#14 コッコ鶏のからあげ〜追放命令と旅立ち〜(3)
近衛兵たちは、少し怪しがりながら、からあげを口に運ぶ。
ザクッといい音がする。
「うまい…これ、うまいぞ…」
「ああ…うまいな…こんなうまいからあげはじめてだ…」
先ほどまでの緊張感も少しほどけ、近衛兵たちはガツガツ食べていく。
ちょうど夕飯の時間だ。本当に腹も減っていたのだろう。
「うますぎて、目が覚めて来た」
それは、バフの効果だ。うまくいったようだ。
「おいおい、俺の分はねぇのか?」
雰囲気の緩みを感じでビルが割って入ってくる。
「心配するな。多めにつくってあるから、そこ座っておいてくれ」
全員、ザクザクはふはふと食べてあっという間に山盛りのからあげは消えた。
「ふぅ、こいつもうめぇな!!」
ビルが、おなかをポンと叩く。
近衛兵が、カウンターをドンと叩く。
グラニスはビクッとする。
ミルカは包丁を、両手で握っている。
おいおい、店で刃傷沙汰は勘弁だ。喧嘩っ早い、女の子だ。
「グラニス・ヨシノ」
「なんだ?」
「うまかった…うまかった…が、王の勅命である」
「わかってるよ。言った通り、賄賂か何かのつもりで食ってもらったわけじゃねぇ」
「明日の朝までは待ってやろう」
「はぁ」
「即刻追放の即刻の概念を明日の朝まで伸ばしてやろうと言っているのだ」
近衛兵なりの気遣いらしい。なんともお堅い。
「少しでも準備ができるのはありがたいな」
「では、我々はこれにて」
近衛兵たちはカウンターから立ち上がり、帰って行く。
その途中で振り返り、
「グラニス・ヨシノ、これからどうするのだ?」
「この屋台と旅に出るつもりだ」
「屋台と私もお忘れなくっス!」
「そうか、いつかまたこの王都の近くに戻った時は、行かせてくれ」
そう言うと、近衛兵たちは、手を振って去って行った。
ビルとこの工房にも随分世話になったが......
さぁ、ついに出発のときだ——