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#31 ツルギイカのフリット〜ゴンドラのエルフと堤防の釣り人〜(3)

「そういえば、ツルギイカは、水神様の好物でもあるんですよ」

「水神様?」

「ああ、一般的にはリヴァイアサンって名称ですね。この辺りだとたまに海岸に打ち上がったり、定置網にひっかかったりして十数年に一度獲れるみたいなんですよ。そういう時はお祭りになって……」


 このハーフエルフは何を言っているんだ。


「リヴァイアサンってあの伝説のか?」


 リヴァイアサンは、全長数十キロメートルにもなる超巨大な水龍だ。子供の頃に絵本で読んだことがある。翼で飛ぶこともでき、大津波や大嵐を引き起こすとされる、海の王だ。


「ええまぁ種類としては一緒とされているんですが、ここら辺にいるのはそんな伝説みたいな巨大さじゃないみたいですよ。彼らから選ばれし者が、伝説の水神として強力な魔力を得るそうです。とはいえ、全長数十メートルはあるんですって」

「エリーゼは見たことないんスか?」

「はい、私が来てからはまだ。でも、結構美味しいらしいですよ!」


 えっ、美味しい? 食べるのか? リヴァイアサンを? まさか。


「街の人総出で解体して、楽しむんだそうです!」

「そんなことして罰当たりじゃないんスか?」

「やはりそう思いますよね」


 エリーゼは苦笑いしている。


「水神様とか呼んでおきながら!」

「私も、初めて聞いた時は驚きました。でも、現地のひとたちからすると『こうやって近海まで来てくださって水神様の力の一部を、私たちに分け与えてくださってるのだからありがたくいただきましょう!』という考えみたいですよ」

「そりゃ、都合のいい解釈っスね!」

「漁師の人なんかは、本物の水神様が悪さをしないように『お前もこうやって食っちまうぞ!』と脅しているんだと笑ってました」

「そりゃ豪気だなぁ」


 トルキアの人たちのたくましさには驚かされる。


 きっと初めて食べた人たちがおいしかったので、でっち上げた話なのだろう。


「いっぱい買われましたが、この後はどうしますか?」

「うーん、エルメスさんにも会えなかったし、一度港の方に出て、屋台の準備かな」


 日も少し沈み始めている。


「あっ、エルメスさんにお会いになりたいんですか?」

「ん? 知り合いなんスか?」

「いえいえ、お話ししたことはほとんどありません。ですが、いつも堤防のところで釣りをされていらっしゃいますので……」

「師匠、これはチャンスじゃないっスか!」

「ああ、エリーゼさん、そこまで連れていってくれないか」


 エルメスが、見つかった。やっぱりツイている気がする。

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