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僕とガイアの異世界戦記  作者: icefish
突然の異世界
11/15

砂塵の邂逅

シュウは獣王謁見後、砂漠を越えたザイード偵察隊の動きを森の縁で目撃する。好奇心から接近したところ、追跡班と遭遇して戦闘に発展。シュウは俊敏な動きで追跡班を翻弄し、無傷で撤退。戦闘の目撃情報はザイードに伝わり、シュウが関与している可能性が広まり、後の戦争の布石となる。

朝の光が城壁を黄金に染める頃、シュウは獣王バルグランの謁見を終え、ザルガに屋敷まで送られた後、一息ついていた。

「ふぅ……やっと落ち着いたか」


しかし、心の片隅には引っかかるものがあった。獣王から聞いた情報――砂漠を越えたザイード偵察隊が、国境を越えたという報告だ。戦争の兆しを予感させる響き。


ザルガは軍を編成し、国境付近の駐屯地へ向かうという。シュウは同行を勧められたが、屋敷に残ってゆっくりするよう言われた。

「戦争かぁ、どこの世界も戦争大好きなんだなぁ、人類のサガってやつかねぇ?ぁーやだやだ、もっとのんびりできないもんかねぇ。まあ、居候のおれがゆーのもなんだか……でも気になるな。ちょっと見に行ってみようかな噂の偵察隊。確か森の縁あたりがどーとかザルガさん言ってたな。よし。行こう。」


気になったシュウは、こっそり城門を抜け、森の縁に目を向けると、砂埃を上げながら動く影――


ん?なんぞあの怪しい集団わ…。

戦争で大活躍とゆーあの有名な斥候ってやつかな?

四人の影が砂の上に揺れ、シュウの目に鮮明に映る。


シュウは息をひそめ、木の間に身を潜める。怪しい4人組は、ガルファナ側の兵士や城門の警備に気づかれぬように森の中を進んでいるようだ。


んー、どうしよう。ザルガさんに報告しようにも、ここで離れたらこの人達見失いそうだなぁ。

てか、絶対見失うわ。


んーんー。

あ、声かけてみよう。そー自然に、あくまでも自然に…。

あー、緊張するなぁ、でもまぁ、見てしまった以上無視できないしなぁ…はぁ。

溜め息がでる。

偵察隊見にきただけなのに…。




そして――



「!!」


「気づかれた!?獣人か…!?」

叫ぶのはルゼリア教会の審問官ロウ。魔法陣が砂の地面に輝き、追跡班の魔導士マルタが掌をかざす。


シュウは咄嗟に力を引き出す。黒髪を風になびかせ、砂の中で閃光のように動く。


「違う!獣人じゃない!黒髪の!!コイツは!」


森の縁は戦場と化した。シュウの動きは俊敏で、追跡班の術や剣撃をかわしつつ、反撃する。砂埃が舞い、枝葉が砕ける。四人の追跡班は互いに補い合うが、シュウの動きは予想を超えていた。


一瞬の隙を突き、シュウはマルタの魔法を弾き返し、ロウの祈りの印を踏み潰す。カシムとレオンも攻撃を試みるが、シュウの速度に翻弄される。森に響くのは、剣と魔法と砂のぶつかる音だけだった。


戦いは短時間で終わった。追跡班は撤退を余儀なくされる。シュウは傷ひとつ負わず、静かに息を整える。


「……いきなり魔法ぶっ放してくるとわ。殺伐としてますな異世界人」

まず誰か確かめるとかないのな、ワームじゃあるまいし…。

しかし、逃げ足超速いなぁ。

後でザルガさんに報告しとくかぁ、。


森を抜ける影の最後の姿を見届けたシュウは、再び城門へと戻る。胸の奥には小さな不安が残る――この戦闘の目撃者たちは、ザイード(おそらくザイードの輩なんだろうけど)になんて報告するだろうか、と。


そして、砂漠の向こう、遠く離れたザイード本国。撤退した追跡班は一度戦闘の報告を持ち帰る。

「……奴が関与しているかもしれません」

「黒髪の異邦人。ガルファナとの接触もあった可能性がある。ただの盗賊でわなかったのか」


シュウがガルファナのザイード侵攻、壊滅に関わったかもしれないという疑念が、砂塵の向こうから静かに、しかし確実に広がっていく。


その波紋は、後の戦争の布石となる――シュウ自身は気づかぬまま、次の運命の歯車がゆっくりと回り始めていた。

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