#9 歩き茸のピリ辛きのこスープ〜かわいい後輩はちょっとウザい〜(3)
女の子は、ビルのスープをぐびぐび飲み干して、辛かったのか舌を出している。
「だ、誰だい? このチビっ子なお嬢ちゃんは? グラニス、知り合いか?」
「だぁれが、チビっ子だ!このデカブツ!」
よく見ると見覚えがある顔だ。というか、1ヶ月前までほぼ毎日見ていた顔だ。
「えっ、お前、ミルカじゃないか!?」
「えっ、お前、ミルカじゃないか!? じゃないスよ! グラニス師匠! 勝手に王宮出て行って」
ミルカは顔を真っ赤に、頬を膨らまして、プンプンしている。
「いや、出て行ったんじゃなくて、出て行かされたんだが」
「一言あってもよかったじゃないスか! 師匠!」
「しょ、傷心してたし……ってなんで俺が怒られてんだ!」
「私、すっごい悲しかったんスからね!」
ミルカは顔を真っ赤にしながら、まだ怒っている。
そして、パタパタと顔をあおぎはじめる。
「ん、なんスかこの倉庫、めちゃくちゃ暑いんスけど!」
「そんな訳ないが、寒いくらいじゃないか」
ミルカの顔から汗がダラダラと出ている。
「いや! 暑い! 暑すぎ! 我慢できないっス!」
そう言うと、ミルカは立ち上がり、着ていた外套と上着を脱ぎ捨てて……
全裸になった。
そして、倉庫の外へと飛び出していった。
寒空の下を全力で疾走する女の子。
それがスープの耐寒バフの効果であることは、この時はまだ誰も気づいていなかった。