下にこの件を伝えて実行しなければならない……!ジェラール殿下、口裏を合わせてください」



ジェラールはスタンレー公爵の言葉に希望を見出して、目を輝かせた。

今度こそ全てを闇に葬ることができるのだから。



「これで解放される……!」


「まだまだ油断はできませんぞ……!国葬を行い、ヴィヴィアンの死因が暴かれないように手を回すまでは」


「さ、さすがお父様だわ!」



ベルナデットの表情が明るくなった。

それと同時にジェラールの不安もスッと消えていく。


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