#16 地下牢のクサい飯〜王宮料理人たちは鞭で打たれる〜【王宮サイド】
一方、王宮では、王宮特殊尋問官による尋問が始まろうとしてた。
グラニスをハメた一人である王宮料理人ルメールは、近衛兵に殴られ気を失った後、気がつくと、地下牢に閉じ込められ、椅子に両手を後ろ回しにする形で縛られていたのだった。
服もパンツ以外すべて脱がされている。
尋問官がルメールの顎を、鞭の柄の部分でクイとあげる。
「おい! ルメール貴様! 王宮料理人第二位という立場にありながら、ルイス王に毒を盛るとは何事か!」
「尋問官さん、何言ってんだ! 毒なんか盛ってない! 味見だってしたさ!」
ルメールは尋問官を睨み返す。
尋問官は、ルメールの露わになっているふとももを、
バチンッ!
と鞭で叩いた。
「痛ぇぇぇええええええ!!」
「王の苦しみに比べればなんということもなかろう」
「何かの誤解だ! そう誤解なんだよ! 料理が原因とは限らないだろうが!」
「誤解とはなんだ! 痴れ者め! あのビスクを飲んだ瞬間から王は苦しみだしたのだぞ!」
バチンッ!
今度は顔を鞭で叩いた。
手が縛られているので、さすることもできない。
「がぁ!! 俺じゃあないと言ってるだろう!」
「もういい加減口を割って楽になれ。 誰の差し金だ? 商会のやつらか? 没落貴族か? 他の国か?」
「つくったのは俺一人じゃない! 他の奴らかもしれないだろ!」
「ああ、だからお前のお仲間たちも同じく尋問している」
ルメールは全身を鞭で打たれ続け、その度に情けない声を上げていた。
徐々に気力も失われてきた。
「やめろ……俺じゃない……俺じゃないんだ……誤解だ……」
「尋問官である私の仕事は、お前の言い訳を聞くことではない。誰の差し金であるか聞き出すことである。それ以外のことを口にするな」
話は全く平行線だ。
尋問官は、ルメールたち料理人が原因であると決めつけており、ルメールには全く心当たりがない。
「通常であれば、即刻処刑であるが、誰の差し金かわからねば対処もできん」
「……」
「これからも尋問を続けるから。覚悟しておけ大罪人」
そう言うと、尋問官は弱ったルメールを縛っていた紐をゆるめ、床に彼を椅子ごと蹴飛ばした。
まだ紐がほどけておらず、受け身が取れない。ルメールが、哀れに転がる。
尋問官は、そのまま牢屋をがしゃんと閉めて出て行った。
「どうして…どうしてこんなことに……」
ルメールの目に涙が浮かんだ。
「グラニスのビスクと何か違ったのか? バトルシュリンプの処理が俺とあいつで違ったのか? そこに毒があったのか? いや、俺を嫌う誰か王宮内の人間の仕業か? わからん! わからん! なぜだ、なぜだ、なぜだ!!」
王宮の地下牢にルメールの声が虚しく響く。
王に勘違いをさせることで、グラニスを追放した料理人たちは、今度は自分が勘違いで処罰されそうになっているのだった。