表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある転移国家日本国の決断  作者:
大陸間戦争勃発
149/191

整う大舞台

 パンガイア大陸極東には、世界に名だたる2つの大都市が存在する。瘴気内国家と交易する事で発展し、都市そのものが国家であるサマサ。そして、世界屈指の大企業が本社を置くロマである。



ロマ国、首都「ロマ」


 約300年前、転移して来たジアゾ国との戦争に敗北し、王制の廃止、植民地の全没収を条件にアーノルド国とスーノルド国の保護国となり果てたロマだったが、ロマ人特有の文化によって、驚異の速度でジアゾ国への賠償を済ませ、復興を遂げていた。その復興速度はとどまるところを知らず、両ノルド国の保護国扱いを最大限利用し、本来必要となる軍事費を全て自国の発展に注ぎ込むことで脅威の経済発展を遂げたのであった。



首都、連合議会場


 日本の国会議事堂にあたる連合議会場では、差し迫るジアゾ合衆国との戦争に向け、議員達が熱い論戦を行っていた。日本では国会議員は選挙で選ばれることになっているが、ロマの国会議員は大企業の決まったポストの重役が議員となる。


「労働者の間では、ロマ全体がジアゾの標的になっていると不安の声が出ている。」


「ジアゾの攻撃など、ここまで届くわけが無かろう。」


「そんな事を言っているのではない! 労働者の不安は数値として現れているのだ。不安を和らげる政策を行う事こそ・・・」


 開戦が間近に迫っているため、ロマ全土でピリピリとした雰囲気が漂っており、議員達は国民の不安を払拭する政策を話し合っていた。

 大会議場で議論が盛り上がる頃、連合議会場の地下、各企業の私兵が厳重に警備する通路の先にある小さな一室で、静かに国家方針が決められていた。この部屋に入れる者はロマに本社を置く世界的大企業の最高経営責任者のみであり、現在は以下の企業が意志を決定している。


エネルギーと魔導機関の長「オムニパワー」

世界屈指の飛行艦メーカー「スパバレー」

遺跡技術を使用しない演算装置を開発し、世界を席巻する「ハル」

建設重機メーカー「マジカダイン」

医療と農産物の品種改良で世界最先端を行く「パラソル」


 国政は基本的に連合議会で決められるため、名だたる巨大企業の責任者達が一堂に会することは稀である。


「シルト様の入国予定日が通知された。」


 司会役のハル社CEOは、アーノルド側から伝えられた情報を参加者に伝える。


「ようやく来ましたか、入国ルートは当初案のままですかな? 」


「一部変更があり、王国ホテルで一泊後、セントラルドームで演説を行う。」


 今回の会合の目的は、パンガイア連合軍の総司令官シルト・ガルマンを迎えるにあたり、各社に割り振られた担当の最終確認である。


「神機整備施設の視察が1日ズレたか・・・」


「シルト様は総司令部の確認を優先するようですね。」


 シルトの行動予定は極秘であり、ロマではこの部屋にいる者しか知らされることは無い。これは最近活発化している暗殺教団を警戒しての対応である。


「要人の行動はおおむね予定通りと思います。次はジアゾ戦での我が国の立ち位置ですが・・・」


「中立の立場に変わりはない。」


「何か問題が? 」


「兵は一兵たりとも送らないと両陣営に伝えているが、無理があったかな。」


「それとも、ジアゾへ送った人機にクレームでも来ましたか? 」


 司会の発言に様々な反応をとる参加者の面々だが、ハル社は大きな懸念があり、この場で意思を決定しておきたい事があった。


「ジアゾ戦は1、2年で終らない。4、5年はかかると試算されている。瘴気が晴れればサマサに展開している本隊が動く事になっているが、ノルドは二正面作戦を行う可能性が高い。最悪の予測が実現した場合、ロマが再び焼かれかねない! 各自が入手した情報を全て出していただきたい。」


「確かに、我社の最新予想でも同じような結果が出ています。」


「スーノルドから仕入れた情報によると、瘴気内に超兵器を全てつぎ込むことで二正面作戦が許可されたそうだ。確かにスーノルドのやり方にしては強引だな。」


「ジアゾ支社からの報告によると、合衆国は密かに瘴気内と連絡を取り合っているようです。おっと、この情報はここだけの話ですからね。」


 各社はそれぞれ入手、あるいは予測した精度の高い情報を出すが、マジカダイン社の入手した情報に一同は大きく反応する。同社は制裁前に合衆国から大規模な兵器発注を受け、人機を200機納入していた。アフターサポートもしっかりしており、現地企業と言う名の実質的な支社を現在も合衆国内に有している。


「瘴気内と連絡? 一体どうやって? 」


「あなた方にしては、信憑性の薄い情報ですね。」


 瘴気内と通信するには地上とそらの遺跡を連携させる必要がある。古代遺跡がない合衆国と瘴気内では、瘴気をまたいだ通信などできるはずもなかった。

 各社の反応が予想通りと見たマジカダインのCEOは、1枚の写真を無言で卓上に置く。


「これは・・・」


「アンテナですね。これ、魔導通信にも使えますよ。」


 巨大なお椀状の物体を空に向けて備え付けている奇妙な施設を、多くの参加者が見当もつかなかったが、技術職出身のCEOは通信局の可能性を指摘する。


「瘴気はあらゆる通信を阻害するため、瘴気内と通信するためには宙の遺跡を経由する必要があります。」


「しかし、この施設が通信で経由するのは遺跡ではない、と・・・」


 話そうとしている事を言われたマジカダインのCEOは、自信を持った表情で頷く。


「何かの間違いだ、人類の技術力では重力の壁を越えられない。それに、瘴気内にも同じ施設が必要になる。」


「死者の国」


 ここで、今まで口数の少なかったパラソル社のCEOが口を開く。同社は女神研究に力を入れており、女神研究所とスーノルド帝国大学とも共同研究していた。


「最後の神託の記録が女神研究所にあります。神託研究では魔法の無い世界、つまり、科学しか存在しない世界から国が転移してくると結論がでていました。その世界は魔法が存在せず、あらゆる物質、生物が魔力を有していないため、別名「死の世界」と名付けられています。」


「魔法が無い? そんな世界が・・・っ!! まさか、ジアゾは同じ科学文明の転移国家と接触したのか。」


「ふむ、戦争の大前提が崩れましたね。」


 マジカダイン社以外のCEOは今後の動きに頭をフル回転させる。進むべき方向を一歩でも間違えれば滅びが待ち受けているが、今回もたらされた情報は大きな道標となる。


「皆さん、この情報は・・・」


「勿論、この部屋から出る事は無い。」


 この会合は各社が入手した情報は入ってくるが、部屋から新しい情報が出てくることは無い。参加者は会合が終われば、それぞれの会社へ戻って指示を出すだけである。

 世界に名だたる企業のCEO達は、入手した情報をパンガイア側に伝えることなく、自らの利益のために使用することを決定する。



蜀、西方地域


 日本が転移してくる前までは西方世界と言われ、人間の生活圏ではなかった西方地域だが、森の精霊を滅ぼしてからは人間が押し寄せ、各種鉱山、大規模農地が開かれることで、大小様々な町が作られていた。


 人々が西方で町づくりをしている一方、西方地域の最西端。ここには大した資源も無く、人が住むには向かないため、蜀空軍の射爆撃場として使用されている地区がある。訓練は連日のように行われ、無誘導爆弾、JDAM、機銃掃射の他、F-2Cならではのクラスター爆弾と空対地ミサイルの実射も行われている。

 そんな訓練地区のある日、雲一つない青空に鷹の目を模したエンブレムの描かれた航空機が大きく旋回していた。


「目標に到着、これより監視に入る。」


 空軍で運用が開始されたばかりの早期警戒機E-2Cの任務は、日本が試射を行おうとしている古代兵器の監視である。日本側からの情報によると、今回予定している試射は広範囲に被害をもたらす可能性があることから、蜀でも無人の西端地域が選定されていた。


「当該空域には日本国の偵察機がいるのみです。」


「古代兵器のことだ、レーダーに映らない機体かもしれん。」


 E-2Cに搭乗している白狼族の兵士達は、何が起きても対応できるよう警戒を強める。蜀軍には日本国が使用する古代兵器の詳細は伝えられておらず、軍部は日本軍の秘匿兵器を見るチャンスを活かすべく、偵察機を派遣していた。


「時間です。」


「レーダーに異常なし。」


「9時上方に光! あれはっ・・・」


 レーダー手達が機器の変化に神経を尖らせている中、それを一早く確認したのはパイロットの2人であった。視界に映った光の方向にパイロットが顔を向けた時、機体が飛行する高度の遥か上空から一筋の光の柱が現れる。時間にして2秒ほど光柱は立ち続け、一瞬にして消えてしまう。


「機器に反応なし! 索敵範囲外からの攻撃です。」


「馬鹿な、攻撃は宇宙からだと・・・」


「日本側から試射終了の通信が入りました。」


 後ろの兵士が古代兵器の攻撃を本部へ報告している時、パイロットは着弾地点の確認を行うべく機体の高度を落としていく。目視で確認できるまで近づくと、その場には底の見えない大きな穴が出来ていた。



日本国、防衛省


 この日、JAXAと共同で古代兵器を管理している部署では、初の本格的な照射試験の評価を行っていた。


「出力設定どおりの威力です。」


「フェンリルに損傷無し。」


「エネルギーの充填が開始されました。次射まで3週間ほどかかります。」


 事前に入手していた情報どおりの性能を発揮した古代兵器に、職員達は胸をなでおろす。フェンリルは月の遺跡を止めてからシステムを掌握し、本格運用を目指して研究が進められていたが、迫る戦争に間に合わせるよう試射が強行される。兵器の自己分析機能は「問題なし」と表示されていたものの、千年以上前から存在している物の信頼性など皆無に等しいため、担当する職員達は攻撃目標がズレる、破損して地上に落下する危険を感じながらの試射だった。


「総理に報告を、超兵器への対抗手段を手に入れた。」


 舞台の準備は全て整った・・・



フェンリル攻撃システム


 本体は魔力を主なエネルギー源とし、ジェネレーター、バッテリー、高出力の複合魔砲区画から構成される巨大な衛星砲台である。他に観測、通信用衛星5機とリンクさせる巨大な攻撃システムだが、日本国が掌握できたのは奇跡的に無傷で残っていた「フェンリル4」のみであり、他のフェンリルシステムは全て失われた事が判明している。

 本システムは、古代文明が強大な原生生物用に構築したものであり、この星に生息する全ての生物は神竜以外駆逐することが出来る。

企業のCEOには名前があったのですが、そのまま出すとマズイと判断して出しませんでした。

ロマ国には世界的な優良企業が沢山あるので、労働者達はいつも笑顔です。


物語開始時とはかなり変わったので、新章に入る前に、国と組織、登場人物の紹介をはさもうと思います

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます。 面白かったです。古代兵器って米軍が開発しているという神の杖みたいだなと思いました。連射できないので使いどころが難しそうですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ