第6話 勇者ではないニートだ
ニートハルト「あぁ働きたくないのに。ロリコンもっと頑張って……」
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意味が分からんという方は活動報告を見てくれるとありがたいですw
「これはですね。昔、人間界侵攻を企んだ魔王が送り込んだ四天王を一人で打ち破った伝説の勇者様を探す為に聖鎧勇者様がお作りになられた物なんです」
「へー、そうなんだー」
俺以外にも魔王軍四天王を倒したやつがいたんだなー。やるじゃん人類―。
ますます俺が働く理由がなくなったわー。
冗談っぽく言った受付嬢の言葉にちょっと自分の姿を重ねてしまったが自意識過剰なのだろう。
一流のニートが何とも情けない。
まぁそんな凄い伝説の勇者の事は置いておこう。
元E級冒険者の俺には関係のない事なのだから。きっと。
それよりも俺には気になったワードがあった。
「聖鎧勇者って?」
俺が冒険者をやっていた頃には勇者といえば只の勇者しかいなかった。
すると興味本位で聞いただけなのに受付嬢に若干キレ気味に言われた。
「聖鎧勇者を知らない……? あなたはどこの田舎者ですか?」
す、すいません。田舎者です。だから怒らないで。
先程までは朗らかに話していた受付嬢がこんな態度を取るのだから俺の質問はかなりひどい質問だったのだろう。
だが、知らない物はどうしようもないのである。
すると、俺が本当に知らないのを察したのかキレモードから呆れモードに転換する受付嬢。
「はぁ~、聖鎧勇者様はですね。かの伝説の勇者ハルト様が四天王を打ち破った後、消息を絶たれた数年後に誕生された勇者様です」
なんでそんな事も知らないの? 馬鹿なの? ニートなの? と言わんばかりにそう言った受付嬢。
だが俺にとってニートは悪口ではない。
なぜなら俺はニートという職業に誇りを持っているのだから。
実際口に出されたわけじゃないのだけどね。
まぁそんな事は置いといて受付嬢が俺にとって聞き逃せないワードをはっきりと口にしていたのを俺は見逃さなかった。
「……勇者ハルト?」
俺が思わずついた呟きを聞いた受付嬢はそれはもうゴミを見るような目で俺を見ていた。
「はぁ? 勇者ハルト様を知らない? あなたは何をしにここにやってきたんですか? 私を馬鹿にしているんですか? それとも冷やかし? ふざけているのなら帰ってもらえませんか?」
そ、そこまで言わなくても。
ほんのちょっぴり心当たりがあった俺は一応確認してみた。そう、一応だ。
「はっはっは、もちろん知っていますとも。確か勇者ハルトが四天王を打ち破り消息をお絶ちになられたのは今からちょうど100年前ですよね?」
俺がそう言うと少し怒気を収まったのか、受付嬢は少し落ち着いた声で返した。
「なんですか。ちゃんと知っているではないですか。そうです。勇者ハルト様が四天王を討ったのは100年前。ちょうど1週間前にこのバリエスタで勇者生誕祭があったので正確には100年と7日ですけど」
受付嬢の説明で俺がにわかに感じていた疑念が今確信に変わる。
やっぱ俺かよ!
あのクソじじい! 勇者の誘いは断ったのに勝手に勇者に昇格させてやがった!
ていうかそんな祭りまであるのね!
出てみたかったぜ! チクショウ!
「……どうかされましたか?」
心の声を聞かれたわけではないだろうが明らかに動揺した俺を見て心配そうに受付嬢は俺に尋ねた。
「ははは、いえ、勇者生誕祭出てみたかったなと思いまして」
「あぁ、それは残念でしたね。今回ほどの規模ではありませんが毎年行われていますのでまた来年にでもご参加ください」
「はい、そうします」
まぁその頃には一発当ててあなたの嫌いなド田舎に帰ってニート生活を再開してますけどね。
「ところでお名前を窺ってもいいですか? 冒険者プレートに名前を彫らなければなりませんので」
そう受付嬢に尋ねられ、俺は少し考える。
本名は残念ながらついさっき名乗れなくなった。
とはいえ咄嗟にそう簡単に偽名など思いつかないが、自分の名前を伝えるだけなのに時間をかけるのは余りに不自然だ。
そして俺は短い時間で咄嗟に出した名前が——。
「えーと、じゃあルートで」
「はい、ルートさんですね」
俺が伝えたルートという名を受付嬢は疑うことなく登録用紙に記入していった。
自分で言うのもなんだが、ツッコみ所満載だったように思える。
この受付嬢はあまり気にしない性格なようだ。
そして受付嬢は裏にいる彫師に俺から聞いた名前を伝える為に受付の奥へと入って行った。
次回聖鎧勇者の話をちょっとします。