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とある転移国家日本国の決断  作者:
新たな勢力の出現と瘴気内の動乱
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観艦式

 パンガイア大陸は地球のユーラシア大陸とアフリカ大陸よりも大きな巨大大陸であり、形としてはユーラシア、ヨーロッパ、アフリカ大陸が一体となった形状をしている。パンガイア大陸の北西部はアーノルド国が、北部にはスーノルド国が存在しており、この二ヶ国でロシアと同程度の国土面積となる。


アーノルド国北西部、静海

 隕石の衝突によって形成されたと考えられている静海は、周囲を山に囲まれており面積は約40万㎢、外海へは幅15㎞のアーノルド海峡を通過する以外に船の出入りはできない。この一帯は南西からの暖かい風が吹き込んでおり、北部に位置しているにもかかわらず、温暖な気候となっている。地形の関係上、穏やかな海であり、命名の由来となっていた。


日本国転移1年前

 静海には多数の軍艦が集結していた。5年に一度、各国が軍艦を派遣し合同訓練を行うものである。ただ、軍人以外に各国の王族や有力政治家、軍事企業幹部が参加し、軍事演習というより外交や軍事交流の場となっている。


「キレナ国が古代兵器を出してきている。いつの間に運用できるようになったのだ? 」


ラッド王国のブラド王子が軍幹部に問いかける。


「5年前に極秘プロジェクトとして古代兵器の運用研究が始まったと聞きましたが、完成の情報は入手していませんでした。」


「我が国は隣国に後れをとったというのか? 」


軍幹部の話に王子は不安になる。


「ご安心を。我が国は古代兵器よりも現有兵器の発展に力を入れております。現在乗艦しているガイガー級戦艦は最新鋭の双胴戦艦です。射程と命中精度では劣りますが、防御力、攻撃力ともにキレナ国の古代兵器を凌駕しています。」


「だとよいのだが・・・」


 王子の不安は拭えない。

 この合同訓練には各国とも最新鋭艦を派遣してくる。他国へ自国の強力な兵器を見せることで国威発揚の場となり、先進国や軍事企業関係者の目にとまれば、共同研究や工場の進出など、国益に直結する行事であった。


 静海では航行演習を終えて大艦隊が停泊しているが、艦隊の中心には一際目立つ2隻の戦艦が存在していた。


ジアゾ合衆国、第一艦隊旗艦「C3」

 C3は最新鋭戦艦であり、全長250m、最大速力29ノット、40.6㎝45口径連装砲を前部に2基、後部に2基搭載。副砲は無く、代わりに多数の対空火器が設置されているのが特徴である。


 ジアゾ合衆国の有力議員であり、貴族のヒドラ家当主は一人息子と共に合同訓練に派遣されていた。


「では、行ってきます。」


 ヒドラ・マンノールはC3に残る軍人や使用人に挨拶を行い、父と共に艦載艇に乗り込む。

 親子が向かう先には古代兵器艦としては異質な存在感を放つ巨大な戦闘艦が、その雄姿を見せつけていた。



アーノルド国、古代兵器艦隊旗艦「ハデス」

 ハデスは古代兵器の中でも超兵器に分類されている。全長327m、最大速力48ノット、連装粒子砲前部2基、後部1基、単装粒子副砲6基、追尾光子弾ランチャー4基、近接防御兵器8基と、高機動、超火力を誇るだけでなく、レベル5防御スクリーンを搭載し、素の装甲も「大和」並という、正に超兵器である。この兵器は神竜との戦闘を考慮したものとなっており、神竜にダメージを与えられる主砲と、神竜のブレスを防ぎきれる防御スクリーンを展開可能であった。


 ハデス内の王族専用貴賓室には、スーノルド国の王子とアーノルド国の姫が晩餐会前の待機時間を過ごしていた。


「ヤンは本ばかり読んでないで、もっと外で運動した方がいいわよ。外に出ないと、将来引きこもりになっちゃうんだから。」


 アーノルド国の姫、ユリエ・ガルマンは色白の王子、ヤン・アレクサンドラに運動を促す。


「姫はいつも元気だね。僕にもその元気を分けてもらいたいよ。」


「ヤンは運動しないから体力が無いんでしょ。」


 二人は現在11歳、物心ついたときからの幼馴染である。活発な姫と読書好きの王子には人種の特性が現れている。アーノルド人もスーノルド人も同じノルド族だが、アーノルド人は体躯に恵まれ、スーノルド人は豊富な魔力を有しており、見た目は地球の北欧系に近い。


 今でこそ盟友となっている二国だが、その関係は争いの歴史であった。遥か昔、同じノルド族にも関わらず能力の違いから二つに分かれ、互いに争いが絶えなかったのだ。争いは周辺国を巻き込み、古代兵器を使用した大規模なものになっていき、最終的には大陸全土が戦火に包まれた。

 戦争は100年戦争と言われ、多くの国が亡び、大都市が廃墟となり、貴重な古代遺跡も多数破壊された。その惨状を前にして両ノルド国家は内部から崩壊、新たな王がそれぞれに誕生し、停戦が実現する。その後、多くの問題を解決しながら両国は和平条約を締結し、条約締結の際に自国の名から帝国を抜いたのだった。


 ヤンとユリエが会話しているところに重厚な足音が響いてくる。その足音はユリエの苦手としている人物であった。凄まじい重量の鎧、全身を覆う黒いコート、肌は口元しか見えず、人間とは思えない声、ユリエはどうしても克服できないでいた。


 スーノルド国、超兵器研究省、神機部隊兼ヤン専属護衛部隊所属のウェラーである。


「ジアゾ合衆国からマンノール様がお見えです。」


「マンノールが! ウェラーすぐに案内して。」


 ウェラーの報告にヤンは嬉しそうに答える。

 ヤンとユリエは5年前、ふとしたきっかけでマンノールと出会う。当時はとても友人という関係にはならなかったが、話を続け互いのことを少しずつ理解していく事で、いつの間にかこの関係ができあがっていた。


「二人とも久しぶり。」


 マンノールは部屋に入ってくるなり二人に話しかける。この年代の友人同士なら何もおかしなところは無い。しかし、マンノールの目の前にいる二人は世界1位と2位の国家の王族である。公の場だけでなく、使用人や護衛の前でも問題になりかねない行為だが、この場にはそういった目も耳もない。いるのはヤンが絶対の信頼を置いているウェラーのみだ。


「ヤン、5年前に借りた本、勉強になるし面白かったよ。これはヤンが見たがってた最新科学の本。」


「ありがとう、君の持ってくる本は脚色されていない科学の本だからありがたいよ。本国で出回っている科学の本はデタラメばかり書いてあるんだ。」


 マンノールとヤンはインドア派の活字中毒で、互いの国の本を送り合っていた。そして、今回も本の話で盛り上がっている。


「ちょっとマンノール、私へは何かないの~」


 二人が仲良く話しているのが気に入らないのか、ユリエが横槍をいれてくる。


「姫にはこれを・・・」


 マンノールは袋をユリエに渡し、ユリエは直ぐに中身を確認する。ガサツに包装紙から中身を取り出す様は姫君として形容し難い。これでも世界にはアーノルド国のユリエ姫は大人しく、おしとやかと認識されており、公の場でいかに猫をかぶっているかが分かる。


「服? にしては肌触りが変ね。」


「新しい繊維で織られた服だよ。伸縮性に優れていて、汗もすぐに乾くんだ。姫はよく運動しているから、その時に着てみて。」


「魔法を使わずにこれだけの物を作れるの? すごいじゃない。マンノールありがとう。」


「ただ、火に弱いから耐火の護符は定期的に新しいのにかえた方がいいよ。」


 ユリエは上機嫌になり、自らもマンノールに用意した物を取り出す。


「私もマンノールにプレゼントがあります。じゃーん。」


 ユリエがマンノールに渡したものは王家の紋章が入った護符だった。


「私特製の防護魔法が入っているわ。もしもの時は私に感謝しなさいよ。」


 それは最上級の護符だった。古代遺跡から極稀に発掘される希少な素材でできており、市場に回ることなく王族や研究施設で使用される一品である。もし値を付けるなら天文学的な数字となるだろう。


「こんな高価なもの、僕が貰っていいようなものじゃないよ・・・」


 いくら友人とはいえ、突拍子のない物を受け取りマンノールは委縮する。


「私が貴方に持っていて欲しいものだから渡しただけよ。貴方が気にすることじゃないわ。」


 ユリエは当たり前のことのように言う。この場合、返却などということは不可能であり、失礼にあたる。今後、マンノールは貰った護符を肌身離さず持ち歩くことになる。


 三人の会話は晩餐会が始まるギリギリまで続き、式典の後、三人は次回も会う約束を交わして、それぞれ帰国の途につくのであった。



5年後、静海

 今年も恒例の合同演習が始まる。しかし、その場にジアゾ合衆国は参加していない。この数年でパンガイアとジアゾ合衆国の関係が急速に悪化し、転移以来最悪の状態とまで言われるほどになっていた。その関係は修復されることなく、ある結果をまねくこととなる。

名前がややこしく、分かり辛いので補足。

ヤンが名、アレクサンドラが性

ユリエが名、ガルマンが性

ヒドラが性、マンノールが名です。

前に出てきた大母樹の防御スクリーンはレベル3です。

明るい話を書こうとしたけど嫌な予感しかしない話になってしまいました。

「観艦式その2」はどこかで唐突に投稿すると思います。

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