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とある転移国家日本国の決断  作者:
新たな勢力の出現と瘴気内の動乱
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南海大島攻略作戦 その6

ナバホ大要塞司令部

 トライデントは今後の作戦を各隊長に伝えていた。


「連合軍は我々に最後に残されたこの地を攻撃するだろう。おそらく、南海鼠人が経験したことのない大規模攻撃が始まる。作戦は単純なものだ。連合軍の大規模攻撃は砲撃と空からの攻撃を皮切りに行われる。最初の攻撃を地下でやり過ごし、敵地上部隊が侵攻してきたらできる限り引きつけて全軍突撃する。目標は連合軍西部司令基地! 敵拠点を落として我々の力を見せてやれ! お前たち・・・今まで俺についてきてくれて感謝する。」


 最早、作戦などというものではない。物資が底を尽き、避難してきた民を維持できなくなった南海鼠人達は、最後の戦いを挑もうとしていた。


「軍団長、何を言っているのです。勝てばいいのでしょう、やってやりますよ。」


「先祖すら経験したことのない大戦、腕が鳴りますわい。」


 トライデントの部下たちは分かっていて勇ましく答える。「すまない」そう思いながらトライデントは軍団長用の個室に入っていく。

 部屋にはシヴァが待っていた。


「トライデント様、なぜ戦いを止めないのですか。鼠人王は機を見て降伏しろと命じていたはずです。」


 シヴァは司令部要員となったことで南海鼠人の実情を把握していた。ナガリ総司令部は攻略され、島中央部が落ち、第2軍団の拠点フゴク洞窟とも音信が途絶えた。もう、まともに戦える状態ではなかった。


「降伏用の白旗は用意してあるよ。連合国への降伏文もできてる。後は俺が命令するだけだ。」


帰ってきた答えにシヴァは激しい怒りを覚える。


「では! 何故! 」


「シヴァ、戦争の終わらせ方って知ってるか? 」


 シヴァが怒りに満ちた声でしゃべると、トライデントはいつもの調子でシヴァに問いかけた。


「連合国は降伏方法を伝えています。それに従えばいいことです。」


「その方法だと、戦争は終わりそうにないんだ。お前も見ているだろう? 軍の中にも民の中にも、まだ諦めていない者達がいる。彼らを無理やり押さえつけて勝手に戦争を終わらせて、その後に何が起きるか予想できるか? 」


「・・・」


「現在、次の戦いを最後の戦いとして民から志願者を募っている。民は負けを分かっている。でも諦めない者達は次々に志願してきている。そういった者達が最後の力を出し切った後に、戦争は終わらせられると俺は考えている。まぁ、降伏なんてしたことないからわからないんだけどな。ナブラの「志願者のみ軍に入れろ」って話はそういうことなんじゃないかな。」


「今、降伏すれば貴方の部下も大勢助かりますよ。」


「この戦で死ぬか、今後の動乱で死ぬかの違いだよ。後者の場合、民も大勢死ぬ・・・」



 ナバホ要塞内では兵士達が小銃の点検をしていた。その銃は今までの物とは異なった技術が使用されており、弾は5㎜ライフル弾、装弾数が5発のボトルアクション式ライフル銃であった。

 第55部隊のような新兵には地球のスペンサー銃モドキの南鼠銃1型という旧式の銃が配備されている。南鼠銃1型は登場当初は画期的な連発銃であったが、スペンサー銃同様に不発が少なからず発生していた。その不具合を解消するために開発されたのが南鼠銃2型で、ウィンチェスターライフルモドキである。ちなみにポールの使用している狙撃銃は南鼠銃3型というもので、装弾数1発のスプリングフィールドライフルモドキであった。

 ナバホの兵士が持っているライフルは南鼠銃4型といわれる最新鋭ライフルであり、エクセル技長の最高傑作だ。第1軍団長からガトリングガンの製造に専念しろと言われた後も開発を続け、完成と同時に西部の各拠点へ完成品と設計図を配布し、第3軍団が力の限り量産していたのだった。ナバホでは第1軍団の生産数と合わせて相当数を確保していた。

 余談だが、南鼠銃は1型から4型まで部品に共通したものは無く、弾も専用のものを使用している。



 数日後、ナバホ大要塞に対して連合軍の総攻撃が実施された。自衛隊の155㎜榴弾が密林に降り注ぎ、上空からはF-2支援戦闘機の群れとP-3Cが通常爆弾を投下していった。そして、C-2輸送機が巨大な爆弾を投下する。巨大爆弾は落下傘で降下していき地面付近で巨大な爆発を起こす。爆風と衝撃波で密林の木々は倒れていき、上空からはその衝撃波を見ることができた。この兵器は昔、燃料気化爆弾としてマスコミに紹介されていたこともあるが、大規模爆風爆弾兵器という通常兵器である。

 連合軍は自衛隊の砲撃、空爆後に一列に並んで密林のローラー作戦を実施する。蛸壺や地下道を発見した蜀軍兵士は日本から供与されたナパーム手榴弾(見た目は火炎瓶)を投げ込み、内部を火の海にする。連合軍へ向けた攻撃は本島鼠人部隊や攻撃ヘリが察知し、掃討していった。また、後方からは陸上自衛隊の機甲部隊が道を作りながら進んでいく。その圧倒的な物量と戦闘力に誰もが勝利を確信していた。

 連合軍を止められるものは存在せず、部隊は密林奥地まで進行していたが、部隊が南海鼠人のキルゾーンに踏み込んだ瞬間、大規模攻撃が開始される。待ち伏せ用に隠されていたガトリングガンと兵士が一斉に攻撃を開始したのである。連合軍兵士がドミノ倒しのように倒されていくが、すぐに攻撃ヘリが上空に到着しガトリングガンを駆逐していき、南海鼠人兵の集団を掃射していく。しかし、これはトライデントの作戦の一つであった。囮を出すことで攻撃ヘリの弾を消費させるのが目的である。ヘリの残弾を減らした後、巧妙に隠された各洞窟入り口から、無数の南海鼠人兵が吐き出されていった。



南海大島西部、自衛隊拠点基地

 連合軍の中でも日本国と蜀の司令部が置かれているこの基地では、本戦争最後の作戦指揮が行われていた。


「敵の大規模反撃です! 前線が突破されました。」


「窮鼠猫を噛むか、前線の軍を下がらせろ、後方には日本軍の獣機部隊がいる。鼠共をそこへ誘導しろ。」


「攻撃ヘリは補給中! 」


「空自と海自の爆撃隊も現在補給作業中。」


「まさか、これほどの戦力を隠し持っていたとは・・・」


 自衛隊は敵がこれほどの反撃を行うとは予想できていなかった。想定外の敵戦力に対応は後手に回る。



西部密林地帯最前線

 連合軍と南海鼠人の部隊は激しい戦闘を繰り広げていた。


「構えー! ってー!」


 蜀軍銃兵隊がマスケット銃を斉射する。突撃してくる南海鼠人兵が被弾し、次々に倒れていくが、南海鼠人兵の勢いは止まらず、後方では洞窟から後続が湧き出てきていた。蜀軍銃兵隊はマスケット銃の給弾作業をしている間に距離を詰められ、陣地内で白兵戦が展開される。すぐ隣を担当している本島鼠人部隊は日本製兵器を使用して南海鼠人兵を食い止めていたが、限界があった。倒木などを利用して敵に銃撃していたが、敵も銃撃してきている。最初は障壁で防御できていたものの、隣の蜀軍部隊が全滅すると多方向から銃弾を浴びせられることになり、障壁が破られて被弾する者が続出、撤退を余儀なくされた。

 本島鼠人部隊は敵に後姿を見せて撤退せざるをえず、この戦闘で最大の戦死者を出すことになる。


 とどまるところを知らない南海鼠人兵の突撃は、ある地点で完全に停止する。そこでは陸上自衛隊の機甲部隊が防衛線を構築していたのだ。また、補給作業を終えた爆撃隊が後方を爆撃し、南海鼠人最後の突撃にトドメを刺した。

 最後の突撃が実施されて数時間後、ナバホ洞窟の入り口前に連合軍の大部隊が現れた時、洞窟内から白旗をもった兵士が現れ、戦争は終結する・・・



 後日、戦争犯罪人に対しての裁判が開かれることになる。トライデントは無謀な最後の突撃を命令し、多くの兵士を死に追いやったとして起訴される。

 実情は倭国外務局がトライデントを排除しようとしていたものであったが、日本国、倭国、蜀の国民からは極刑を求める意見が多く出されていたものの、数年に渡り東京で行われた裁判は意外な判決が言い渡される。

 トライデントは極刑どころか無罪であった。裁判の過程は公開されることは無かったが、日本国の高官は公の場であることをつぶやいていた。「東京裁判を再現してはならない」この意味を理解できる者は、倭国と蜀には誰もいなかった。

唐突に南海鼠人が使用している武器の説明を入れました。これで戦況が想像できるはず?

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― 新着の感想 ―
[一言] 裏話を本筋に入れた方が絶対面白くなるやん…
[気になる点] >後日、戦争犯罪人に対しての裁判が開かれることになる。 中略 「東京裁判を再現してはならない」この意味を理解できる者は倭国と蜀には誰もいなかった。 ???国家間同士の戦争じゃなくて…
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