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#13 コッコ鶏のからあげ〜追放命令と旅立ち〜(2)

 ビルとミルラが心配そうな顔でグラニスを見る。

 心配するな。そろそろ出て行こうと思っていたところなんだ。


「わかった、出て行く」

「どうしたいきなり物分りが良くなったじゃないか」

「まぁ、この王都にそれほど未練もないしな」


 ビルや近所の仲良くなった人たちは多少心残りだが、旅に出ようと思っていたんだ。いつか別れの日は来る。


「おい、近衛兵のお二人さんよ」

「なんだ、グラニス・ヨシノ」

「飯、食ってけよ」

「は?」

「タダで食わせてやるから」

「王の勅命であるぞ。そんなことで、我々は」

「そんなセコいことは考えてないさ。腹へってるなら座ってけ」


 近衛兵たちは、すごすごとカウンターへ座る。


 こんな人間を王は追放するのかと、驚くようなうまいものを食わせてやる。そして、いつまでも、あの飯はうまかったなぁと思っていきて生きていくがいい。


 それがグラニスにとって、料理人としてできる精一杯のいじわるだった。


「ミルカ、ちょっと手伝ってくれるか?」

「了解っス、師匠!」


 午前中に仕込んでおいた、鶏肉があるはずだ。


 あえて、ディメンションボックスにいれずに味を染み込ませておいた。


「おお、これはコッコ鶏っスね?」

「そうだ」


 コッコ鶏はこのあたりじゃ食用の家畜として飼われている普通の鶏の亜種みたいなもんだ。見た目は似ているが、トサカが大きく発達していて、身体も一回り大きい。


 味は、身体の大きさの割には大味ではなく、旨味が多いのが特徴だ。


 コッコ鶏のモモ肉を大きめの一口大に切って、塩コショウをもみ込み、少し粘りが出たところで、醤油と酒、砂糖を入れ、下味を染み込ませておいた。


「これから夜勤だろうし、スパイス多めで、覚醒のバフをつけてやろう」


 乾燥した香草を砕き入れ、少しの唐辛子粉、そしてグラニス特製のミックススパイスをたっぷり入れて改めて揉み込む。


 すでに屋台にはスパイスのいい匂いが広がっている。


「ミルカ、片栗粉と小麦粉を用意してくれ、あと鍋にたっぷり油を入れて、中火にかけてくれ」

「アイアイアサーっス!」


 ミルカはテキパキと準備を進めてくれる。


 さて、ここから料理人の腕の見せ所だ。


 小麦粉と片栗粉を半々の割合でさっくりとまぜる。


 そこにスパイスたっぷりで下味のついたコッコ鶏のもも肉を入れる。


「油の方はと…」


少し粉をつけた長箸をいれると、しゅわしゅわと音を立てている。


「油の泡の大きさ的にあと10秒したらはじめよう」


 もも肉同士をぶつけて、余分な粉を落として……


油にダイブ!!


 ジュワジュワ!! パチパチ!!


 気持ちのいい音が響く。


 近衛兵たちも固唾を飲んで見守っている。


 たまに、油の中で揚がっているモモ肉たちを長箸で持ち上げて、空気に触れさせてやる。

 空気に触れさせることで、ベタッとせず、カラッとザクっとした口当たりになるのだ。


「師匠の揚げ物の手さばきはいつ見ても、なんか楽しいっスね」

「俺も、俺の師匠の猿真似だけどな。皿にベビーリーフをちぎって並べてくれ」

「はいっス!」


 衣をまとってこんがりキツネ色に仕上がったコッコ鶏のモモ肉を金網の上に置き、少しだけ休ませる。揚げ物は、ほぼ蒸し物。この間に中まで火を通すのだ。


 休ませ終わったら、ミルカが用意してくれた皿に盛り付けて…完成だ。


「コッコ鶏のからあげ、二人前どうぞ」


 カウンターに座った近衛兵2人の前にでかでかとしたからあげがいくつも乗った皿。


「さぁ、冷めないうちに。揚げ物は揚げたてが一番おいしいんで!」

「ああ、では頂戴する」

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