表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕とガイアの異世界戦記  作者: icefish
突然の異世界
8/15

ガルファナの街

シュウはザルガに導かれ、ガルファナの街を初めて探索する。

昼は市場や屋台で活気ある獣人たちの生活を知り、夜は静かな街の灯りと森の神秘に触れる。

王都で開かれる武闘会の情報にも興味を抱き、異世界での新しい日常と冒険への期待を膨らませる。

こうして、シュウの“ガルファナ編”が本格的に始まった──。

朝の光が屋敷の窓から差し込み、シュウは柔らかい布団の上で目を覚ました。昨夜の疲れはまだ残っているものの、目の前に広がるガルファナの街への期待で胸が高鳴る。


「シュウ殿、起きたか。今日は街を少し案内しよう」

ザルガの声が力強く響く。虎の耳がぴくりと動いた。


二人は屋敷を出て、石畳の通りに足を踏み入れる。昨夜の市場の喧騒とは少し違い、朝の街はまだ活気に満ちつつも穏やかな空気が流れている。


「ここが我らの街の中心だ。毎朝、商人たちが荷物を運び、屋台を出す」

ザルガの指さす先には、狐獣人の子供たちが通りで遊び、角獣の荷役獣が木箱を運ぶ姿があった。シュウは目を丸くする。


「ほんとに……獣人だらけだな」

「ハハ、我らの街に人族は滅多に来ぬ。砂漠の向こう、ザイードの商人くらいだ」

ザルガが笑う。シュウはあらためて異世界に来た実感を噛みしめた。


二人は路地を曲がり、森の縁に沿った小道へ入る。葉のざわめきと鳥の声が街の喧騒を和らげ、まるで別世界に迷い込んだような感覚が漂う。


「ここら辺は少し静かで、知る人ぞ知る場所だ。王都に行けば、定期的に武闘会が開かれる。強者たちの腕比べは見応えがあるぞ」

ザルガの言葉に、シュウの胸がざわつく。武闘会……、何だかワクワクする響きだ。


通りを歩くうち、シュウは屋台の片隅で奇妙な香辛料を見つける。色鮮やかで、見たこともない形の実が並んでいる。

「おお、これ……初めて見るな」

ザルガが笑う。

「王都から来た商人が持ってきた珍品だ。我が街でもまだ手に入りにくい」


屋敷や倉庫の裏手を通りながら、シュウは少しずつ街の構造や獣人たちの生活に目を凝らす。高い木の枝に巣を作る鳥人獣人や、荷役獣の働く姿。細かいことだが、街が生きていると感じさせる小さな発見ばかりだ。


「シュウ殿、そろそろ昼だ。屋台で食事でもどうだ?」

「わ、わかった!まずは何か食べよう!」

シュウは小走りで屋台に駆け寄る。香ばしい焼き肉の匂いと、スパイスの刺激が鼻をくすぐる。ザルガも嬉しそうに、肉の塊を豪快に串焼きにしてほおばった。


昼食の後、二人は城壁沿いの高台に登り、街全体を眺めた。屋根の向こうに森が広がり、遠くには砂漠を越えたザイードの方向が見える。

「ここから王都へ行くには、かなり距離があるぞ」

「ふむ……でも、次の武闘会も気になるな」

シュウの目が輝く。冒険心がじわじわと湧き上がるのを感じた。


その日の探索でシュウは、屋敷や倉庫、路地の小さな祠や森の縁の隠れ家、街角の掲示板に貼られた武闘会や依頼の情報まで、少しずつ異世界の生活を体感していく。


夜になるころ、二人はザルガの屋敷に戻った。夕焼けが街を赤く染め、昼間とはまた違う幻想的な空気を漂わせている。

「今日はよく歩いたな、シュウ殿」

「はい……でも、楽しかったです!まだまだ知りたいことだらけです!」

シュウの笑顔に、ザルガも満足そうにうなずいた。


ガルファナ――獣人の街は、生き生きとした日常と未知の冒険の両方を同時に示していた。砂漠を越え、街を探索したシュウの心には、新しい冒険への期待が静かに膨らんでいった。


夕暮れが街を朱色に染め、昼の喧騒は徐々に静まっていく。

シュウとザルガは屋敷を出て、夜の街を歩き始めた。昼間とは違う空気が漂い、街灯に照らされる石畳や屋台の暖かい光が幻想的だ。


「夜のガルファナも悪くないだろう、シュウ殿」

ザルガの声に、シュウは首をかしげる。

「昼間も面白かったけど……夜はなんだか秘密が隠されてるみたいで、わくわくします」


通りを歩くと、角獣の荷役獣たちは昼間の疲れを休め、鳥人獣人たちは高い木の巣に戻って夜の見張りをしている。夜空には、街の灯りに反射して小さな星が瞬いていた。


小さな広場では、獣人たちの夜の娯楽が行われている。

狐獣人の子供たちは、昼間に学んだ踊りを夜も楽しそうに練習し、パンダ獣人たちは軽く食事を楽しみながら談笑していた。

シュウはその様子を見て、街が「生きている」と強く感じる。


「王都と違って、我らの街は規模は小さいが、夜も安全だ。獣人たちの生活が密に感じられるだろう?」

ザルガは誇らしげに胸を張る。シュウはうなずき、視線を広場の屋台に移す。焼き魚や香辛料の香りが漂い、昼間の市場とは違う、夜だけの独特な匂いだ。


夜の散策の途中、二人は森の縁にある小道へ足を伸ばす。昼間は気づかなかった小さな祠や古木、そして森の中に光る蛍のような小さな虫たちが、街と自然を静かに繋いでいる。

「昼も面白かったけど……夜になると、さらに不思議な発見があるな」

シュウの瞳は好奇心で輝く。


広場の掲示板には、王都で開かれる次回の武闘会の日程が貼られていた。

「ここにも情報が……武闘会、やっぱり興味が湧くな」

ザルガは笑いながら、シュウの肩を叩く。

「その日が来たら、一緒に見に行こう。我が街の強者たちが腕を競う様は圧巻だ」


夜の屋台で軽く食事を取った後、二人は屋敷に戻る。

屋敷の窓から見える街灯は、昼間の賑わいとは違い、静かに街を照らしていた。シュウはベランダに立ち、遠く森と砂漠の境界線を見つめる。


「今日一日で、街の昼も夜も、そして森や路地裏まで……いろんなことが見れました」

「そうだな。ガルファナは我らの街、だがまだまだ知らぬことも多い。これから少しずつ覚えていけばいい」

ザルガは安心したようにうなずき、笑みを浮かべた。


ベッドに入り、目を閉じると、今日見た街の光景が次々と浮かんでくる。昼の賑わい、夜の静けさ、森の隠れ家や小さな祠、屋台の香り――すべてが異世界での新しい生活の一部だ。


「明日から、もっとこの街を探検できるな……」

シュウは小さくつぶやき、夢の世界へと落ちていく。


ガルファナ――獣人の街。

昼と夜、街と森、日常と冒険。すべてが混ざり合い、シュウに新しい世界の広さと可能性を見せていた。砂漠を越えてきた二人に、新たな冒険の幕が静かに、しかし確実に開かれようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ