#19 エンジェルポークの燻製ジャーキー〜ミノタウルスを討伐せよ〜(1)
ところで、この冒険者キャンプは洞窟でどんな依頼をこなしているのだろう。
よく見ると、どの冒険者も鎧や服がところどころ切り裂かれており、からだにも切り傷が多いようだ。
グラニスは、ちょうどカウンターに座っている冒険者たちに話を聞いてみる。
「ここにいる冒険者は、洞窟で何をしてるんだ?」
「ミノタウルス討伐だよ、体躯が発達した牛のバケモンだ」
「この洞窟にミノタウルスが住み着いちまって、そこから魔物が湧くようになって、近くの田畑が荒らされたり、通行人が襲われたりしちまってるらしい」
「それで冒険者ギルドに討伐の依頼が来たって訳だ」
なるほど、そもそも冒険者ギルドというものがどういうものなのかよくわかっていなかったが、みんなが困りごとを依頼できる場所なのか。
「だが、ここのミノタウルスが厄介でな」
「両手に冒険者から奪ったバトルアックスを持って暴れまわってるんだ」
「防御魔法をかけながらなんとかやってるんだが、向こうの攻撃が速度も威力も上回って、そもそもこちらが攻撃する隙を与えてもらえねぇ。どのパーティも倒しきるところまではいかねぇんだ」
「もう1ヶ月はこう着状態ってところだな」
「とはいえ、Sランクの冒険者たちは、こんな洞窟見向きもしねぇ」
「それでほらこの通り、俺たちみたいな冒険者たちが集うキャンプ場ができちまったんだ」
たくさんのテントがひしめく経緯がわかった。
「とにかくまずは相手の攻撃を受けきること。そうすれば隙ができ、こちらの攻撃の機会が生まれる」
「これを繰り返さなくちゃならねぇんだが、相手を削りきる前にこちらがギブアップしちまうんだ」
それって......
グラニスは、ひらめく。
「それは、もっと今より物理防御力が強化できれば討伐ができそうってことか?」
「まぁ、そうなるな」
「それなら任せてくれ!」
「そうか! これが本当にバフ屋台なら……できるのか!?」
「ああ、たぶんできる! だが少し時間が欲しい。3日くれないか?」
「ここまで来たら、3日なんて待つ内に入らねぇよ! 楽しみだ!」
いろいろ教えてくれた冒険者はゼクスと名乗った。
グラニスは冒険者たちが寝静まった頃から、仕込みをはじめる。
ミルカも、今日は張り切りすぎたのか、グガーグガーと大いびきをかきながら気持ちよさそうに眠っている。
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