#18 上薬草のうまみおかゆ〜冒険者キャンプで「ヨシノヤ」開店〜(2)
「このおかゆ、うめええええ!」
「きのこのダシがよく効いてんなそうかダシ入れればうまくなるのか...」
「洞窟で冷えたからだ、あったまるぅ!おかわりくれ!」
冒険者たちは、ものすごい勢いで、うまいうまいとおかゆを平らげていく。
「ほらほら、心配しなくてもたくさんあるっスから、順番に並ぶっス」
ミルカはテキパキと、客をさばいている。
ヨシノヤの看板娘は、頼もしい限りだ。
からだの大きい冒険者たちが、小さい女の子に指示されてすごすごと従っている姿は、なんだか微笑ましい。
「しかも、なんだこれ、傷が治ってくぞ」
「ええ、薬草を使ってますんで。少しでも傷を癒してもらえればと思いたっぷり入れてみました」
「なるほどなぁ、探索後にはありがてぇ」
突然、冒険者の一人が叫びだした。
「うわ、嘘だろ! えっ! 折れてた腕が治った!」
「おい見せてみろ! 叩くぞ!」
「痛く……ナァーーーーイ!!」
「おお! すげぇ!」
「なんだ、このおかゆ! ヤベェもんはいってんじゃねぇか?」
「失礼っスね、まったく!」
思ってもみなかったことだ。
使ったのは上薬草とはいえ、薬草には体力回復と簡単な傷を治すくらいの効果しかない。
どうやら、薬草自体の効果を向上させるというバフも可能らしい。
これは大きな発見だ。例えば、より治癒効果の高い【ポーション】を使って料理をつくったらどうなるのだろうか。いつか試してみたい。
「師匠は、バフ魔法の効果がついた料理がつくれるんスよ!」
「はぁ、これが冒険者ギルドで噂になってたバフ屋台ってやつか」
「うまいもん食えて、バフまでかけてもらえるなんて最高だな」
「ああ、これくらいの依頼じゃバフ魔法使えるような魔術師は来てくれないしな」
「そうっスよ! ありがたく食べるがいいっス!」
どうして、ミルカが自慢しているのか。
とはいえ、やはりこうやっておいしいと言ってたくさんの人が自分の料理を食べてくれるのは、本当に嬉しいものだ。
王宮料理人時代に失いかけていた料理人としての最高の喜びを取り戻していた。
「転機をくれたって意味じゃ、王宮の料理人のやつらには感謝してもいいかもな」
いや、やっぱり取り消し。自分の料理を台無しにされて職を失わされたんだ。思い出すと腹がたつ。
まだ許してやんないぞ。
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いつも拙著をお読みいただきまして本当にありがとうございます!