幸子15
健さんは屋台の準備を整え、その場に集まった男達を呼び込んでいいく。
だんだんと、美味しそうなラーメンの匂いが漂ってきた。
『健さんも邪神教の仲間なのか?』っと、ヨシツグ達は小声で話し合っていると、先ほどから見かけなくなったさちばぁさんの声が聞こえた。
『ホッホッー! こりゃ旨いのう』
っと、さちばぁさんが男達と仲良く健さんのラーメンを食べているではないか。
ヨシツグは手をギュっと握りしめ、ツッコミを我慢したのだった。
『美味しいものを食べると冷静になれるだろ。』と健さんは男達を諭す様に話し出す。
『人によって信仰することは良いことだ。心の主軸がはっきりして、精神的な安定が得られやすい。
ただ、他人に強制したり、異教徒を敵視してはいけないよ。敵対しても良いことなど何もない。このラーメンを食べたら、これからのことをもう一度一緒に考えてみよう。』
『そーじゃのう、戦争なんかろくなことがない。沢山死んでしもうて…わしの恋人も戦争から帰って来んかったの。生き残っても町や畑は燃えてしまって、焼け跡を復興させるのもえらい月日がたったのう。』と、しんみりさちばぁさん。
『畑が燃える!それは耐えられん。』
『そうだ、そうだ』
『わしらの命の結晶だ。そんなことはあってはならん。』
『何か、良い手はないものか』
ヨシツグ達も、気配に気付いていた健さんに呼ばれ、みんなでラーメンを食べ、屋台に集まった者達であーでもない、こーでもないと話し合いは続いた。
『そうだ!』とヨシツグがズルズルとラーメンをすすっているさちばぁさんに話掛ける。
『さち、巫女さんになって雨乞いをしたことあったでしょう。それを僕はもう一度見てみたいな。あの可愛かった、巫女さんをした頃を思い出してみてよ。』
『よしのょり、可愛かっただなんて』麺をモグモグしながらさちばぁさんが照れている。
『そうだよ、さち、あの頃の可愛い姿をもう一度』っとヨシツグはさちばぁさんの手を握る。
『そこまで言うなら』っとさちばぁさんは杖を丸く大きく振っていくと、さちばぁさんがキラキラと光りだした。
『まぶしい!』
『なんだ!』