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第5話 自称最強魔王のクソガキ

天空都市で自称最強魔王がエンカウントします。

人間界や天界第一区画でそんな事があった頃——。



俺は目の前の光景に唖然としていた。


初めて入った名も知らぬ天空都市に入った俺にとってそこは驚きの連続ばかりだった。


町には素材も建築方法も分からない未来的な造りをした建物の無数に立ち並んでいて、通りには人々が行きかっていた。



(……こいつら1人1人が全員神か?)



確かに人間界の大都市と比べると人通りはそこまでではない。


だが、通りを歩けば普通に人は行きかっており、人間とそこまで変わりない生活を営んでいるように見える。


俺は試しに周囲に魔力感知を仕掛けてみた。もちろん、視線などは向けず勘づかれないように心がけてだ。



(おいおい、マジか)



結果は俺の想像を超えるものだった。


そこらへんに歩いている一般人っぽい神ですら明らかに人間界の常識では考えられないほどの魔力をそれぞれが有していた。


しかも中にはその実力を隠すように魔力を抑えている者までちらほら見える。



(適当にそこらへんにいるやつに声をかけて5人パーティーでも組ませたら、普通に国1つくらいなら落とせそうだな)



エリオが思ったことはあながち間違いではなかった。


実際に最下級に位置する第11級神ですら並の魔人と互角以上に戦える実力を有している。


そして並の魔人が数体いれば、勇者や上位冒険者がいない小国であればいとも簡単に落とす実力があるのだ。


そんなことを考えていると不意に後ろからツンツンと背中を突かれて、俺は振り返る。



「……いない?」



だが、振り返ってもそこには誰もいなかった。


気のせいか。


そう思って俺が歩いていた方向に再び歩き始めようとしたその時。



「おいっ! お前、無視すんな!」



確かに聞こえた子供の声に俺は再度振り返るが、やはり誰もいない。


こういう悪ふざけが神の間では流行っているのだろうか?


俺的にはそんな流行りなどどうでもいいし、そんな無駄な事に付き合ってやるほど暇でもない。


俺は聞こえた声を無視して先に進もうとすると、今度は「ていっ!」という声と共に後ろから腰辺りを蹴られたような衝撃を受ける。



「……なるほど、不可視魔法か」



俺は振り返ったがやはりそこには誰もいなかった。


珍しい魔法だが、恐らく不可視魔法で姿を消し俺に攻撃を加えてきたのだろう。


大した攻撃ではなかったとはいえ俺もそこまでされて黙っているほど優しくはない。


そして次の攻撃に備えるべくエリオは戦闘態勢へと移行しようとしたその時だった。



「おいっ、お前! ここだ! ここ!」



俺はふと下を見下ろした。


するとそこには頭の右だけに角を生やした小さな少年が立っていた。



「子供だな」



俺はなんとなく神は全員大人だと思っていた。


とすればこの目の前の少年は神が生んだ子供なのだろうか?


神に生殖機能があるかは分からないし、神が生んだ子供が神となるのか俺は知らない。


よくよく考えればセレネアもそれなりに幼かったがそれでも若い冒険者を探せばそれほど珍しくはないくらいの年齢には達していた。


だが、目の前の少年は明らかにセレネアよりも幼く、どう考えても神になれるような年齢には達していないのは明らかだった。


俺が反応に困っていると、少年はなぜか俺の事を睨みつけてきた。



「子供じゃない! 俺様の名はウルスラ、偉大な魔王として魔界に名を馳せた最強の魔人だ!」



ウルスラと名乗る少年は大きな声でそう宣言すると小さな体で精一杯胸を張っている。


町を歩く神々はいきなり大きな声を上げたウルスラをチラっと見たが、すぐに何事もなかったかのように歩き始めた。



(……ヤバいな)



もちろん最強の魔王に絡まれて絶体絶命という意味でのヤバいではない。


精神的にヤバそうなやつに絡まれてめんどくさそうという意味でのヤバイである。


ウルスラという名のクソガキは自らを最強の魔王を名乗ったが、ここは天界にある天空都市だ。


魔王と神々の関係性はよく知らない俺だがこんな所に魔王がいるはずがない事くらいは分かる。


もし、仮に目の前のクソガキが本当に魔王なのだとしたら既に神々とこの小さな魔王との壮絶な戦いが幕を開けていただろう。


まぁ仮にこの少年が最強の魔王だったとしてもその戦いの結末は明らかなのだがな。


ちなみにだが俺はあまり子供の相手をするのが得意ではない。


勇者としてどうなんだという話だが、そういう事は他の勇者に任せていた。


とはいえ、まったくコミュニケーションが取れないほどのコミュ障ではなく、俺は仕方なく少し頭が悪そうな自称最強魔王ウルスラとコミュニケーションを取ってみることにした。



「ウルスラと言ったか? お父さんかお母さんは一緒じゃないのか?」



俺はそう優しくウルスラに声をかける。


迷子の基本はまず近くにいるであろう親を探す事だ。


それでも見つからなければ然るべき機関に送り届けるしかないのだが、大体はそれで片が付く——と俺の弟弟子兼爽やかイケメンの勇者が言っていた。



「俺は子供じゃないって言ってんだろ!」



だというのに目の前の少年ウルスラはまたも意味不明の言動を繰り返している。


正直俺の実力では目の前のこの口の悪いクソガキへの対処方法が分からない。


クレイならお得意のコミュニケーション能力を駆使してどうにかするのだろうが、残念ながら俺はそんなチート能力は持ち合わせていない。


自ずと俺は一つの結論に達し、ウルスラに笑顔でこう言ってやった。



「……そっか、子供じゃないのか。ならお父さん、お母さんは自分で見つけてくれ。じゃあな」



俺は元勇者である。——が今は勇者でもないし、そもそも勇者だった頃からめんどくさい奴には関わらない事を信条に生きてきた男である。


幸い本人が「子供じゃない!」と言っている事だし、1人でどうにかできるだろう。


仮にできなくても別にここは魔獣が溢れる荒野でもなければ、魔力探知が狂いまくる魔界の森でもないので、どうとでもなるはずだ。


そうして、俺は踵を返し天空都市の探索を再開するのだった。



ヤバいやつに絡まれたエリオ。

果たしてエリオは逃げ切れるのでしょうか。

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