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とある転移国家日本国の決断  作者:
新たな勢力の出現と瘴気内の動乱
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鼠人王

南海大島の中央部

 島の中央部には標高2000mのナガリ山があり、その内部は空洞と洞窟がいくつも存在する天然の要害となっている。南海鼠人は数世紀にわたって山を要塞化し、内部に城を建築して鼠人国家の中枢として機能させていた。


 現在の国王は建国の父であるナブラが務めている。ナブラは現在56歳、南海鼠人としては信じられないほどの長寿であり、その経験が国王となった理由でもある。

 妖怪に対抗できる兵器を手にしたとしても鼠人の戦死率は高く、戦闘員の寿命は20代半ばであった。ナブラは妖怪との戦闘を生き抜き、その経験と知識を求めた多くの鼠人戦士がナブラの元へ集まり、絶大なカリスマを得るようになった。国王は選挙で決めようとナブラは考えていたが、圧倒的な支持を得ていたナブラは無投票で国王となっていた。以降、ナブラは鼠人王と呼ばれるようになる。

 最前線から身を引いたナブラは新たな目標「鼠人国家樹立」を目指して奔走することになる。国としての体裁を整え、妖怪と互角以上に戦える戦力を保有していれば、大陸国に認められるとの考えからである。瘴気が消えたら大陸へ渡り、正式に国家としての承認を受けられれば、倭国との戦を終わらせることも夢ではなかった。



ナガリ山内部、王城

 鼠人王の前には二人の兵士が跪いて報告を行っていた。


「我が国の宿敵、倭国に与する日本国を攻撃しました。」


「攻撃は大成功です。敵は全滅し、我が方の被害はありませんでした。」


 兵士達は王に吉報を伝える。


「して、虜囚はおらんのか? 」


「護衛の妖怪共々全て討ち取りました。」


「・・・ふむ、ご苦労。お前達には追って褒賞を与える。下がって良いぞ。」


 鼠人王は兵士達を労い、雑務を側近に任せ自室に戻っていく。


王城、王寝室

 寝室は王のプライベート空間である。山の空洞内に造られているため、王の寝室はそれほど広くないが、鼠人としては狭い方が性に合っているのでナブラは気に入っていた。


「何てことをしてくれたんだ! 」


 ナブラは辺りの物を壁に投げつける。


「蜀だけではなく、転移国家の日本国にまで喧嘩を売ってしまった。」


 ナブラは焦っていた。

 半年前、一部の兵士達が本島で蜀の外交団を狙ったテロを起こしていた。「妖怪に与する者は全て敵」との過激な思想を持つ彼らの行動は、南海鼠人から大きな支持を得ており、その支持の前にナブラは当事者を罰することができなかった。その後、蜀は倭国に全面協力する旨の声明を出し、共同で南海鼠人を駆除すると発表されてしまう。

 それから間もなく日本国が瘴気の中から現れ、迷うことも国家間の問題を起こすことも無く倭国と蜀に接触する。最初、ナブラはあまりにも早く二ヶ国と接触できた理由が分からなかったが、調査の結果、倭国外務局が瘴気の間を抜けて先に日本国へ接触していたことが判明する。ナブラは外交で倭国に敗北していた・・・

 それでもナブラは諦めず、日本国と接触できる機会をうかがっていた。日本の調査団を護衛する妖怪を排除し、王城へ招くことができれば起死回生もできると考えていたが、兵士達は護衛の妖怪だけではなく、調査団も全滅させてしまう。過激思想が蔓延する中、兵士は敵の排除を優先するようになっていたのだ。

 南海大島から妖怪を駆逐し、瘴気が晴れたら世界に鼠人国家を認めてもらう当初の予定は、妖怪の駆逐まで上手く行ったものの、外交上はリカバリーのできない致命的なミスを犯してしまっていた。


 南海鼠人は近年目ざましい躍進を遂げている。新兵器と人口増加によって妖怪の駆除が進み、倭国が軍を派遣しても撃退できる戦力を手に入れていた。その結果「外国に頼らずとも自分達だけでやっていける」との考えが広まっていく。

 その危険性を知る者はナブラ以外に極僅かしかいなかった。


 後日、日本国は南海鼠人による一連の攻撃を非難し、倭国に全面協力する旨の声明を出し、さらに瘴気内国家共同で南海鼠人に対処することを発表した。

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