第6話 ゴミはゴミ箱へ
ド深夜投稿になってしまいました。
本日分はもう一回投稿します。
「おいっ、待てよ!」
天空都市の探索を再開するはずだった俺はなぜかウルスラから呼び止められた。
無視しても進んでもよかったのだが、このまま付きまとわれてもかなわないので仕方なく俺は後ろを振り返った。
「なんだろう?」
ウルスラの迷子問題は前回——というかつい数秒前に解決したばかりである。
これ以上何があるのか俺には分からない。
「迷子じゃねぇって言ってんだろ! 話があんだ!」
迷子ではなかったらしい。だが、こちらとしては話などない。
俺はこんな口汚いヤバめのクソガキに関わりたくなどないのである。
「なんだ? 金ならないぞ」
正直人間界の通貨ならそれなりにあるが、ここで使用できるかは不明だ。
そもそも物乞い相手に「金ならあるぞ」という馬鹿なやつはいない。
「違うわ! お前、新人の神だろ?」
どうやら違ったらしい。
ていうかなぜバレた?
別にキョロキョロといかにも初めてこの街に来ましたよ的な素振りは見せていたわけではない。
少なくても目の前のこのクソガキに見抜けるわけがない程度には。
そんな事を思っていた俺にウルスラは言う。
「リーリーの駄本持ってるだろ? 普通の神は読んですぐに捨てるか異次元収納の一番奥に放り込むんだぞ、それ」
そう言いながらウルスラは俺が小脇に抱えた無駄にデカい本を指差した。
(やはりゴミだったか、これ。今からでも捨てておくか。……とそんなことよりも)
「異次元収納?」
俺はウルスラの異次元収納というワードが気になった。
確かに異次元収納の魔法は存在していることは俺も知っている。
だが、あの魔法は人間界では数えるほどしか使える者はいないかなり希少性の高い魔法だ。
現に3人いる勇者でも使える者は1人としていない。
するとウルスラは納得したように言う。
「やっぱ新人か。神になった時に教えてくれなかったか? まぁ一応リーリーの駄本にも書いてあるけど、あれ分かりにくいからな」
どうやら異次元収納の魔法も転移魔法と同じく神になったら使える便利魔法の一つだったらしいが、俺はその事をセレネアから聞いてはいない。
よくよく考えれば転移魔法自体、俺がセレネアに尋ねていなければ使えるようになっていた事に気づかなかっただろう。
つまりセレネアはあのクソ分かりづらい駄本とここに転移するのに絶対に必要な転移クリスタルだけの本当に必要最低限の物だけを渡してさっさと天界に帰還したという事だ。
「……あの駄女神が」
2級神がどれほど忙しいか知らないが仕事がテキトーすぎるあの駄女神の顔を想像して俺はそう吐き捨てた。
それにしてもウルスラは意外と良い奴だったようである。
それでも俺の中ではまだヤバいクソガキ認定を覆すまでには至ってないが、それでも助かったのは事実だ。
転移魔法と同じく異次元収納魔法も俺が行使するイメージをすると簡単に発動し、俺は脇に抱えていた無駄に分厚いリーリーの駄本を異次元空間へと乱暴に放り込んだ。
「情報提供は感謝する。——それで新人の神の俺になんか用か?」
神の情報を知っていた目の前の少年にしか見えないウルスラは一応先輩の神だったらしい。
とりあえずクソガキ対応をやめた俺はウルスラにそう尋ねると、ウルスラは俺の服の裾を引っ張りながら耳打ちした。
「ここじゃ人目につく。俺の馴染みの店があるからそこに行くぞ」
そう言ってウルスラは俺を路地に引っ張って行く。
ガキの癖に馴染みの店とは生意気だなと思いつつ、それでも俺はウルスラについていくことにした。
生意気なガキだが、明らかに俺よりは神について詳しそうだったからだ。
どこにいけば会えるかも分からない駄女神セレネアよりは情報をくれるはずだ。
少し歩くとかなり寂れた一軒の喫茶店でウルスラは立ち止まった。
明らかに周りの建物とは違う年代に建てられたかのような雰囲気を醸し出している。
「他の建物と違って嫌に現実感がある店だな」
思わず俺はそう漏らすが別に悪口を言ったわけではない。
確かにボロいといえばボロいが、人間界を探せば普通にどこにでもある程度の物である。
むしろ、この街の見たこともないような素材で作られた建物に案内されるよりかは遥かに落ち着く。
「神が作った物なんか信用できないからな」
ウルスラはそう呟くと、喫茶店の扉を開いたのだった。
謎のちびっ子神ウルスラに喫茶店デート?に誘われたエリオ君。
一体どのような話が聞けるのでしょうか。