幸子14
壱の助がさちばぁさん達の前で忍者の如く、片膝を付いて話し出す。
『幸子様、ヨシツグ様、報告します。今夜の亥ノ刻に信者達の集会が教会横の広場であるとのことです。』
『亥の刻って……10時?
じゃぁ、そろそろ、偵察に行かなきゃ。 あ、さちばぁさん大丈夫?』
さちばぁさんは壱の助の報告を聞いて、なにやら考え込んでいた様子だが、急にはっと、前を向き、片手で顎の下を引っ張る動作をしだした。
『そうか、弥七よ、良くやったのぉ。
では行きますよ、助さん格さん準備は宜しいですか?』
……どうやら、水戸黄門ゴッコをしているようだった。
教会の隣の広場は、街灯が2台設置されていて、それなり明るいようだ。ヨシツグ達は隅の木の陰で気配を消し様子を見守っていた。周りは特に何もないので男達の声は良く聞こえている。
『それで、ユーミ様は何と?』
『今年、梅雨が来ないのは、隣の国で偽物の女神が蔓延っているからだと仰っておられた。』
『はぁー、偽物の女神だと?』
『それが、その偽物はカレーなる神と名乗っているようでの。でも、本当は只の婆さんらしい。』
それって、さちばあさんのことだと、ヨシツグとエースは顔を合わせた。
『それは罰あたりだ。そのせいで日照り続き』
『もしかして、その婆さんや隣の国に罰を与えるまでは、梅雨は来ないじゃあ…』
『そうだ! じゃないと、このナスアゲル国は水不足で大変なことになってしまう!』
『みんな、立ち上がるんだ!隣の国に罰を与えないと!』
『そうだ!そうだ!』
民衆たちは鍬を持ち立ち上がった。
~ルルル~ルル、ルルルルルル~ (チャルメラの音)
そして、興奮した男達の前に、屋台を押した健さんが現れた。