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とある転移国家日本国の決断  作者:
新たな勢力の出現と瘴気内の動乱
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伏魔殿の主達

倭国首都「静京」、外務局内会議室

 この部屋では南海鼠人に対処する三ヶ国の外交、軍事に携わる要人が会議を行っていた。


「貴国には援軍を送っていただいたのはありがたいですが、何時になったら攻撃を始めるのでしょうか? 」


 倭国の軍幹部は何時までたっても南海大島へ軍を投入しない蜀と日本国の関係者を問いただす。


「わが軍としてはすぐにでも投入したいのだが、日本軍は短期での殲滅を計画しておられる。作戦の詳細説明を受けて検討した結果、とても理に適ったものであるため、我々は日本軍と行動を共にすることにした。攻撃開始時期は日本国が判断する。」


 のらりくらりと回答する蜀の将軍に、倭国の幹部職員達はイライラを募らせていく。侵略の危機に晒されている倭国は大きな危機感を持っていた。南海鼠人がその気になれば、南海大島へ派遣している軍は一週間と持たずに壊滅する新たな試算が出ていたのである。

 当初、蜀と日本国が援軍を出してくれると聞き、倭国関係者は大いに安堵した。しかし、援軍は本島に到着してから3ヶ月の間、訓練を行うだけでいまだに出撃していなかった。


「我々の今後の予定を説明します。」


 焦る倭国関係者に対して、自衛隊幹部が説明を始める。


「南海鼠人は島全体を要塞化しています。まともに戦った場合、こちらの被害が増えるだけです。進撃は強力な砲撃支援と航空支援のもとで行う形になります。」


「では、日本国は本島に建設中の飛行場が稼働するまで戦闘はしないと? 」


「はい、しかし我々としては、南海大島の倭国軍被害も見過ごせないと考えております。近日中に陸上部隊の一部が投入されるでしょう。また、本島への大規模侵攻には我々が対処しますので、ご安心を。」


 日本側は強気である。確かに日本国が保有する大型船の砲なら鼠人の軍艦など、ひとたまりもないだろう。不安はあるが倭国関係者は次の問題について発言する。


 この会議ではいくつもの課題や問題が議論され、作戦の役割分担や、細かいルールが決められていった。

1、南海鼠人への攻撃は三ヶ国共同で同日同時刻に行う。

2、三ヶ国の攻撃前に南海鼠人の大攻勢が始まった場合は、日本国が洋上にて鼠人艦隊を殲滅する。

3、作戦は南海鼠人の武装勢力完全排除をもって終了とする。

4、大量の鼠人難民の取り扱いについて。

 ・南海大島西部に難民収容施設を日本側が建設し収容、管理する。

 ・戦闘員の場合は日本国内と倭国内の離島に建設した収容施設に収容する。

5、後方支援関係等

etc

 作戦決行までの短い期間で、三ヶ国はできる限りの準備を行うのだった。



同時刻、静京の高級料亭「カワセミ」

 カワセミは和食に似た最高の料理と、独自のもてなしが最大の売りであり、客の要望とプライバシーに配慮が行き届いた倭国で最高級の料亭である。現在は貸切となっており、二人の客が会話をしつつ料理を楽しんでいた。


「これほど上手く事が運ぶとは思いませんでした。今の倭国は私の意見がとても通り易い。これも福島閣下が情報提供していただき、軍を早期に派遣してくれたおかげです。」


 コクコ外務局長は日本国外務省の重鎮、福島と会話していた。


「私が派遣したわけではありませんよ。ほうぼうに助言はしましたがね。本来ならば、我が国が自衛隊を外へ派遣するには労力と時間がかかる。まぁ、異常事態が十年以上も続いたおかげで動かしやすくなっていましたが・・・しかし、貴方も軍部と情報機関相手になかなかの手腕だ。あのデマをよく信じ込ませましたね。」


「ああ、鼠人の攻撃が始まれば一週間で全滅するとか言う情報ですか・・・私も軍部が鵜呑みにしてくれるとは思いませんでした。閣下が提供して下さった敵地の映像がとても衝撃的だったからですよ。大きな真実に小さな嘘を紛れ込ませれば、全てを真実と捉えるのは妖怪も人間も変わりません。おかげで、我々の思惑通りに事が進んでいます。日本国の準備が整うまでの5ヶ月間は南海大島の支配地域を維持するめどが立ちました。」


「それはありがたい、自衛隊は大規模な上陸作戦ができるような組織ではないですから助かります・・・ところで、事が終わった後の話はどこまで進みましたか? 」


「順調に進んでいます。元々あの島は独立させる予定でした。日本国は鼠人込みで7割、倭国が3割で話がつきそうです。福島閣下も我らの要望をお忘れなく・・・」


「コクコ局長、心配には及びません。我が国は国と国との戦争を放棄しています。倭国と日本国、双方で波風立てるような情報が出ることはありませんよ。」


「閣下にはとても良い返事を頂けました。我々は内心日本国を恐れていましたが、これで両国の未来は明るい。」


 コクコは福島の盃に酒を注ぎ、福島もコクコの盃に酒を注ぐ。


「この料亭の肉料理は絶品ですよ。閣下もお食べになられては? 」


「私には少々口に合わないようです。次回は倭国で養殖が盛んな、あの動物の料理を楽しみたいですね。」


 コクコは直ぐに次回の会合を予定に入れ、料理を楽しむのであった。


「やはり鼠人の肉は、いつ食べても飽きがきませんね。」


 この会談によって鼠人問題だけでなく、多くの国と人々の運命が変わっていく・・・

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