1
チートな徘徊の続編になります。
『スピスピ、スピスピ』
深夜になり、寝息をたてて、熱々焼き芋を食べる夢をみているのは、村上幸子さん。 通称さちばぁさん。
入歯を外しているので、口がやや開いていて、顎に立て皺ができている。何だか、とても、幸せそうな表情をしている。
隣のベットでは、夫の義則さんの静かな寝息が聞こえる。
『幸子さん…… 幸子さん……』
ホカホカ焼き芋をフーフーして、かぶり付いた時、どこかで名前を呼ばれた気がして、後ろを振り向いて確認する。夢だから、歯はあるようで、ちゃんと焼き芋に歯形が付いている。
『誰じゃ?』
そこには、綺麗な顔した、長髪でウェーブの金髪の女性(巨乳)が光り輝いていた。
『私は、こことは違う世界の女神です。
幸子さんは、ユーグリルという世界で、永い年月続いていた人間と魔族の戦いを、武力を使わずに止めたそうですね。』
『はりゃ?何のことじゃ?ユーグリル?』
さちばぁさんは、毎日朝ごはんを2回食べたり、5分前した会話を繰り返す程物忘れが酷く、この前の異世界で徘徊したことはすっかりと忘れている。
女神は目をウルウルさせて、巨乳をプルンプルンさせて、
『幸子さんにお願いがあります。どうか、私の世界ターヘンターを助けて欲しいのです。』
『助けて欲しいとな?儂なんかに、そんなこと出来るわけなかろう。』
『そこを、どうにか!』ハハー( ノ;_ _)ノと大げさにお辞儀をし、また、胸がプルンといった。
さちばぁさんは焼き芋にかぶり付いて『モグモグ、何で儂なんじゃ?もっと若いやつがおるじゃろー、モグモグ』
『何でって、地球の神のアーストが自慢してたんだもん!すごい婆さんだって。助けてくれたら願い事叶えてあげるから、どうか、お願い!』と女神は声を張り上げた。
『そんなに困っとるのか!じゃあ、助けたら、嫁が困っとるご近所トラブルを解決してくれんかのう?』
『?ご近所トラブル?、何だってどんとこいですよ』と女神が胸をボインとグーで叩いた。
『さっそく、幸子さんを勇者召喚してもらうね!私の庇護付けとくからね。じゃあね!』ポンッと女神が消えていった。
『なんじゃったん、忙しないのう』と、焼き芋の最後の一口を頬張った。
朝になり、夢のことを忘れている、さちばぁさん。
今日も朝から時間をあけて、本日2食目の朝食を食べてると、座ってる椅子の周辺に魔方陣が出現する。
嫁さんは何も気づかずに洗い物真っ最中。
さちばぁさんも気づかず、ご飯をモグモグ。
じいさんの義則は縁側でうとうと居眠り中。
そのまま、音もなく、さちばぁさんは消えていってしまった。
そして、『ドドーン!!』っと、ターヘンターという世界の召喚の間に、椅子に腰掛けたお茶碗と箸を持った、ちょっとボケているおばあちゃんが召喚されたのだった。