幸子12
さちばぁさんが緑茶をズズズッと啜り一息ついていると、前の席に体格の良い冒険者3人組が座った。
『何だ、このばぁさん』
『ここは老人が来る所じゃねーぞ、帰れ!』
と大声で話し掛けて来た。難聴のさちばぁさんにはちょうど良い声の大きさだ。
『帰れとな、はて、儂は何でここにいるんじゃろ?』
『はぁ?!何言ってるんだ?』
『じゃから、何で儂はここにおるのじゃ?家に帰りたいのぉ~、帰らしてくれ~』とさちばぁさんは冒険者の腕を掴む。
『ばぁさん迷子か?家はどこにあるんだ?』
『家は、、そうじゃ!この服の裏に嫁さんが縫い込んでくれとる』っと、さちばぁさんは上着を脱ぎ裏のタグを見せる。
冒険者はさちばぁさんの上着を見て、『ばぁさん異国から来たのか。この文字はどこの国だ?全然読めねーよ。』
『わしゃ、日本人の村上幸子じゃ、日本の◯◯県◯◯市じゃ』
『日本?』
『聞いたことがあるような、ここからかなり遠い国だったかな?』
『かなり遠いんか、わしゃ、家に帰れんのかのう。』とさちばぁさんが項垂れると、
『ばぁさん、気を落とすな、俺も家に何日も帰れてないんだ』
『ばか、お前の場合は、嫁さんに浮気がバレて叩き出されただけじゃん』
『まぁ、これでも食べるか?』っと浮気をしたという冒険者がお菓子をさちばぁさんの前に置いた。
『慰めてくれるのか、浮気者よ』っと、さちばぁさんはお返しに懐をゴソゴソ探りあめ玉を2つずつ手渡しする。
『何だこれ?』っと手に置かれた飴玉を冒険者達は見つめる。
『これかの?飴ちゃんじゃよ。ひとつ食べてみるが良い、浮気者よ』
『飴ちゃん?』
『そうじゃ、儂の好きなパイナップル味じゃ、浮気者よ』
冒険者達は包みを開けて口に入れる。
『甘い』
『フルーツの味か?』
『これは、旨い! 浮気者呼びはヤメテ下さい』
っと、冒険者達が飴ちゃんを味わっているところで、ヨシツグとエースがやって来た。
『さちばぁさん、情報収集も済んだし宿に戻ろう』