#54 スカイフィッシュのムニエル〜大魔導士は人の話を聞かない〜(1)
「えー、ほんとこれどうなってんの? ヤバすぎじゃない? タダでバフ魔法とかチートでしょ。 ねぇねぇどうなってるの?」
「あのぉ、質問したいのはこちらなんですが……」
「だめっス。この人、たぶん人の話なんまり聞かないタイプっスよ」
グラニスとミルカは、魔法使いに質問責めにあっていた。
━━ここは空中都市『フォルトダンテ』。
魔法使いと錬金術師たちが住む魔導都市である。
◇
話は、ドラゴン討伐キャラバンが終わり、街の冒険者ギルドに戻ったところまで遡る。
「ドラゴン、討ち取ったりー!」
「いやぁ、ほんとに倒しちまうとはすげぇな!」
冒険者ギルドは盛り上がりに盛り上がっている。
そんな中、ギルド嬢がグラニス達に駆け寄って来る。
「グラニスさん、ミルカさん! よかった! 生きて戻ってこられて……本当にありがとうございました」
「いえ、こちらもドラゴンの肉はいただきましたし、いい依頼をありがとうございました」
「それでですね、お二人に召集がかかっているんです」
「召集っスか?」
「『フォルトダンテ』ってご存知ですか?」
「あの空に浮かんでいるっている魔法使いがいっぱいいるっている都市っスよね?」
グラニスは正直聞いたこともなかったが、そんなところもあるのかとなんとなく相槌をうった。
「迎えを寄越すから、今すぐ『フォルトダンテ』まで来るようにと」
「誰がそんなこと言ってるんスか?」
「大魔導士フラスカ様です」
「誰っスか? それ?」
「ええ? ご存知ないんですか? まぁお二人は冒険者ではないですもんね…… 今生きている中で、世界最高の付与魔術師と呼ばれるお方です。その素性はあまり明らかになっていないのですが、彼女がいればどんなダンジョンでも無敵だという噂です」
「そんなスゴい人が、なぜ俺たちに?」
「何やら魔剣の件で、聞きたいことがあるからと」
━━そういえば、トルキアで「魔剣の件は、魔道具ギルドに届け出を出す」って言ってたな……
そこから伝わったのか。
そのとき、冒険者ギルドの扉が勢いよく開く。
「グラニス殿は、こちらにおいでか? 少し道を間違えてしまい、遅くなってしまった!」
黒い頭巾をかぶった、長身の魔導士風の女性が大きな声で語る。
「自分が、グラニスだが……」
「おおちょうどよかった!! フラスカ様がお待ちだ! 今すぐに出発しよう!」
「ちょっと待つっス! あんた誰っスか?」
女は頭巾をとる。
中からは、銀色の短髪に鋭い目つきの顔が出てきた。
「これはこれは申し訳ない。私は、魔法使いのシルヴィアだ。フラスカ様のもとで研究をしている。これからお二人を時空間魔法で、『フォルトダンテ』までお連れする!」