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とある転移国家日本国の決断  作者:
新たな勢力の出現と瘴気内の動乱
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南海大島攻略作戦 準備

日本国、防衛省

 倭国への自衛隊派遣が決定されてから、防衛省では南海大島攻略の作戦が練られていた。現地の詳細が分からなかったため部隊派遣は遅れたが、倭国が予想以上に協力してくれたおかげで本島への部隊集結はスムーズに進み、飛行場の建設予定地も予め確保されていたため、用地借用交渉などを前に胃を痛めていた幹部達は呆気にとられていた。


「倭国と偵察機からの情報によると、敵航空戦力は無視できます。しかし、陸上兵力はかなりの規模です。」


 作戦会議で使用されている南海大島の地図には、把握している集落の位置や砦と要塞、各勢力範囲が記載されている。


「敵勢力は1から3軍団で構成されており、北部が第1軍団管轄で規模は10万以上、南部と南西部が第2軍団管轄で規模5万から7万、西部が第3軍団管轄で規模5万と推定されています。また、敵中枢のナガリ山には防衛戦力として1万が配備されているそうです。尚、この情報には予備戦力は含まれていません。」


「また、各軍団の情報ですが、主に倭国と戦闘しているのが第1軍団で、倭国本島へのテロや調査団の襲撃にもかかわっている敵の主戦力であります。第2軍団は海軍として機能しており、来年に予定されている本島への侵攻準備を進めていると推測されます。第3軍団は主に防衛や警備に従事しているそうですが、必要時には各集落から兵士を動員する作業をしています。また、少数部隊が柔軟な部隊運用で倭国軍を撃退するなどの戦果も挙げていることから、歴戦の兵士で構成されていると思われます。」


「敵の武装ですが、航空戦力は畳や絨毯などの空飛ぶシリーズを少数保有しているのみで無視できます。海上戦力は木造帆船に大砲を搭載したものが主戦力として使用されています。大砲の射程は年々延長されているようですが、現在は6500m程度とのことで、海戦では我々の敵にはなりません。陸上装備ですが、これを見てください。」


 倭国が入手した南海鼠人の装備の写真が表示される。


「これは、ずいぶんと古い銃だね。」


「はい、現地に派遣した隊員による報告だとスペンサー銃のカービンタイプに相当するそうです。蜀や倭国が配備している銃より高度な武器となります。また、大砲は1900年代初期の山砲に相当するものが確認されています。」


 周囲の雰囲気が一気に暗くなった。現地は密林、ゲリラ戦を行う敵、ベトナム戦争を彷彿とさせる状況に、作戦を立てる立場の人間を大いに苦しめる。


「上陸予定の南海大島西部には、上陸作戦に適した海岸線が広がっています。また、西部は平野が広がっており、ここに住む鼠人は農民が大半を占めています。戦闘時には動員されるそうですが、中央部ほど訓練されている形跡はありません。鼠人の中にも階級があり、西部は下層に位置しているそうで、中央部に農業生産量の大部分を供給し、敵の侵攻時には壁として使われているみたいです。ここを押さえれば食糧の大部分と兵士の供給をかなり遮断できます。」


 逆に言えば攻略に手こずった場合、時間をかければかける程、敵の戦力が増大することとなる。


「中央部の集落ですが、最大の兵士供給源となっています。各集落には軍事訓練の施設と兵器工場が確認されており、政府は中央部の集落を最初の攻撃で完膚なきまでに破壊しろと言っています。」


 場はさらに暗くなる。政府は細かな戦術などには口を出さないが、明確な目標は出してくる。政府に南海鼠人の情報を伝えたのは自分達だが、その最初の目標が集落への無差別攻撃というのは皮肉以外の何物でもなかった。


「いくらなんでも、女、子供もいるだろう・・・」


「中央部の集落に非戦闘員はほとんどいません。5、6歳の女、子供が軍事訓練を受け、戦闘員となっている地域です。」


 実際には南海鼠人は5、6歳で子供がつくれるので、当人達は成人した大人とみなされていた。政府には情報として「見た目は子供に見えるがこれで成人」と伝わっており、集落への攻撃判断材料となっているのだが、実際に戦わなくてはならない自衛隊員にとっては見た目がアウトだった。


「第7師団を蜀へ派遣している状態で、南海大島へも部隊を派遣できる余裕はあるのかね? 」


 幹部の一人が話題を変える。


「本国へ上陸してくる怪物には新規部隊と警察、海上保安庁、民間警備会社などが対応しているため、現有部隊を派遣可能です。周辺には怪物以外、日本国を脅かす存在はいませんので・・・」


 現在、怪物との戦闘は自衛隊の新設部隊と民間警備会社が主に対応していた。この民間警備会社は、国内最大手の警備会社が米国の退役軍人や警察OBを雇用して設立したもので、法改正によって強力な武装を許可されていた。この新しい形態の警備会社は今のところ「アスラ警備保障」1社のみだが、国内初の民間軍事会社と呼ばれている。


「作戦開始と同時に島中央部に存在する全ての拠点を爆撃し、できるかぎり破壊します。これにはP-3Cの爆撃機改装が済んだもの全てと、F-2を投入します。同時に西部への上陸作戦を実施、攻撃ヘリを全方面へ投入して敵勢力を排除しつつ護衛艦の艦砲射撃の支援のもとで部隊を上陸させます。この時に蜀の部隊も日本の船で輸送して上陸させる予定であり、蜀軍を載せた艦は海岸付近に停泊させ、上陸用舟艇で上陸させます。上陸した部隊は周辺を確保し、橋頭堡を構築。また、西部の集落にヘリボーンを実施して広大な範囲を一気に確保します。MV-22なら本島から往復できますし、ヘリ搭載護衛艦と揚陸艦も2隻ずつ投入できます。護衛艦に陸上部隊を載せ、哨戒ヘリで投入する方法もとられる予定です。」


「島北部には倭国の軍が展開しており、現在は援軍として陸自の部隊を少しずつ増強し攻撃に備えています。攻撃が始まれば倭国軍と共に南下し、中央部へ圧力をかけます。」


 大まかな作戦は既にできており、後は準備が整うのを待つだけであった。


「難民や捕虜の管理はどうなっている? 」


「自爆攻撃の可能性もあるので、武装解除や身体検査には細心の注意が必要になります。爆発物探知機や探知犬を使用しますが、時間がかなりかかります。収容施設に運んだら我々の管轄ではなくなるので何とも言えませんが、マイクロチップを埋め込んで行動を監視するそうです。」


 近年、マイクロチップによる監視は犯罪者に対して行われるようになっており、日本でも研究が行われ、今では国民保護に一役買っていた。日本は総力を挙げて南海大島への攻撃を準備している。省庁の垣根を越えて鼠人難民対策に取り組んでおり、専用チップの大量生産を行っていた。


 これほど大規模に動くことなど自衛隊始まって以来のことで、上層部は情報収集と状況の把握、他機関との連携に特段の注意を払うのだった。

チラシ作戦もしますよ。

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