流れ星王国の王子様
お読みいただきありがとうございます。
皆さんは流れ星にお願い事をしたことはあるだろうか?
そのとき何をお願いしますか?
受験に合格したい?億万長者になりたい?恋人が欲しい?
私は「彼氏が欲しい。どうしても」とお願いしました。
そしてお願いした翌日、目を覚ますと見知らぬ場所に居ました。
辺り一面岩だらけ。植物は一切無く、空は黒色。
遠くの方に地球らしき星が見える。
そんなところに私はポツンと座ってました。
ボーっとした頭で辺りを見回していると、
後ろからポンポンと肩を叩かれたので、
振り向くとそこには黄色い星の被り物をして白い全身タイツを履いた人がいました。
顔もご丁寧に被り物に合わせて黄色く塗られている。
変態だ。
変態がバチコーンと音がしそうなほどのウィンクを決めてくる。
・・・私は見て見ぬふりをすることにしました。
「ここはどこでしょう?誰か人がいるといいんだけど」
立ち上がりながらそう呟くとまた後ろから肩を叩かれました。
これは幻、これは幻。
「ねぇねぇ、君は彼氏が欲しいと願った子だよね?」
「知りません。確かに願った気もしますが、貴方に何故答えなければならないのでしょう」
「うん。うん。やっぱり願った子だね。初めましてかな?僕はエトワールっていうんだ!よろしくね!
そして、何故答えなければならないか?
それはね、僕は君の願いを聞き届け、僕が今日から君の彼氏になったからさ!!」
またウィンクを決めてくる。
「ごめんなさい。その願いキャンセルで」
私は変態から逃げるようにその場を去ろうとした。
が、肩をガッツリと掴まれ逃げられない。
「待ちなよ。せっかく願いが叶ったんだよ。もっと喜ばなきゃダメだよ。」
「私は少なくとも普通の彼氏が欲しかっただけで、間違っても貴方のような変態の彼氏が欲しいなんて願っていません。」
「普通とは?」
「そんな変な被り物をしてなくて、全身白タイツなんて履かない人です。」
そういうと変態は考え事をして、
「なら、星に願いを言うといい。
けれど今から僕以外の彼氏をと願うのは難しいから
僕の外見を君好みに変えるようにすればいい。」
「なぜ、チェンジが不可なのですか」
「チェンジって・・・
いいかい。君には全くと言っていい程、男運がない。
そんな君に地球に居る彼氏を用意しようとしても碌な男がいない。
ならば君が望むような彼氏を手にするには地球以外の星から引っ張てくるしかないんだよ。
そして、選ばれたのが僕。僕が嫌だからって、他の人を引っ張って来るといってもその力はもう僕には残ってないし、そんなことができる流れ星は僕以外にはいないからチェンジは無理。」
「何故あなたが選ばれたのでしょう。変態は許容範囲ではありません。」
「はぁ。まず、僕はこの国の王子だ。
それに、この国の中では僕のファンクラブがあるくらい人気があるよ。
地球の女性の理想像じゃない?ほら、この『ドキドキ★夢学園~私の王子様がいつか現れる~』っていう漫画に描いてあるよ。
後ね、君は僕のこの格好を変態というけど、流れ星王国ではこの姿が正装なんだ。
僕たちからしてみれば君の方が変態と言っていい程だよ。」
「・・・マジですか」
「マジです。」
「そっかー。私はここでは変態なんだ。・・・帰りたい。」
「そっ、そんなに落ち込まないで。地球に帰れるように力は残してあるから。」
その言葉に私は変態、じゃない。エトワールに詰め寄った。
「帰れるんですか!?地球に!」
「お、おぉ、帰れる帰れる。だからその、あんまり近寄りすぎるのはどうかなと」
顔を赤らめるエトワールを見て私はパッと離れた。
「ご、ごめんなさい。帰れると分かってつい嬉しくて。」
「いや、良いんだ。その、君を勝手にこの国に連れてきた僕も悪いしね。
それで、僕の格好についてなんだけど、あの子たちが今願い事を叶える練習中でね、
君に是非、練習相手になってほしいんだ」
エトワールが指さす方向を見ると、わらわらと岩の陰にたくさんのエトワールと同じ格好をした
子供たちがいた。
「は、はい。よろしくお願いします。」
ペコリと頭を下げると子供たちも元気よく
「お願いしまーす!!」
と返事を返してくれた。
「じゃあみんな位置について、準備が出来たら呼んでくれるかな?」
エトワールがそういうと子供たちは一つ大きな返事をし、大きな岩の陰に集まった。
「いいよー」「準備オッケー」「大丈夫」「全力で走り抜ける!!」
など様々な声が聞こえてきた。
それを聞いたエトワールが願い事をするためのルールを説明してくれた。
●岩から岩に走っている間に願い事を三回言うこと
●走り出すのを確認してから願い事を言うこと
●お触り禁止
がルールらしい。
上の二つは普段地球で願うのとあまり変わりはないのでいいが、最後のお触り禁止って。
触りません。断じてそんな趣味嗜好はございません。
そんなことを考えていると最初の子がスタートしていた。
慌てて願い事を呟く
「イケメンになりますように。イケメンになりますように。イケメンになりますように。」
願い事が長すぎて願いが叶わなかった・・・。
最初の子が少し泣きそうになっている。ごめんよ。
次は文字数を考えて願い事をしなければ。
気合を入れて次の子に願い事を呟く
「被り物なし。被り物なし。被り物なし。」
すると、隣でボフンという音が聞こえ被り物が消えたエトワールが立っていた。
被り物がないエトワールの髪は短髪でサラサラの黒髪だった。
そして、私はまた次のお願い事をする。
「白タイツなし。白タイツなし。白タイツなし。」
すると隣からまた煙が上がり、隣には裸のエトワールがいた。
「・・・キャーーーーーーー」
一瞬思考がフリーズしてしまったが、
元に戻り悲鳴をあげながら羽織っていた上着をエトワールに投げつけた。
「変態!!」
投げつけられた上着をキャッチした後それを羽織りながらエトワールは
「君が僕の服を取ったのに変態とかひどすぎる。」
・・・確かにお願いしたのは私なのでごめんなさいと謝って、
エトワールに地球の服をとお願いするのだった。
全ての願いを無事に叶えてもらい、エトワールを見るとそこには
サラサラの黒髪に、白い肌、整った顔立ち、瞳は星を閉じ込めた様に綺麗な琥珀色、今どきの服を着たエトワールは
見つめると思わず頬に熱が集まってしまう程かっこよかった。
「これが、地球の人たちの格好か。」
感心したように自分の姿を確認しているエトワール
そしてこちらに向かって
「どう?」
と聞いてくるので私は恥ずかしくなってしまい、うつむきながら
「似合っています。」
と答えると満足したのかエトワールは私に手を差し出して、
「それじゃあ、君の故郷の地球に帰ろうか。」
私は地球に帰れることに喜び、彼の手を取るのだった。
ー無事に地球に帰ると私は彼に問いかけた
「なぜ、初めて会った私の願いを叶えてくれる気になったの?」
「んー。一目惚れってやつかな。」
とからかうように笑いながら答える彼に
「はぐらかさないで教えてくれたっていいじゃない。」
という私に彼はただ優しく笑って返した。
そして
「今日から君の彼氏になったわけだけど、
君が本気で僕の事を好きになってくれるようにこれから頑張るから覚悟していてね。」
と私の額にキスを落としたのだった。
ー君は知らないだろうが、僕が初めて地球の空を流れたときに、周りはうつむてひたすら願い事をする中で君は僕を見てキラキラと瞳を輝かせ「きれい!!」とはしゃぐ姿に僕は恋をしたんだ。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
この短編は思いつくまま書いてしまったため、
分かりにくい部分があったかと思います。すみません。
初めて短編を書いてみて、私自身楽しかったので、
また書けたら書きたいなと思っておりますので、
その時はよろしくお願いいたします。