砂漠の追跡者達
レオン率いる追跡班が砂漠で逃亡者の足跡を追い、危険な砂嵐や複雑な地形を慎重に進む。オアシスで足跡を確認し、逃亡者たちがガルファナに向かっていることを突き止める。追跡班は直接接触を避けつつ、情報を集めながら街へ近づいていく。砂漠を越え、物語は次の舞台であるガルファナへと動き始める。
朝焼けの砂漠が黄金色に輝く。風は冷たく、砂粒が顔に当たるたびに痛みを伴う。
レオンは先頭で歩きながら、低い声で仲間に指示を出した。
「この足跡……昨日のものだ。逃げるような速度じゃない、でも慎重に進んでいる。」
マルタは地図と現在地を照合し、砂丘の向こうに小さな影を見つける。
「あそこ……小隊じゃない、個人の痕跡かもしれません」
カシムは短く笑った。
「俺たちの相手が、まさかこんな砂漠の奥まで来るとはな。ワクワクしてきたぜ」
ロウは少し離れた場所で周囲を警戒している。
「無闇に突っ込むな。砂嵐が来る前に、追跡ルートを整理しておけ」
彼らは逃亡者の足取りを追い、危険な砂嵐に巻き込まれかけていた。あの時の教訓が、今の慎重さに繋がっている。
砂丘を越えると、足跡は二手に分かれていた。
レオンは仲間にうなずき、慎重に分かれる決断を下す。
「マルタ、俺と一緒に左側を追え。カシム、ロウは右。無理に合流せず、各自報告を確実に」
砂漠の静寂を破るのは、時折飛ぶ鷲の鳴き声だけ。
やがて、マルタとレオンは小さなオアシスに辿り着いた。水面には昨日の雨の跡が残り、砂に混じった足跡が鮮明に残る。
「間違いない……ここを通ったんだ」レオンがつぶやく。
一方、カシムとロウは別の足跡を追う。こちらは動物の痕跡も混じっており、注意深く観察する必要があった。
「獣人のような歩き方……でも人族かもしれん」ロウが眉をひそめる。
オアシスで再び全員が合流すると、レオンは地図を広げて指で道筋をなぞった。
「この先、砂漠を抜ければガルファナの森に続く。奴らは街に向かっているかもしれない」
マルタが視線を上げる。
「逃亡者たち……あの街にいるはずですよね」
レオンは微かに笑む。
「そうだ。俺たちは影から追う。ガルファナに入ったとしたら、下手に手出しはできん。直接接触はまだ先だ。だが情報は必ず届ける」
日が高くなるにつれ、砂漠の熱は鋭くなる。追跡班はペースを落とし、装備と体力を気遣いながら進む。
砂丘を越えるたび、彼らは小さな痕跡を拾い集め、まるでパズルのピースを合わせるように足跡を繋いでいった。
そして夕暮れ、砂漠の向こうに薄っすらと森の輪郭が見える。
「見えたな……」カシムが声を落とす。
「ガルファナだ」レオンも息をつく。
砂漠の追跡はまだ終わっていない。
「明日、俺たちは街の縁まで進む。奴らが何者か、真実を確かめるためにな」
夜の砂漠に、追跡班の影が長く伸びる。
星明かりの下、風が静かに吹き抜ける。遠くで、森のざわめきがかすかに聞こえる。
ガルファナ――街の影で、新たな出会いと冒険が待っている。
追跡班の任務は、砂漠を越えて静かに、しかし確実に物語を動かしつつあった。




