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④⑤ ジェラールside3


ジェラールはその言葉を聞いて、全身に冷や汗をかいていた。

感じたことのない恐怖にジェラールは動けずにいる。


ラームシルド公爵の嫡男、マイロンはとにかく頭がいい。

ジェラールは王立学園の時から苦手意識を持っていた。

王太子の自分よりも令嬢達からの人気も高く、周囲から頼られていて人望もある。

陰でヴィヴィアンを支え、彼女を守るように立ち回っていた。

ヴィヴィアンを追い出すためにここまで苦戦したのはマイロンがいたからだ。


マイロンは体が弱い父親の代わりに城を出入りして、早くから公爵としての仕事をサポートしてこなしていた。

もしかしたらジェラールとベルナデットの関係性にも気づいていたのかもしれない。

スタンレー公爵がラームシルド公爵に毒を盛り、マイロンの視線を逸らす。

その隙にヴィヴィアンを消す計画を実行した。

その計画が三ヶ月たって無駄になろうとしている。

ジェラールは唇を噛んで、手のひらを握り込んで震えていた。



「ジェラール殿下、どうかされたのですか?」


「い、いや……なんでもない」


「きっとジェラール殿下も喜んでくださると思っていたんですよ」


「はは……そう、だな」



ジェラールは歯切れの悪い返事を返すことしかできない。

もしヴィヴィアンの死因を調べられたりしたら、アンデッドではなく、剣に斬られた傷が背中にあることも腹を刺したこともバレてしまう。


(そうなったら適当に言い訳すればいいっ!あの場に騎士だっていたのだから!だが……もしバレてしまえば僕の立場が)


ラームシルド公爵やマイロンならば、愛するヴィヴィアンのためにと、やりかねない。

ヴィヴィアンが三ヶ月経って綺麗な状態で見つかるなどあってはならないのだ。


(どうにかしてベルナデットとスタンレー公爵に会わなければ!スタンレー公爵に頼んで、ヴィヴィアンの死体を自分たちの元に……!)


この計画はもとよりスタンレー公爵の協力があり叶ったものだ。

どうにかしてヴィヴィアンを手元に連れ戻すこと。

ジェラールの頭はそのことでいっぱいになる。


(愛しているヴィヴィアンに守れなくてすまないと謝りたい、今までのお礼を言いたいといえば大丈夫なはずだ……!スタンレー公爵に動いてもらうためにはっ……それより父上に早くこのことについて確認をとらなければ)


そんなジェラールとは違い、騎士はヴィヴィアンを思い手を合わせている



「皆、ヴィヴィアン様に今までのお礼を言いたいと思っています。葬儀はいつ行われるのでしょうね」


「葬儀、だと?」


「王族の葬儀と同じように行われるのではないでしょうか?ヴィヴィアン様の人気を考えれば当然のように思いますが」


「そ、そうか」



そんなことをすればヴィヴィアンが目の前から消えるまでジェラールに安寧は訪れない。

考えただけでも耐えられそうになかった。

今でさえ呼吸がしづらくて胸が苦しい。


(早くヴィヴィアンをこちらに留まらせて……!そのためにはっ)


ジェラールの頭にはそのことしかなかった。



「父上は何か言っていたか!?」


「ヴィヴィアンが亡くなったことは残念だが、これで国民も落ち着くだろうと仰ってました。とにかく死の森に近づきたくないようです」


「まだヴィヴィアンはラームシルド公爵邸に運ばれていないのだな?」


「は、はい」



ジェラールの必死な様子に騎士も引き気味である。


(……確かめに行かねば!)


ジェラールは騎士を置いて部屋から飛び出したが、廊下を歩いていると城の窓からはラームシルド公爵家の馬車が見えた。

真っ黒な布に包まれた荷馬車を見て、ジェラールは足を止める。


(まさかあの中にヴィヴィアンがっ!?)


ジェラールは荷馬車を引き留めるために外へと駆け出した。

しかし、時すでに遅し……。

馬車は無常にも遙か彼方にあり、ジェラールの「待ってくれ」という声は届かない。


しかしこのまま立ち止まってはいられないとジェラールはスタンレー公爵が登城してくる前に国王の元へと向かう。



「父上、どういうことですか!?」


「ああ、ジェラールか」


「今、ラームシルド公爵家の馬車がっ、ヴィヴィアンを!」


「ああ、ヴィヴィアンのことか」



国王の顔色は悪く、以前よりも痩せてしまったようにも見える。

しかし自分のことで頭がいっぱいだったジェラールはこの状況を問いただす。



「何故、ヴィヴィアンはラームシルド公爵家に!?」


「騎士から話を聞いたのか……いや、本当によかった」


「よかった!?何がよかったというんですか!?」


「お前がヴィヴィアンを守れなかったことを申し訳なく思い、会いたかった気持ちも理解しよう。だが、ヴィヴィアンを見つけたと知らせを受けたマイロンが、体調が回復しつつあるラームシルド公爵に会わせたいと言うもんでな」


「……っ!」



父はジェラールとベルナデットの関係をまったく知らない。

ジェラールがヴィヴィアンを愛していると思っている。

ホッと息を吐き出している国王にジェラールは震える手を握り込んむ。



「はぁ……ヴィヴィアンの葬儀が終われば国民達の怒りも落ち着くだろう。この件は終わりだ」


「ですが……っ」


「ヴィヴィアンがあの森にいたからアンデッドはこの国に入れなかったのかもしれない。またアンデッドへの対策を練らねば……ジェラール、死の森には絶対に近づくなよ」


「え……?」


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