#12 コッコ鶏のからあげ〜追放命令と旅立ち〜(1)
ミルカに屋台の厨房の紹介をする。
ディメンションボックスがあるには驚いていたが、驚きよりも好奇心が前面に出て、目を輝かせていた。
「こんなものつくれるんスね」
「まぁ、このビル様にかかればな!」
「デカブツさんもなかなかやるじゃないスか!」
ビルが思い出したように言う。
「あっグラニス、この屋台なんだがよ、しまい方教えてなかったな」
「確かに」
「まぁ開け方とそんなに変わらないんだが、屋台に手をかざして『店主グラニス・ヨシノが命ずる。とじよ、ヨシノヤ!』と言うだけだ」
「店主グラニス・ヨシノが命ずる。とじよ、ヨシノヤ」
言われた通りに手をかざして、言葉を言うと、パタパタと屋台が折りたたまれていき、最初に見た肩掛けのついた木箱になった。
「これで、かついで運べるってわけだ。まぁ、障害物がないようなところなら、屋台の形態のまま移動もできるぜ」
「なんスか!この屋台!変形するじゃないっスか!めちゃくちゃカッコいいっス!」
ミルカが目を輝かせている。
ミルカにせがまれて、屋台にしたり、箱にしたりを繰り返していると、ビルの工房のドアが、荒々しく蹴破られた。
「ああ、誰だぁ?」
ビルが、低い声を唸らす。
2人分の人影が見える。
「王宮近衛兵、カリム以下2名である!この場に、グラニス・ヨシノがいると聞き及んだが、誠であるか!」
倉庫に、近衛兵の声が響き渡る。
「自分が、グラニス・ヨシノだが」
近衛兵たちが詰め寄ってくる。
「王よりの勅命である、グラニス・ヨシノ、即刻王都より出て行くのだ。王は、まだ貴様がこの王都に留まっていると聞きつけ大変お怒りである」
「それは失礼した。すぐに出て行けとのお言葉は頂戴したが、具体的にいつとは聞いておりませんでしたので、こうして友人たちと楽しく暮らしておりました」
「屁理屈を……王命を預かる我々に失礼であるぞ!」
「そして、なんだこれは!!」
「見てわからないか?屋台だよ屋台、冷やかしなら帰ってください」
「屋台が浮遊するわけなかろう!」
「即刻出て行け!」