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とある転移国家日本国の決断  作者:
栄光と破滅への道
158/191

リュクスの回想 その2

「リョナ」「人間牧場」と言う単語に理解がある人のみ読んでください。


それ以外の人は即ブラウザバック!



書いていてBANされそうな内容だったので書き直して極力オブラートにしました。

 人魔大戦。圧倒的な身体能力を有する魔族と古代兵器を本格的に実戦投入したノルド族の衝突は、どちらが勝利するか全く予想できず、西方の人間達は恐怖に怯えていた。人間は種の存亡を賭け、多くの国がノルド軍と共に東へ軍を進め、人類の総力を結集して魔族と戦った。

 と、言うのは歴史書の内容で、ノルドの上層部は魔族との戦争を行いつつ領土を南へ広げていた。アーノルド国の南、現在のキレナ国周辺は魔石と鉱物資源に恵まれていたため、帝国は魔族との戦いを口実に原住民達へ領土の割譲を迫っていた。


「今とは倫理観が異なるとは言え、当時のノルドは蛮族そのものだった。」


 弱小部族や小国は素直に言う事を聞いたのだが、遥か昔から住んでいる原住民エルフは断固として拒否し、抵抗を続けていた。腕っぷしだけは強い将軍が意気揚々と懲罰部隊を引き連れてエルフの討伐に向かったが、ことごとく返り討ちにあって討伐は失敗。現地では小規模な部族が結集して抵抗軍が組織される等、奴等を付け上がらせてしまった。


「エルフはエルフに任せる。」


 帝国は魔族との初戦に大勝利したことで、東へ過剰戦力を派遣したと判断し、魔族討伐の方針変換を行う。対魔族戦の準備をしていた俺に転戦命令が来たのは言うまでもない。


 砂漠で抵抗を行っている種族は多岐にわたるが、その中核は「赤エルフ」または「砂漠エルフ」と呼ばれるエルフ達であった。彼等は砂漠で生きる事に特化したエルフであり、朱い髪と瞳が特徴的な希少種である。

 砂漠を知り尽くしている彼等は地の利を活かし、得意の精霊魔法で帝国軍を返り討ちにしていた。


 アーノルド帝国拡大と共にエルフの集落を追い出す仕事を何度もこなして来た俺は、今回も同じようにトップと話し合いの場を設ける。とはいえ、行き当たりばったりだが・・・野良エルフを装ってテリトリーに侵入し、中枢近くまで来たらノルドの使者であることを告げ、強引に族長の元へ突き進む。エルフの族長は「使者との話し」なら大抵出てくる。族長が出てきたら要求を伝えて、拒否したら叩きのめす。

 帝国内では砂漠エルフを強敵と認識して大規模な討伐部隊を準備し始めたようだが、俺にとっては他のエルフとさほど変わらなかった。


「東へ200キロほど行ったところが、お前たちの新しい土地だ。」


 何時もどおり、俺は魔力切れを起こして息も絶え絶えな砂漠エルフの精鋭兵と族長に皇帝陛下の慈悲を伝え、族長は了承する。


「土地を離れられず、残る者もいる。どうか、ご慈悲を・・・」


「残る者は全て帝国の所有物となる。強制してでも出来る限り連れて行け。」


 土地に残る者は奴隷として扱われるか、不法占拠者として排除されるしかない。俺が出来る事はこれが限界だ・・・あの男と会うまではそう思っていた。



砂漠エルフ排除の半年後

 皇帝陛下から特命を与えられる日。待ち合わせ場所で俺を待っていたのは、貴族であるガルマン家当主だった。


「何故貴族がいる? 陛下の使者は何処だ。」


 待ち合わせ場所に罠が無い事を確認した俺は、最大の警戒心と殺気を込めて貴族に問う。


「戦奴リュクスか? 私はエグデール。ガルマン家当主だ。皇帝陛下から、お前に命を与えるため、この地へ参じた。」


 貴族は温和な表情を浮かべながら独特の口調でリュクスへ話す。

 皇帝陛下の特命とは言え、いけ好かない貴族から伝えられることに嫌悪を抱くリュクスは、エグデールに少し近づいて強烈な違和感に襲われる。


「 !? 」


 見た目は他の貴族と変わらない悪趣味な服装をしていた。だが、近づくにつれ、その素材が何でできているか分かってしまった。


「あまり大きな声では話せぬ。近う寄るのだ。」


 エグデールに近づくように言われるが、リュクスは近づく気になれない。近づけないと言った方が正しいだろう。エグデールの服は魔族の革で作られており、身につける装飾品は獣人の牙、魔獣の眼球、エルフの耳・・・それは、悪趣味といった言葉では表現できない服装であった。そして、エグデールがリュクスに近づくように言った理由は、皇帝陛下からの命を伝える以外にもあることを察してしまう。

 通称人体コレクター

 奴隷で財を成した貴族は多い。その中で最も危険な貴族としてガルマン家の噂を聞いたことはあったが、実際に会ってみると噂どころじゃなかった。


「貴族は嫌いなんでね。そこから話してくれ。」


「戦奴よ、身分をわきまえるのだ。」


 エグデールはリュクスに注意を促してから本題を伝える。


「食人族? 魔族でもないのに人間を食う奴には何度か会ったことはある。だが、ただの人間だろう? 魔族との戦をしているって時に、俺を使うか? 本当に陛下の命なのか。」


 皇帝陛下からの特命は食人族の討伐であり、リュクスは役不足であることを伝える。


「相手はエルフの食人族だ。辺境に潜んで居ったため、最近になって判明した。こ奴等は人間を家畜としている。」


 エグデールは集落の魔写をリュクスへ投げる。


「っ、冗談だろ・・・」


 魔写には何の変哲もないエルフ集落が写っていたが、その家畜小屋には人間が繋がれており、屠殺場では幾つもの動物のパーツが干されていた。皮なめし場の魔写では、その皮が明らかに人間のものと分かるため、リュクスは小声でつぶやいてしまう。


「人間を家畜として扱う種族は、魔族のみでなくてはならないのだ。戦奴リュクスよ、こ奴等が故郷と呼ぶもの全てを滅ぼせ。それが、陛下からの命だ。」


 皇帝陛下の命を受けたリュクスは即答し、直ぐ任務へ取り掛かるため外へ出ようとするが・・・


「待つのだ。これは個人的なものだが、追加報酬の件で話がある。集落付近に我が私兵を待機させている。食人エルフの若い番、子供、家畜を生きたまま渡せば褒美を出そう。」


 嫌な予感はしていたが、案の定、反吐が出る提案が出される。仲間のために金と権力が必要とは言え、俺はそこまで人間として堕ちちゃいない。


「追加報酬は準備しなくていい。」


 俺は一言残して奴の前から消える。

 原住民の排除は今まで話し合いで解決して来たが、食人エルフへは民族浄化以外の選択肢は無かった。俺がやらなくても帝国が代わりにしていただろうし、エグデールのような奴が一枚かんでいた場合、相手は死すら生ぬるい地獄を味わうことになるのは明白。「土に還す」などという悠長なことはできず、「跡形も残さずに焼き尽くす」ことが俺にできるせめてもの情けだった。


 結果は申し分なく、長期間集落を離れている者以外、全てを灰にした。攻撃の途中からガルマンの私兵が漁りに来たが、奴らにくれてやる物はひとつ残らず消すことが出来た。

 この事が原因で今でもユグドラシル人から避けられるようになったが、俺の行動のどこに間違いがある?


 任務を終えたリュクスは報酬の受け渡し場所まで来たが、そこに待っていた者はエグデールであった。


「良い仕事をしたな。陛下は随分と喜ばれておったぞ。」


「そうかい。で、報酬は何処だ。」


 エグデールが手ぶらなのを見てリュクスは最大の警戒を行っていた。そして、エグデールの後ろの壁には人の気配がある事で臨戦態勢をとる。


「お前も知って居よう。帝国は魔族との戦で資金難故、報酬は現物支給だ。」


 エグデールの合図でリュクスの周囲に潜んでいたガルマン家の私兵が現れ、エグデールの後ろからは目隠しをされ、鎖で繋がれたエルフの女性が兵に引かれてくる。


「現物って、まさか。」


「希少種である赤エルフの女。お前の稼ぎでは一部を買うことすら叶わない破格の報酬である。故に、眼球2つは私の所有物として差し引いておいた。」


 物事は何をしてもしなくても結果が付いてくる。「現在の状況を把握する事で未来を予想することも可能」転移前の大学でそんな講義を受けたことはあるが、今の俺が置かれている状況が「その結果」というのだろうか? 今まで帝国のために原住民を追い出し、モンスターや精霊を討伐し、数々の戦争で功績をあげた結果が、これなのか・・・


「陛下直筆の証明書だ。これで女はお前の所有物となった。」


 エグデールはうなだれるリュクスに書類を渡し、次にエルフの女性へ話しかける。


「これより、お前の新しい所有者は戦奴リュスクとなった。荷物を置き、去るが良い。」


「イヤッ! ハイラと離れるなら私は死にます! 」


 エルフの女性は保存液に満たされた瓶を抱えてうずくまってしまう。


「物が出過ぎたことを言ってはいけないよ。赤エルフの頭部は体よりも価値があるのだ。」


「イヤーッ! 」


 屈強な私兵が女性の腕から何とか瓶を奪おうとするが、激しい抵抗にあってしまう。私兵は力で奪い取ることも出来なくはないが、今や女性はリュクスの資産であるため傷つけるわけにはいかない。


「仕方ない。」


「待て・・・」


 エグデールが薬物で大人しくさせようとしたところでリュスクは決断する。


「娘の眼球2つと抱えている頭、俺が買おう。」


「戦奴が買える額ではないぞ。」


「俺の体を担保にする。俺がハイエルフだというくらい、貴様は知っているだろう。俺が死んだら好きに使え。」


「ふむ、死ねば所有権が陛下からガルマン家となる訳か・・・面白い。」


 どこまで予想していた事なのだろうか。エグデールは少し考えた後、リュクスとの交渉に入る。


「交渉成立だ。利息の入金は忘れないように・・・」


 交渉は熾烈なものだったが、俺は何とか五体満足で乗り切ることが出来た。後に残ったのは、視力を失った原住民の女と恋人の頭部、ガルマン家への巨額の借金だけだった。この後の行動なんて考えてもいないし考えたくもなかったが、やらなければならない事くらいは分かる。


「さて、城でも買うか。」



 長閑な田舎町リトルビュー。現在、その成り立ちを知る者は2人だけである。

リュクスの民族浄化を逃れた人物がジアゾ合衆国にいたりします。そこも書いていたのですが、BANされそうな内容なので消しました。後でコッソリ追加します。


次回から日本が舞台です。アカギ討伐はその後ですよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一言に『エルフ』と言っても、この世界の場合、様々な種類がおるんやなぁ…ハイエルフと町エルフとダークエルフが一般的やけど、他にもそういうエルフがおるんか…
2022/10/12 07:38 退会済み
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