第1話 神になることを望みますか?
主人公の登場はここからです。
あ、よくよく考えたらここで魔人達を皆殺しにするとストーリー上都合が悪くなるので半殺しという設定に変更しましたw
その他にもちょいちょい変えていきますが基本的な流れは変更なしです。ややこしくてすいません。
ふぅ、終わったか。
俺は向かってきた最後の魔人を斬り捨てて、その場に座り込み一息ついた。
ここは魔界のとある場所。
周囲は無限に広がる荒野で視界を埋め尽くすほどの無数の魔獣や魔人が俺を囲うように地に這いつくばっていた。
「貴様、ここが誰の支配領域か理解しているのか!」
たった今俺が斬り捨てた魔人が俺を恨めしそうに睨みつけてきた。
立つこともままならない分際でなんとも生意気な事である。
だが、無視してやるのも可哀想なので座ったまま魔人の質問に答えてやる事にした。
「さぁ? ここが経験値の稼ぎやすい穴場って聞いたから」
正確には師匠曰く【討伐ポイント】というらしいが、別に言い方なんてどうでもいいので俺は魔人の質問に正直にそう答えた。
俺がそう言うと何が気に入らなかったのか、魔人は更に喚き散らし始めたが正直何を言っているのか俺にはさっぱり分からない。
「うるさいな」
面倒になった俺は剣の腹で魔人の頭を殴りつけた。
すると今度はしっかり意識が飛んでくれたのか魔人は静かになった。
「さて、前の分と合わせて必要量には達したはずなんだが」
俺は訳あって、名前もよく知らない魔王の支配領域へと遠征に来ていた。
もちろん魔王を討ち世界を救うとかそんなありふれた使命感に駆られたからではない。
そんなものは他の勇者にでも任せておけばいいし、そもそもたかだか魔王を一人殺った所で世界は平和になったりしないからだ。
それはなぜか?と聞かれたら簡単な話である。
この世界には魔王という存在が6体いるのだ。
それに対抗してかは分からないが勇者という存在も世界には4人いて何を間違ったのか俺——エリオもそんな4勇者の一人に選ばれてしまったのである。
ちなみに俺は勇者ではあるが、人々からはボッチの勇者とか根暗の勇者とかそういう類の陰口を叩かれている。
理由は単純で俺に仲間がいない事や他の勇者との合同作戦の誘いを全部ガン無視したことが原因でそんなことになったらしい。
要するに俺はすこぶる人気のないある意味唯一無二の勇者というわけだ。
別に好きで嫌われたいわけではないが、俺には勇者などやっている暇などないのだから仕方がない。
そんなどんだけ頑張っても何の役にも立たない事よりも俺には今やらなければならない事がある。
それは俺の師であり孤児だった俺を一人前になるまで育ててくれた親でもある前勇者リア=クリステアが俺に語ったこの世界における真実を確かめる事。
そして突如として俺の前から姿を消したリアの行方の手掛かりを探す。
俺はその目的の為だけにたった一人でこんな所までやってきたのである。
師匠の話が本当ならそろそろのはずなんだが。
特に周囲の状況に変化がなく、俺がそんなことを思ったその時だった。
【討伐ポイントが一定数を越え、神化覚醒の資格を得ました。実行しますか?】
頭の中に人の声とは思えない程の澄み切った綺麗な少女の声が響き渡った。
まるで神の啓示としか思えないその声に俺は何を答えるわけでもなく座り込んだまま更に待つ。
来たか。
不意に後ろから気配を感じた俺がゆっくりと振り返る。
するとそこには宙に浮いた笑顔の美しい少女がいてこちらを見ていた。
「やぁ」
久しぶりに友人に会ったかのような気安い態度で銀髪の美しい少女が俺に笑顔を向けてきた。
たったの一言だったが、先程の声の主とは違うことに俺は気づく。
そしてそれと同時にリアが失踪前に話していた事が嘘でも冗談でもない事を俺は理解する。
「アンタは?」
そう問いかけてみるがこの美しい少女がどういう存在かは俺には既に大体の見当は付いている。
俺が尋ねると、宙にふわふわと浮いていた少女はゆっくりと地面に降り立った。
そして水色の綺麗な瞳で俺の顔を覗き込む。
「私の名前はセレネア。神界の第2級女神」
銀髪の少女——セレネアの口から出た言葉は俺の予想していた通りのものだった。
とは言っても俺が分かっていたのは俺の前に姿を現すのが神であるという事だけで、セレネアという名は今初めて聞いたのだが。
更に俺のまったく知らないワードがあった。
「2級女神? それはえらいのか?」
普通に考えたらとても失礼というか畏れ多い質問な気もしなくもないが、俺はそんなことなど気にはしない。
俺の目的を考えれば情報収集もかなり大事だからな。
聞けるときに聞いておいた方がいいだろう。
まぁブチ切れられたらブチ切れられたでその時だ。
俺がそんな事を思っていると幸いセレネアクスクスと笑って俺に興味深そうな視線を向けてきた。
「噂通りだね。勇者エリオ」
「俺の事を知っているのか?」
仮にも神であるセレネアが俺の事を知っているとは思わず聞き返すと、セレネアは考える様子もなく言う。
「まぁそれなりに天界でも有名だしね、君。魔王ベルガーのエルクラウン王国侵攻の際に全勇者に出された出動要請を再三に渡って無視。更に侵攻を防いだ後に実行された魔界反攻作戦の事前会議にも顔を出さなかったらしいよね? そもそも全然仲間を作らないし魔王を倒す気はあるのかって天界でも噂だよ」
俺のファンか何かですか? というくらいにペラペラと話を続けるセレネア。
俺でもあぁ、確かにそんなことがあったなとかそういうレベルの話なのだが。
確かリアがいなくなってすぐくらいのちょうど1か月前くらいの話だっただろうか。
あまりにも通信魔法の着信がうるさかったので、着信拒否したから詳しい話は知らないが、どうやら反攻作戦はベルガーのいる居城にまで攻め上がれず失敗に終わったらしい。
ちなみにだがその後、着信拒否をし続けた俺に対して、色んな所から罷免要求が上がりまくったらしいのだが、なぜか全て却下されて今に至っている。
どうせなら勇者なんてクビにしてくれた方が面倒がなくてよかったんだがな。冒険者資格まで剥奪されると少し困ったかもれないが。
まぁされたらされた所でそこまで金には困っていないからどうでもなると言えばどうにでもなる。
俺がそんな事を思っているとセレネアはゆっくりと周囲を見回した。
「でも実力は本物だったようだね。これだけの数の魔人と魔獣を一人で倒してしまうんだから。君が魔界侵攻作戦に参加していたら結果は変わっていたんじゃない?」
セレネアは笑みを浮かべながら言うが、そんなことを言われても俺はベルガーとかいう魔王に会った事がないので答えようがない。
ちなみに今いる場所もベルガーとは違う名も知らぬ魔王が治めている土地で俺がここを選んだのはここが比較的一番討伐ポイントやらを稼ぎやすそうな場所だったからだ。
「そんなことよりも本題を話したらどうだ? アンタは俺とそんな話をするためにわざわざこんな所まで来たわけじゃないんだろう?」
俺の目的もそれだ。
俺だって世間話をするためにわざわざこんな場所までやってきたわけではないのだ。
「それもそうだね。じゃあもう一度聞くね?」
「あぁ」
「勇者エリオ。——貴方は神になることを望みますか?」
【この世界における真実】については次回明らかに。
まぁほぼ言っちゃっているようなもんですが。