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とある転移国家日本国の決断  作者:
新たな勢力の出現と瘴気内の動乱
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日・ジ2国間会談

 日本国総理大臣とジアゾ合衆国外交団との会談まで後12時間。日本側と協議した外交官や議員が今日の報告を行う。


「日本国は我々の外交活動は支援してもパンガイアとの戦争には関わり合いたくないようです。」


「何でも憲法で戦争は禁止されているそうで、日本国の副総理は憲法を盾に断固として戦争には参加しないと言っています。」


 外交団が拠点としているホテルでは重苦しい空気が漂う。外交団は副総理と外務省との会談を何度か行い、その度にパンガイアの脅威を何度も説いていた。そして、戦争への協力を依頼していたのだが日本側は自国憲法を盾に戦争への協力を拒否していた。


「馬鹿な、そんな国があるか! ではあの兵器群は一体何だというのだ。」


自衛隊を視察してきた議員が口を開く。戦争を否定しているわりには過剰ともいえる兵器を保有している日本国に疑問を感じているのだ。


「この国の軍は基本専守防衛、攻勢に出れるようには出来ていないと説明を受けている。つまりは完全に戦争ができないわけではない・・・パンガイアに攻撃されれば戦わざるを得ないでしょう。」


「パンガイアが日本国を攻撃する確証はない。それどころか日本国がパンガイア側に付いたらどうする。その時点で我が国は終わりだぞ。」


 態度を明確にしない日本国に外交団の面々は自国の未来を危惧する。日本側としては総理の判断もないうちに明確な回答をジアゾ側に伝えるわけにはいかず、また総理にもしものことがあったとしても副総理や外務省は自分達が「戦争の判断をしたくない」というのが本音であった。既に日本国としての対応策は検討され、いくつか案ができあがっていたのだが、戦争に協力することで発生する責任と、戦争に参加せずに起こる事態の責任をとるのは総理大臣の務めであり、総理が健在な今の状況では総理に判断してもらうのが筋であった。


「アーノルドとスーノルドは必ず日本国を攻撃しますよ。彼らには科学文明国家を支配下に置かなければならない理由がある。」


「魔石の枯渇か・・・瘴気外の鉱山は持って30年だったな。」


「はい。魔石が枯渇すれば魔法文明は崩壊します。その時、世界で台頭するのは科学文明国である我々です。しかし、魔石の枯渇前に科学文明国を支配下に置けば彼等は世界の頂に居続けることができる。」


「瘴気内への侵攻は彼らにとって不倶戴天の敵、神竜を滅ぼすことが第一の目的だろうが、瘴気内の魔石鉱山確保も戦争理由の一つだ。ここを上手く日本側に理解させる必要がある。」


 ジアゾ合衆国は外交と諜報活動によって、これから始まる戦争の原因をいくつか突き止めていた。原因に対処できれば戦争を回避できる可能性があったものの、魔石の枯渇と最後の神竜討伐というものは対処のしようが無かった。


「日本国は戦争に否定的ですが、既に答えは出ているのではないでしょうか?」


今日、日本側と協議した若い外交官が発言する。


「日本国は科学文明国ですが、今までの視察で経済と工業が屋台骨の資本主義国家ということが判明しています。日本国は転移による物流の遮断で文明崩壊の危機を経験したはずです。同じく文明崩壊の危機に晒されている魔法文明のことを理解できているのではないでしょうか。」


「どういうことだ。」


「今日の日本側は戦争は回避できないと理解しているものの、できるだけ戦争回避の方法を探しているように見えました。数年前の我が国と同じですよ。」


若手職員は日本国の情報を元にして日本側のプロファイリングを行う。


「先入観を持つことは危険だと言ったはずだ。会談内容に変更は無い。日本のトップにはパンガイアの脅威を正確に把握してもらう。」


「アーノルドとスーノルドは我々との戦争では超兵器を温存し、瘴気内への侵攻でその全てを使う予定です。日本国は初戦で超兵器を相手にする可能性が高い。我が国のためにも諜報活動で得た情報を日本国へ公開すべきでしょう。」


互いに追い詰められた国同士、祖国の興亡がかかった会談は出し惜しみのないものとなる。



 12時間後、日本国総理大臣とジアゾ合衆国外交団との会談が始まった。ジアゾ側はパンガイアの脅威と戦争の原因、自国が戦争回避のために行った行動などを紹介し、最後に戦争は回避できないことを伝えた。


「既に私共も戦争回避が非常に困難な状態だと把握しています。しかし、我が国は平和国家を掲げる以上、最後まで戦争回避の努力を続けます。」


総理の回答は副総理と同じであり、ジアゾ側は落胆する。だが、今回は続きがあった。


「ただ、最悪の事態となってしまった場合、瘴気内国家と協力しパンガイアに対処したいと思います。また、瘴気が晴れる前にジアゾ合衆国本土とも連絡体制を確立させる予定です。その時は協力をお願いします。」


 総理は戦争になった場合、瘴気内国家と共同でパンガイアに対処し、先に戦闘が始まっているジアゾ合衆国本土とは予め連絡体制を整え連携をとると約束した。

 この会談でジアゾ合衆国外交団は日本国の意思を確認でき、他の瘴気内国家へ出発するのであった。


 会談終了後、日ジ共同で記者会見が行われた。ここで日本国民は黒霧の外がどのような状況に置かれているのか、そして、戦争理由、戦争の回避がほぼ不可能なことを知る。また、パンガイアの戦力や使用する兵器がテレビやインターネットで配信された。

 後日、テレビでは軍事評論家が、インターネット上では軍オタ達による議論が行われ、両者は奇妙な意見の一致を見せることになる。「超兵器が投入された場合、日本の防衛力では防ぎきれない」と・・・

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