#21 エンジェルポークの燻製ジャーキー〜ミノタウルスを討伐せよ〜(3)
完成したジャーキーを、冒険者のゼクスに試食してもらう。
ムシャムシャ
「おお、こりゃ、うまいが、結構かみごたえがあるな」
「しっかり水分を抜いたからな、その分、物理防御の効果も高くなっているはずだが」
「なるほどな……おーい、ちょっとこっち来てくれぇ」
ゼクスに呼ばれて、剣士らしい冒険者がひとりやってきた。
「ちょっとそこに落ちてる太めの木の枝で、俺の頭を思いっきり叩いてくれ」
ゼクスが指差した方に、叩かれたらまま痛いであろう、枝というにはあまりに太い、丸太が転がっていた。
「おいおい、どうした? マゾヒストに目覚めたか?」
「まぁ、いいからいいから」
「ほんとにいいのか?」
「ああ、死なん程度に思いっきり頼む」
「後で怒んなよ」
剣士は、丸太を振った。結構な勢いで振った。
実はなにか恨みでもあったんじゃないかくらい、思いきりよく振った。
しかも、頭の上からではなく、横からいった。
つまり顔面に入った。
バキィ!!!!!!
ものすごい音がした。
丸太が、ゼノスの顔に当たって……砕けた。
「ひぃ、何してるんスか……!」
ミルカは手で目を覆っている。
ゼノスの顔も砕けたのではないか……
「おい、ゼノス大丈夫か……?」
「お前……」
「怒らないって約束したじゃないか!」
「全然痛くねぇぞ!!」
「まさか」
「これっぽっちも痛くねぇ! やせ我慢してるわけじゃねぇぞ!」
ゼノスの顔には傷ひとつない。
どうやらバフの効果がうまく出たらしい。ひと安心だ。
「だが、頭って言って顔に行く奴がいるか! そこは怒ってもいいところだ! こうしてやる!」
「おい、やめろ、やめろ!うひひひひ」
ゼノスが剣士をくすぐり、じゃれあっている。おじさん同士がいちゃついているのを見ると、なんだかほっこりするなぁ。
「グラニスさん、こりゃほんとに効果ありますぜ」
「ああ、思い通りになってよかったよ」
「物理防御強化だけじゃなく、軽く筋力強化もついている感覚があるよい」
意味もなく腕をブンブン回すゼノス。
「ゼノスさん、ミノタウルスに挑むメンバーに配ってやってくれ、お代はいらないから」
「タダでいいのか? バフの魔法だと考えたら信じられないが……」
「今回は、まだ試作品みたいなもんだからな。実地での効果はわからないし、効果時間だって見えない」
「そういうもんか」
「これまでの経験から、半日近くは効果は持続すると思うが……ということもあって、携行できるジャーキーにしたんだ。効果が切れたなと思ったら次のをかじってくれ」
「あい、分かった、任せてくれ!」
できあがった大量のジャーキーを、麻袋に詰めてゼノスに渡す。
「ミノタウルス、倒せることを願っているよ」
「ああ、楽しみに待っといてくれ!」
グラニスとゼノスは握手を交わした。
「お金もらっとけばよかったのに、もったいないっスね」
「いいんだよ。商売はつながりが命。まずは信頼してもらえるお客さんをつくらないとな」
「まぁそれもそっスね」
ミルカは商家の生まれだけあって、商売感覚には優れている。
かっこよく言ってみただけだったが、あながち外れてないのだろう。
ゼノスが冒険者たちをかき集め、ジャーキーを見せながら、なにやら説明している。
そして、一人にひと掴みずつ配って、冒険者たちは、皆で洞窟へと入っていった。
「うまくいくといいっスね」
「頼むぞ、ジャーキー」
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