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僕とガイアの異世界戦記  作者: icefish
突然の異世界
9/15

獣王の玉座

シュウはザルガと共に獣王国の王都ガルファナを訪れ、王バルグランに謁見する。シュウは砂漠での救出劇で異世界から来た旅人であると紹介されるが、王都で起きた「黒の災い」と結び付けられ疑われる。ザルガの証言により信頼され、シュウは自らの真実を示すために次の武闘会への参加を命じられる。その直後、ザイードからの偵察部隊侵入の報が入り、戦いの予兆が立ち上がる。

朝の霧が街の屋根を包み、森のざわめきが微かに風に流れていく。

屋敷の中では、いつになく張りつめた空気が漂っていた。


「シュウ殿。……王城に向かうぞ。」

ザルガの声は低く、鋼のように硬い。

その毛並みは整えられ、黒い鎧には紋章が刻まれている。

昨日までの頼れる仲間ではなく、“獣王国の将”の顔だった。


「お、お城って……ガルファナのトップに会うってことだよね?」

「そうだ。獣王バルグラン様。この国に生きるすべての獣人を束ねる王だ。」


胸が高鳴る。砂漠を抜けたばかりの新参者が、いきなり“王との謁見”。

異世界社会、スピード感がえぐい。



王都ガルファナ。

森と岩を抱くように築かれた都は、まるで自然と文明が融合した巨大な生命体のようだった。

木の根が絡み合う建物、角獣の引く荷車、そして空を飛ぶ鳥人獣人。

全てが息づき、全てが力に満ちている。


「これが……獣人の王都……」

「ここでは、力と誇りが“通貨”だ。」

ザルガの言葉に、街のざわめきが一層深く聞こえた。



やがて二人は、王城の前に立った。

根と石が絡み合い、樹木のようにそびえる巨大な建築。

大地の鼓動そのものが建物に宿っているかのようだ。


謁見の間の扉が重く開くと、空気が変わった。

黒曜石の装飾と古獣の骨が並ぶ荘厳な空間。

中央の玉座に、黄金の鬣を持つ巨大な獣人が座していた。


――獣王、バルグラン。


その視線が一度、ザルガへ。

「よく戻ったな……死んだと聞いていたぞ。」


「はっ。命を拾いました。ザイードにてこちらの人族の男・シュウ殿に救われまして。」


「人族だと?」

宰相の灰狼・グロウが低く唸る。

「なぜ異邦人を連れてきた。人族など、我らの敵国の間者かもしれぬ。」


ザルガは膝をついたまま、静かに首を振る。

「違います。この者は異なる世界より召喚された旅人。命を懸けて我を救ってくれた恩人です。」


ん?ぁあ、そーいえば砂漠で異世界人だって話したっけか。


玉座の王がゆっくりと瞼を開く。

金色の双眸が、静かにシュウを射抜いた。


「顔を上げよ。異邦の者よ。」


視線がぶつかった瞬間、息が詰まった。

その瞳は炎でも氷でもない。“生きる力”そのものだ。


ぶっちゃけ怖い…。


「名を。」

「……シュウ・アラカワと申します。」


「ふむ。砂漠を越えた黒髪の男――ザイードを焼いた“黒の災い”という報告を、貴様はどう聞いておる?」


「……?それは……初耳ですね。私わただ、ザルガさんを助けただけですが」

なんだ焼いたって?

怖!

ちなみに僕は地震と爆発だけどねHAHAHA


「偶然にしては出来すぎておるな。」

宰相グロウの牙が光る。

「焼け落ちた王都、消えた兵。そこから逃げた黒髪の人族。……貴様以外におらぬ。」


……なぜにこんなに怒っておられるのか?

解せぬ。


「待て、グロウ!」

ザルガが吠える。

「彼は無実だ! 私が見た。奴は神でも怪物でもない――だが、その心は勇敢だった!」


謁見の間に、静寂が落ちる。

バルグランはしばし目を閉じ、低く唸るように息を吐いた。


「……ザルガの言葉、信じよう。」

「陛下!」グロウが声を上げるが、王は手を挙げて制した。


「異邦の者、シュウ。

 この国では言葉より拳が真を語る。

 次の“武闘会”に出よ。ガルファナの戦士たちの前で、自らの真実を示せ。」


「ぶ、武闘会!?俺が!?」

あ、やべ、意外すぎてすがでた。


「そうだ。お前の魂を見せよ。偽りなき者であれば、我らの民がそれを知るだろう。」


そのとき――

扉の外から、慌ただしい足音と叫び声が響いた。


「報告! 砂の国ザイードより、偵察部隊が国境を越えました!」


場の空気が凍りつく。

宰相グロウの瞳が鋭く光る。

バルグランはゆっくりと立ち上がった。


「……時は満ちたか。」


その低い声は、雷鳴のように大地を震わせた。


砂漠での逃避行が終わったと思っていたのに。

だが今、炎の予感が再び胸を焦がしていく。


なぁんかめんどくさいことになってきたなぁ。


“運命の歯車”が――確かに、動き始めた。

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