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とある転移国家日本国の決断  作者:
黒霧連合結成
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世界大戦への事前準備 その3

ヴィクターランド、聖域

 聖域と呼ばれ、ヴィクターランドでも極一部の人間しか立ち入る事が出来ない閉ざされた地に、数百年ぶりに新たな建物が建設されていた。

 日本と神竜教団は共同研究施設が計画された段階から共同研究は始まっており、既に日本、教団双方に有益な情報をもたらしていた。当初、日本側は本国との情報交換に艦船と航空機を使用していたため研究速度は上がらなかったが、衛星通信が可能となってからは多少改善さ、現在は海底ケーブルの敷設作業が行われているものの、日本、ヴィクターランド間の敷設ルートの選定が難航していた。



聖域内、共同研究所

 研究施設では超兵器ルシフェルの他、神竜教団がこの地に逃れて来た時に大陸から持ち出せた現行兵器、まだ解析されていない兵器まであり、LEDの照明で照らされた会議室では、双方が持っている古代文明の情報や研究成果が盛んに発表されていた。


「クリード系兵器は開発された年代からステージ1~6に分けられています。同じクリードマシンガンでもST1とST6では威力が倍以上違いますし、集弾性、弾速、魔力効率も格段に進歩が見られます。」

「ST6を使われると相当な被害が出るな・・・」


 両生類族の研究者が発表する敵の主兵装に日本側の武官が言葉を漏らす。


「両ノルド国家は既に日本国の存在を把握しているため、ジアゾ戦では高度兵器を温存し、対日戦にST5、6クラスを投入するでしょう。」

「ST5は人機3型の主兵装ですが、改造された2型も使用できます。ST6は人機3型、4型に搭載される兵装となるでしょう。尚、ジアゾからの情報提供により、ST5以降の高度兵器は開発されておらず、入手手段は遺跡のみである事が分かっています。」


 人機の主兵装説明が終わると、最近存在が確認された新兵器の発表が行われる。教団用のスクリーンには黒い球体が映し出された。


「この物体は飛行攻撃球と呼ばれる古代兵器です。近年実戦投入が確認された新しい兵器であり・・・」


 古代文明高度兵器研究者の竜人族は教団でも解析が終わっていない新兵器の説明を始める。飛行攻撃球は1人乗りの攻撃機で、球体の両サイドに兵器が収納されており、攻撃時に両サイドから武装が展開する。武装は追尾光子弾とクリードマシンガンで、鳥機のような速度は出せないものの、最高速度は480㎞/hで、空中を自在に飛行できる攻撃ヘリのような存在である。


「その兵器に自律型はありますか? 」


 研究員の発表が終わると日本側から直ぐに質問が出された。彼はサイバー防衛隊に所属しており、以前に古代遺跡から入手した兵器群の中に似たようなものがあったため、専門家の意見を聞こうとしていた。


「質問を質問で返すようで悪いのだが、自律型とはどのようなモノでしょうか。」

「人間ではなく兵器自身が索敵、戦闘、評価を行うものです。この画像を見てください。我々が、ある遺跡で入手したものです。」


 日本側のスクリーンには古代文明の宇宙軍総司令部から入手した戦闘ドローンが映し出される。


「これは、センチネルではないか! 一体どこで入手した。」

「月の遺跡です。」


 教団側の研究者達が驚愕する中、日本側の月という返答に彼等は混乱し始める。


「月まで行ったというのか・・・いや、話しが逸れるのでこの件は置いておこう。その兵器はセンチネル、飛行攻撃球が進化した先にある究極兵器だ。」


 場をおさめるため古代文明高度兵器研究者は話を元に戻し、永らく極秘にしていた情報を開示する。現在、両ノルド国家が実用化した飛行攻撃球は兵器ツリーの中では初めに来るものであり、その後に高性能化、無人機化、小型高性能無人機と続き、最終段階のセンチネルに到達する。日本側が持ってきた兵器情報は古代文明が保有していた最新鋭兵器だった。


「我々としては、センチネルの対処法を知りたいのですが、そちらで何か掴んでいますか? 」


 日本側は戦闘ドローンを研究している専門家なら対処法を知っていると考えていた。

 日本国は月の遺跡から多くの情報を入手しており、その中に「パンドラ」と呼ばれる強力な爆弾を見つけ、超兵器「神機」への対抗兵器として使用する計画を立てていたのだが、極少数の戦闘ドローンが遺跡で稼働している事を確認したため、計画は頓挫していた。


「対処法はありません。センチネルは解析すること自体に大きな危険が伴うのです。約400年前、スーノルド国領内で2機のセンチネル起動実験が行われました。実験場には万全を期して1個人機大隊と勇者が警備にあたっていたのですが、敵味方識別装置で友軍としたにもかかわらず起動させた瞬間に識別装置の異常を修復して無差別攻撃が始まったそうです。」

「たった2機のセンチネルに200機近くの人機と300人以上の装甲歩兵が全滅したのです。」


 この事故はスーノルド国内でも極秘にされており、当時の情報は一部の組織が厳重に保管している。日本側は月から収集したセンチネルの戦闘力を裏付ける話しに、月への探査機派遣計画を断念せざるを得なくなった。


「その後、実験はどうなったのですか。」

「勇者と伝説の兵士がセンチネルとの死闘を制したそうですが、詳細は分かっていません。センチネルは現有兵器で破壊可能ですが、倒した者達は例外的な存在です。一般兵では困難を極めるでしょう。」


 古代文明高度兵器研究者は過去の事故事例を出して日本側に注意を促すが、そんなことで止まるような者達ではない。


「我が国は月のデータから複製可能な物を研究中であります。センチネルの複製はできませんが、神竜教団の協力があれば主兵装のパルスライフルを2年以内に実用化できるでしょう。」


 パルスライフルはクリード系兵器の後継となる兵器であり、あらゆる性能が上回っている。特徴として魔法耐性が高く、物理防御も高い相手に対しても安定したダメージを与えられることから、数々の古代兵器でも群を抜いて優秀な次世代兵器である。


「日本国としては月で手に入れた情報を積極的に開示していく予定ですが、本国とのデータ通信量が限られているので今少しお待ちください。」


 両者の発表は毎回大きな進展がある。十分に発達した科学技術と魔法技術は互いの長所と短所を補う形で発展し合えるのだった。




倭国静京

 静京にある外務局の高官用休憩施設では、ジアゾ外交使節ヒドラ・オクタールと外務局長コクコが何気ない会話をしていた。既にジ・倭の間で一番忙しい時期は過ぎており、ジアゾ側も倭国側も2人以外席を外している。


「やっと静かになった。」

「こちらも人払いは済みました・・・」

「ここは禁煙じゃないよな。」

「禁止区域ではないのでお気になさらず。」


 オクタールは懐から煙草を取り出して吸い始め、コクコも倭国産の煙草に火をつける。


「ほぅ、あんたも吸うのか。」

「意外でしたか? 」


 オクタールは初めて見るコクコの喫煙を意外に思いつつ、今までを思い出す。喫煙が文化の1つであるジアゾ人のオクタールにとって、喫煙が厳しく制限されている日本国やヴィクターランドでの活動はストレスがたまるばかりである一方、規制が緩い倭国と蜀での活動は苦にはならなかった。


「そう、あんたは特殊だったな・・・300年前の同盟が生きているのは確認できたが、倭国に何ができる? いや、お前にと言った方がいいか。旧魔法ギルドのギルドマスター兼暗殺教団の教祖様。」


 オクタールは大妖怪であるコクコに対して臆することなく、外交儀礼も無しに話していた。それはコクコの正体を国をあげて調べて知っているからこその態度である。

 300年前のロマ王国との戦争を陰で操っていたコクコは間違いなく敵だ。そして、前回同様、勝つためには外すことのできない最重要人物の一人だった。


「おやおや、私の副業まで調べてあるとは、合衆国は流石ですね。」

「外では暗殺教団を根絶できないと言われているが、当たり前だな。頭が瘴気内にあるとは誰も考えていない。」

「最近は忙しくて、副業まで手が回りそうにないのですが・・・」

「ふっ、冗談を。こんな大イベントであんたが行儀良くしているなんて有り得ない。既に何かしているのではないか? 」


 2人は更に雑談を続けつつ、本質に行き着く。


「実はこの男を消してもらいたい。」

「戦争の下準備ですか・・・」

「ああ、日本は憲法を変えようとしている。だが、改正反対派が支持を伸ばしているのは知っているだろう? 」


 日本国憲法改正の話は瘴気内に広まっており、各国の注目が集まっていた。瘴気内で神竜に次ぐ戦力を有している日本国が「戦争放棄」したままでは悪影響しかないのだ。


「勿論、我が国は全面的にバックアップする。」

「では、証拠を残す形で行いましょうか。」




スーノルド国首都、オドレメジャー

 今日も女王は政治家への助言に財界人との会談と、王城をせわしなく移動していた。異国での魔虫大発生に魔石の高騰、これから起こる大戦を前に女王の仕事は日に日に増す状態にある。

 王城は警備が厳重であり、王族は輪をかけて厳重な警備が敷かれているが、これでは仕事にならないため、女王は自身の警備を簡略化することを指示していた。


 城の厳重な警備を抜ける者などいないと思われていたが、音も影も無く忍び込む暗殺教団の者達を察知できる者は王城には誰もいなかった・・・


 女王が護衛を連れ、少し狭い通路に入った瞬間、周囲全ての時間が止まる。


「うっ! 」


 女王は背中から胸にかけての違和感を感じる。胸を見ると床へ血が流れ出ており、自分の心臓が寸分たがわずに槍のようなもので貫かれている事を知るのだった。

センチネル

 軽乗用車の中に入れるほどのサイズだが、音速を超える最高速度に高い機動性を有する自律兵器である。武装は左右に2門ずつ、計4門のパルスライフルを装備しており、誘導兵器は無い。

元ネタは察してください。

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