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とある転移国家日本国の決断  作者:
大陸間戦争勃発
143/191

空戦の講義

 急速に近代化が進む蜀は、東部に5箇所、西部に3箇所の大規模空軍基地が建設中であり、既に東部の基地2箇所は運用が始まっている。そのうちの1つ、北部軍区総司令部では神竜教僧兵団と聖域から派遣された専門家による空戦の講義が行われていた。


「鳥型戦闘機は開発された時期によって大きく4世代に分けられています。我々が対峙するのは第3世代以降の鳥機と予想されるため「パイロットスキル」を把握することが必須となるでしょう。」


 薄暗い講堂で爬虫類族の講師達が魔導プロジェクターを操作しながら、鳥型戦闘機と鳥機パイロットの戦闘方法を説明していく。

 飛行艦とは次元の異なる機動性を誇り、超音速飛行可能な第1世代、追尾光子弾を運用できるようになった第2世代、高度な魔導機関を搭載し、パイロットの魔法とスキルを支援することができる第3世代・・・構造が単純な人機と違い、鳥機には高度な魔導技術が使われており、兵器性能を最大限発揮するにはパイロットの操縦技術だけでなく、魔導士としての格がダイレクトに関わる。


「オーソドックスなものとして、クイックとスロウがあげられます。使用者は時間の流れが遅く感じられるものですが、これは時間操作魔法等ではなく、別名「超集中」と呼ばれるスキルの一種です。」


「他に命中精度を高めるベストポジション、対象のウィークポイントへ攻撃するクリティカルといったスキルが存在していますが、それぞれに相性があり、連続で発動させ易い組み合わせを予め構築することが重要です。」


 パイロットスキルは大きくパワー系、スピード系、分析系、空間系、特殊系に分けられ、相性によって連続して発動させ易くも難くもなり、個々のパイロットが持つスキルを把握し、発展させることによって配属部隊、搭乗機体が決められている。


「スキルはあくまでも個々に作用するものであり、魔法ではありません。この場にいる者は既にスキルを活用しているので割愛し、注意するべき魔法に移ります。」

「スキル? 意味わかんねぇ。」


 一番後ろで講義を聞いていた安室隼人は、理解できない内容に独り言が出てしまうが、昔のプロ野球選手が「ボールが止まって見える」と言っていたことを思い出し、無理やり独自解釈する。

 晴嵐エアドックは蜀でも機体の飛行試験を行うべく、開発中の機体と整備機材一式を持ち込んで現地に活動拠点を設けようとしていた。事前に国のお墨付きを得ていたため、現地の航空自衛隊拠点を一部間借りできるなど順調な滑り出し、に見えたのだが・・・


「おっと、いけない、いけない。」


 口は禍の元と言うが、隼人は蜀に到着して早々に国際問題となりかねない失敗をしていた。

「うわっ! でっかい犬。」

 隼人は初めて遭遇した白狼族達を前に、素直な感想が口から出てしまう。小声とは言え、耳の良い白狼族には聞こえていたようで、恐ろしいまでの殺気を向けながら近づいてくる彼等を前に、他の日本人より魔力を感じ取りやすい隼人は死を覚悟する。「俺、死んだ。」


「お前は日本の魔導士か、ここへは何用で来たのだ。」


「きょ、教団主催の研修に参加するために来ました。あと、開発中の機体を試験するためです。」


 群れの中心から現れた人物の問いに、隼人は間髪入れずに答える。話しかけて来た人物はそれ程でないが、その取り巻きは殺意の塊であり、嘘やはぐらかすと言った小細工は一切通用せず、回答が少しでも遅れればただでは済まないと感じていたからである。


「む? あの見慣れぬ機体のパイロットか! 名はなんというのだ? 」


「安室隼人と申します。」


 隼人の目の前まで迫った白狼族は品定めをするかの如く観察する。


「俺の名は白刃だ、空で会おう。」


 一方的な自己紹介を行った白狼族は、取り巻きを連れて隼人の前から去っていった。




「第3世代機は魔法を増幅させる機能がありますが、目に見えて戦闘能力が向上するわけではありません。精鋭パイロット達が回復魔法によって集中力と戦闘可能時間を持続させる程度です。」


「各種対空ミサイルは射程と精度で追尾光子弾を上回りますが、搭載数が鳥機の三分の一程度しかないため、注意が必要です。」


 講義は魔法パイロットに移り、講師達は魔法が使えなくても戦い方次第で十分戦える相手だと説明を行う。ただ一つを除いて・・・


「実戦では戦闘能力が非常に高い鳥機に遭遇する可能性がありますが、その場合は絶対に格闘戦を行わないこと、射程の長いミサイルを打ち切ったら離脱することを・・・」


「俺達に尻尾を撒いて逃げろというのか。」


 講師達があまりにも弱腰な発言をするため、白刃は抗議の声をあげて立ち上がる。白狼族は日本によってもたらされた地球の思想と兵器も柔軟に取り込むなど、戦闘のプロとしての自信を持っていた。白狼族は絶対的な強さは持っていないにしても「倒せない敵はいない」との考え方を持っており、最初から戦闘を避ける納得のいく理由が聞きたかった。


「その通り、まともに相手にしないのが最良の判断です。」


「彼等の正体は各国に数人の規模で存在する長寿種パイロットです。」


 長寿種パイロットは最低でも50年以上の飛行経験が絶対条件であり、その飛行経験によって神業ともいえる飛行技術を有しているため、数年の訓練では太刀打ちできず、更に強力な魔法によってあり得ない戦闘方法をとる。そのため、長寿種パイロットと戦う場合は最低でも3機で当たらなければならないことを講師達は説明する。

 鳥型戦闘機は元々古代文明が開発した兵器であり、圧倒的な魔力を保有する彼等に合わせた兵器となっている。空戦では操縦技術の他、魔法戦の要素も取り入れられ、追尾光子弾の思念誘導、防御スクリーンや時間遅延魔法による攻撃回避、魔法による機体修復等、地球とは異なる思想が取り入れられていた。


「格闘戦は不利になるため、避けることをお勧めします。」


 講師は質問者が白刃だと分かり、丁寧な説明で無理な戦いをしないように釘をさし、対する白刃も自身の未熟さを自覚しているため、納得して席に座る。

 この世界の住人はエルフであっても古代人より魔力を保有していないため、長寿種パイロットといえど鳥機本来の性能を出し切れていないのだが、例外もいる。


「特に注意が必要なのはスペルアンカーと呼ばれる部隊です。作戦区域にスペルアンカーが確認された場合、作戦の大幅な見直しが必要となるでしょう。」


 スペルアンカー戦闘航空隊はアーノルド空軍最強の部隊であり、個々が高い操縦技術を持ち、世界屈指の大魔導士でもある。その能力は超人的であり、数々の伝説を歴史に刻んで来た。


「瘴気内でスペルアンカーに太刀打ちできるのは、日本国の無人戦闘機くらいです。」


 無人戦闘機でようやく同じ土俵に立てる。講師の説明は参加者達に衝撃を与えるには十分だった。

 攻撃が当たらない、後ろを取れない、攻撃を避けられない、長年戦ってきた神竜教団だからこそ、その恐ろしさを伝えることが出来るのだ・・・



 講義終了後、白刃は晴嵐エアドックの駐機場に足を運んでいた。

 そこには赤と白でマーキングされた1機の見慣れない機体があり、隼人達数名の社員が機体各所を点検している。


「戦までに完成するといいな。」


「日本軍は転移前に開発を中止したと聞きます。相応の理由があるのでしょう。」


 新型機を眺める白刃に、お目付け役は入手した情報を伝えるが、どうも嫌な予感しかしない。


「ジィよ、俺の目と鼻は節穴じゃない、武器を見れば強さが分かる。あれは相当強い。」


 雰囲気を察して、お目付け役は頭が痛くなる。


 「こんな所で良い玩具が見つかった・・・」戦争が迫ることで高揚感を抑えきれなくなっていた白刃は、狩りの練習相手に相応しい存在を見つけるのだった。

今回はスキルについて触れてみました。

結構な頻度で作中の登場人物達はスキルを使っていたりします。

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― 新着の感想 ―
[一言] >ゲームでミサイルを撃った後に生えてくるのが見えたので 昔、その辺の窒素を固めて起爆性の槍にして飛ばす装備を積んだA-10とかいう奇怪な発想したラノベ作家を思い出した。(撃った後は窒素に還る…
[一言] 今回も面白かったです。 戦争でどんな空戦になるのか楽しみに待ってます。
[気になる点] F15GJ・・・武士(type郎党) F35A/B・・武士(type棟梁) [一言] F2スーパー改の3倍のペイロードって((((;゜Д゜)))))…それなんて爆撃機ですか? そんな…
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