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#7 歩き茸のピリ辛きのこスープ〜かわいい後輩はちょっとウザい〜(1)

 グラニスは自問自答した。 


 自分は、本当に稼ぎたいのだろうか。

 ビルが自分のサンドイッチを食べたあの笑顔。

 料理を作る純粋な喜び。

 金持ちになるよりも、シンプルに料理人としてそちらの方が価値があるように思えた。


「ビル、教えてくれてありがとう。だが、俺は別にいいんだ。もう金や名誉のために料理は作りたくないんだ」

「なんだい! そりゃもったいない……ってわけでもねぇか。すまねぇないらないことを話した」

「ただちょっと、その「バフ料理」というのには興味が出た。まだ自分でもどういう仕組みで、どんな効果が出るのかわからない。いくつか試して実験してみるから協力してくれないか?」

「もちろんだとも。で、協力って何をすればいい?」


 グラニスはにやりと笑う。


「ただ、食べてくれればいんだ。俺の作った料理を」


 ――――――――――――


 料理というのは、錬金術みたいなものだ。


 実験に、実験を重ねて、目指すおいしさへとたどり着く。


 調味料の配分や入れる順番はもちろん、単純な火加減ひとつとっても味が全然変わってしまう。


 グラニスは、ビルの倉庫のような工房をそのまま借りて、屋台をはじめた。


 はじめは、ビル相手に昼食をいろいろつくってみた。


 何日かするとビルが勝手に話してしまったのか、ビルの工房近くの魔法大工の仲間や、ご近所の方々などもお昼時に集まるようになってきた。


 屋台の前に、椅子やテーブルも並べてさながら小さなレストランである。


「次のお客さん! できましたよー!」


 料理は基本無料で振る舞った。


 なぜならこれは、どんな料理がどんなバフにつながるのかという体のいい”人体実験”だからだ。


 すべてのお客さんにバフ魔法の話など事情を説明したが、ほとんどのひとは、


「よくわからんが、死ななきゃええよ!」


 という返答で、うまいうまいと言って食べてくれた。


 死なない保証がないのは申し訳ない。

いや、普通に料理しているだけなのだから、大丈夫なはずだが……。


 たまに料理の天才だとか褒めてくれる気のいい人もいる。


 おいしいといって食べてくれる人のために腕を振るうのは本当に気分がいい。


 1ヶ月ほどが経ち、どうやら街中にも噂が広がり始めているらしい。

 繁華街からは外れた、しかも倉庫の中にあるこんな屋台に行列ができるようになってしまった。

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