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とある転移国家日本国の決断  作者:
大陸間戦争勃発
134/191

日本国憲法と自衛隊

総理の雑談回です

 自衛隊・・・ひとえに自衛隊と言っても陸海空に分かれ、担当地域、命令系統も分かれている。国防の要である自衛隊は転移後の新状況に何とか対応していたのだが、終わりのない魔物達との戦い、蜀、南海大島で発生した予定外の戦闘によって各地の自衛隊は破綻の危機にあった。

 転移直後、全国各地で魔物との戦闘が発生し、混乱を極めていた政府は駆除と防衛を効果的に行うため、自衛隊に防衛出動を出そうとしていた。しかし、防衛出動は国に対して行われるものであり、相手の情報が不明な状態では国会の承認以前の問題であった。しかし、様々な制限がある中で自衛隊の活動は効果的とは言えず、魔物の大侵攻も衰えを見せないことから、時の総理は「国会の承認を待っていては手遅れになる」と判断し「原則」国会の承認が必要な防衛出動を、承認前に自身の権限で自衛隊に命じた。これが転移1ヶ月後の出来事である。

 防衛出動によって武器使用制限がなくなった自衛隊は組織力を活かして反撃に出たのだが、転移初期に魔物の大侵攻を許した北部方面隊の疲弊は深刻で、予備自衛官の投入と他地区からの増援が到着したものの、平時から人手不足だった自衛隊は苦戦し、北海道の4割を魔物に制圧されてしまっていた。

 国からは「守り抜け」と命令されたため、防衛省は今までの動産不動産の被害を考慮した防衛方法から、重火器とオスロ条約で禁止された兵器を投入しての焦土戦に変更することで防衛に成功する。


 翌年、侵攻規模は縮小したものの、依然として魔物の侵攻は無くならず、防衛出動は政権交代後も引き継がれていた。防衛出動による自衛隊の武器使用制限解除は思いもよらない所でも効果を発揮し続け、蜀の精霊駆除、南海大島への爆撃などでも適用される事となる。超法規的処置によって出されてしまった防衛出動は「怪生物の侵攻が完全に終息」という曖昧な目標以外、解除方法、解除時期が定められておらず、自衛隊史上最も武器使用制限のない時期に入ってしまう・・・


 転移から5年、国が行った大規模増強によって自衛隊は全国の部隊に人員が供給され、懸念されていた北海道防衛も北部方面隊が大幅に強化されることで余裕が生まれる。防衛省は次の段階に進む準備が整ったと判断し、陸海空に続く第4の組織を創設するのであった。

 新たな組織は海兵隊に準じたものとなっており、大幅に増強された各自衛隊から部隊を選抜することで、運用開始後即実戦に投入された。



総理大臣官邸


 言わずと知れた総理大臣官邸は、内閣総理大臣や内閣官房長官が執務を行う場所だが、最近は瘴気内国家の有力者やジアゾ合衆国外交団との会談が開かれる等、大いに活用されている。そんな総理大臣官邸だが、今日は総理と前総理の密会に使われていた。


「まだ気にしているのか? 改憲と言っても平和憲法は維持されるし、欠陥も修正される良い機会だろう。」


 改憲派の前総理は、ごく短期間で作られ、不完全なまま出されてしまった日本国憲法を、日本人自ら完全なものへ改憲できる良い機会だと考えている。一方、総理は・・・


「今まで日本の戦争を抑止してきたのは憲法があったからです。それを変えるなど、容易にできることではありません。」


 護憲派の総理は現憲法を維持しつつ、パンガイアとの戦いは現行法の改正で対処しようとしていた。

 2人の総理は転移前から右翼と左翼に分かれて政争を続けており、憲法改正も盛んに議論を行っていたのだが、如何せん国民の関心が低く、改正のための国民投票まで待ちこめたことは1度たりともなかった。

 現在の国民は生きるか死ぬかの状況で憲法改正への関心が非常に高くなっており、今の状況をおいて他に国民投票のチャンスは考えられないだろう。最大与党と最大野党の党首は国の未来について、改憲か継続かの2択で国民に決断を求めるべく、国民投票の準備を進めているのであった。


 前総理率いる最大野党は平和憲法を維持したまま開戦と改憲のハードルを下げ、他に数々の修正と今後の環境変化に対応できる憲法案を提出する。

 この改憲案は前総理の祖父時代から悲願としていたものであり、国民が改憲の判断を下した場合、開戦の判断、自衛隊の存在がより明文化されることとなる。

 対して総理は現行憲法で戦争を戦い抜く決断をしていた。国民が現行憲法を選んだ場合は、現行法の改正によって自衛隊の行動と戦時の国民保護を行うとしている。


 結局のところ、国民が憲法改正を選ぼうと現行憲法を選ぼうと、戦争の回避には一切関係はない。戦争を仕掛けようとしている強大な軍事国家群を、外交で止められるほど日本国は外交が得意ではないし、外交力も大陸へのコネも無いのだ。今の日本国には戦争への備えをするほか道はなかった。



 国会で各党の動きを確認し終えた2人は、雑談しながら国の問題点を語っていく。


「我が党は自衛隊を憲法に明文化しない事こそ危険だと前々から言っていたが、曖昧なまま実戦が始まって懸念が現実になりつつある。」


「核は文科省、大陸間弾道弾と古代文明の衛星兵器はJAXA。彼等(名も無き組織)は大義名分と法の抜け道を利用しています。憲法を変えたところで変わらないでしょう。」


 第二次世界大戦以降、日本国は国防に関して明確な態度をとってこなかった。憲法は国権の発動たる戦争の放棄、戦争の放棄を実現させるための戦力の不保持と交戦権を認めないと明記されているが、主権国として国家固有の自衛権を持つと解釈され、必要最小限の戦力を有する自衛隊が存在している。

 自衛隊の保有できる装備には大きな制約があるが、警察予備隊、保安隊の時代から国会で論議されており、当時から「フリゲートは軍艦にあたらない」といった言葉遊びのような事が行われていた。

 当時の政治家達が今の自衛隊を見れば、憲法が改正されたと錯覚することだろう。

 また、行動に関しても大きな制約があり、「自衛隊は憲法違反なのだから」国内の自然災害ですら派遣は違憲と捉える政治家や国民が近年まで相当数存在していたため、自衛隊の派遣自体に大きなハードルがあった。


「蜀へは害獣駆除目的で出しましたが、あなたの出した防衛出動のおかげで国の立ち上がりが大幅に短縮できました。」


「そいつは組織(名も無き組織)のゴリ押しがあっての事だ。本来ならば蜀と精霊に関する情報を十分に集めて議論が必要だった・・・俺は今もあんたの決断が早すぎたと思っている、この判断が南海大島の攻撃に繋がったんだ。」


 自衛隊の行動が大きく緩和される契機となったのが1995年に発生した阪神淡路大震災であり、戦後初の大災害という非常事態対応に失敗した政府は、災害に自衛隊を積極的に派遣できる法整備を行う。その後、数々の災害で成果を上げた自衛隊を国民の多くが好意的に受け止め「憲法違反」「税金泥棒」「戦えない軍隊」といった批判は、遠い過去のものとなっていった。

 憲法改正議論の前に、大災害を避けては通れない日本国民は、いざという時に自衛隊を必要としており、国際情勢の変化に伴って自衛隊は装備を更新して行動も変化させていったのである。


「次の戦争は自衛隊の、いえ、日本国が歩んできた歴史そのものが試されるでしょう。戦争に一般常識を持ちもむほど、あなたは愚かではないと信じています。」


「当り前だ、あの時から俺達は共犯者だろうが。」


 刻一刻と迫る世界の大変革に対応するため、2人の総理は自身の権限と権力を行使して日本国の道筋を作っていく・・・

日本国憲法を聖書と見ている現総理は現行憲法で戦争に挑もうとしています。総理が「対峙」にて頑なに憲法改正へ行かないように発言していたのはこのためです。対して、正規の手続きを経て改正された憲法で戦争に挑むべきと考えている前総理、2人の考えを少し書いてみました。憲法改正イベントは、現行憲法を維持するか?野党の出した改憲か?を「国民に判断させる」という考えで国会を通過させて、国民投票にかけるトリッキーなものとなっています。ただ、改憲してもしなくても未来は変わりません。


陸海空に続く第4の自衛隊・・・当初「戦略自衛隊」と命名して慌てて消したのですが、他にかっこいい名前はありますかね?



仕事が忙しくて眠い・・・

作者は日本国憲法の第27条と第30条違反にならないように頑張ってます。もちろん、第12条にある努力もしていますよ。「今時この法律おかしくね?憲法違反だろ」っていうのがあれば、指摘して是正させるのは国民の義務ですからね。政治家も判断に困る場合があるので、裁判所に判断してもらうのも手ですが、作者はそこまでやったことはありません。


次の話は政治繋がりでサマサに赴任した「グェン」の話か、倭国の「アカギ」初登場を予定しています。

グェンは貴族というより、やり手の経営者といった感じの人物です

アカギですが、某艦船ゲームに登場する妖狐系のキャラではありません。ムカデの大妖怪です。白蛇のフタラ、その後にアカギという名前が出てきた時点で予想できた人もいるのではないでしょうか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 戦略自衛隊のネーミングセンスが秀逸過ぎるんですよね… 機動、挺進、両用、特殊作戦辺り?海兵自衛隊は元ネタがヤバいしなw
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