強奪
レオルの腕に組みつくようにして接触する。
やる事は決まっている。
それは最初からあったかのように。
まるで呼吸をするかのように当たり前に。
俺は力を行使した。
「……『強奪』」
何かが、腕を通して流れこんでくる感覚。
今まで足りなかった何かを埋めるように、身体に力が充足していく。
「ぁあ? 離しやがれ!」
振りほどかれら力に逆らわず、飛び退くように距離を取る。
「テメェ、何しやがった!」
「知るかよ、自分の足りない脳味噌で考えてろ」
自身の体に違和感を覚えたレオルが狂ったように叫ぶ。
俺自身何が起こっているのかはわからない。
わからないが、何が自分にできるのかは理解できる。
目が脈打つような感覚と共に、『才能が見抜ける』ようになる。
ウィル グレイス
スキル
強奪Lv5
体術 L v6
怪力Lv5
レオル バルテル
スキル
気配感知Lv2
剣術Lv4
俺は間違いなくレオルからスキルを奪い取った。
奴は気付いていないままだが、俺は今、奴等と同じ領域にある。
本来、俺にはなかったはずの、才能の領域だ。
「お前ら、こいつを殺せェ!」
「お、おい。どうしたレオル。こんな雑魚に慌ててよ」
状況についてこれなかった取り巻きの二人を見る。
「ゲイド ベンゼン、魔導師。 火属性魔法のレベルは5、魔力操作のレベルは6、かなり優秀だな。
ザンドル エルドール、斥候。気配遮断と剣術がレベル4、罠術が3。前衛のレオルと合わせればなかなかバランスの良いパーティだ」
欲視がスキル構成、パーティの役割を看破する。本来は隠すべき情報をあっさりと見破られて二人が呆然とする。
「なんで俺達のスキルをーーー」
呆然と呟いている魔導師の男に剣を投げつける。
『怪力』スキルの強化によって、重く厚みのある刃が凄まじい勢いで頭に突き刺さり、魔導師があっさりと崩れ落ちる。
「ゲイド!? ……虫ケラ風情が俺の仲間をォ!」
「その虫ケラに殺されるんだよ、お前らはな」
激昂したシーフの男が短剣を引き抜き斬りかかってくる。
鋭い剣筋だが、もはや脅威にはなり得ない。
『体術Lv6』が、シーフの攻撃に対する最適な歩法、体捌き、反撃の仕方を教えてくれる。
繰り出される短剣を身体を傾けるようにして避け、そのままねじ込むように拳を腹に叩き込む。
「げぶっ」
水風船が弾けるような音が重く響く。
怪力によって強化された一撃を食らった男は、何かが潰れるような音ともに吹き飛ばされ。
バウンドするように転がった後動かなくなった。
ウィル グレイス
スキル
強奪Lv5
怪力Lv4
体術Lv6
剣術Lv4
接触ついでに『剣術』を奪えたようだ。
まだ慣れが足りなかったせいか、罠術は得られなかったようだが、まあ良いだろう。
「あ…………?」
レオルが呆然とした表情で突っ立っている。
一瞬で生まれた凄惨な光景についていけてないのかもしれない。
人を殺そうとする割にはずいぶん人並みな反応だった。
「で、どうする」
「て、テメェェェェェエエエ!」
我に帰ったレオルが剣で切りかかってくるが、『怪力』『体術』『剣術』を持っている俺が、『剣術』と『気配感知』だけのレオルに負ける道理はもはや無い。
振り下ろされる腕を片手で掴み、全力で握り締める。
メキメキと骨が悲鳴を上げ、あっさりと砕ける。
残ったスキルを『強奪』と呟き、根こそぎ奪い取る。
ウィル グレイス
スキル
強奪Lv5
怪力Lv4
体術Lv6
剣術Lv6 ↑
気配感知Lv2
どうやら同じスキルを奪うとレベルが加算される形になるらしい。
剣術のレベルが上昇している。
「ギャァァァァァァアアアア!」
「おい、どうした。俺を殺すんじゃなかったのか?」
痛みで剣を取り落とし、地面を転がるように悶絶するレオルの腹に蹴りを入れ、髪を掴んで強引に持ち上げる。
「ァァアアアア! 雑魚が! 無能の分際でェェェェエエエ!」
「その無能が、ずいぶん強くなっただろ? お前から貰ったスキルのお陰だよ」
俺の言葉にレオルが呆けた表情を浮かべる。
しばらくして、何かに気付いたように俺を見た。
「まさか、盗ったのか? 俺のスキルを?」
「ああ、良い才能ばっか持ってたよ、お前」
ぐったりしていたはずのレオルが凄まじい形相で暴れ出す。
「ァァアアアア! 返せ! 返せよ!俺のスキル!」
「嫌だよ」
暴れるレオルを床に叩きつけて黙らせる。
いつまでもここでダラダラとしているつもりもない。
「……殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
何度も殺すと呟いているが、そんなことは出来ないし、許すつもりもない。
「まあ俺はお前を殺さないよ、レオル」
「……ああ?」
ギョロリとレオルがこちらを見る。
「助けるつもりもないけどな」
ゲイドと呼ばれた冒険者の頭から剣を引き抜いて鞘に収める。
死体から金を回収したいところだが、レオルに痛めつけられたこともあって早く休みたいというのが本音だ。
「……覚えてろよ、絶対に殺してやる。 オメーもセリアも地獄に叩き落としてやる」
……懲りない奴だ。
此の期に及んでも自分の立場が分かっていない。
ここで謝りでもすれば生き残れる可能性もあるかもしれないだろうに。
別に構わないが。
荷物を整えてレオル前に立つ。
「…なんだよ」
「……ゴブリンってのは鼻の鋭い魔物でな。血の匂いに敏感で、嗅ぎ取るとすぐに集まってくるんだよ」
「……あ?」
「だから、俺も魔物を倒した場所からはすぐに離れるようにしてる。大勢に囲まれると危険だからな」
「なんの話をしてやがるっていってんだよ!」
「お前のこれからの話だよ」
ひたひたと小さな足音が響く。
同時にキーキーと耳障りなゴブリンの鳴き声も。
「え?」
「ゴブリン共だよ、大勢のな」
ようやく状況を理解したレオルの顔が青ざめる。
スキルもない怪我をした人間が大勢のゴブリンに囲まれてどうなるかは想像に難くない。
「お前がセリアさんをゴブリンに引き渡すって案。 なかなか良かったよ」
クズの制裁するためのアイデアとしてはな。
「あっ、た、助けてくれ」
「無能に頼るなよ。 自力で頑張れ」
別れの挨拶がわりに、レオルの膝を踏み締める。
骨が砕けてレオルが悲鳴をあげるが、ゴブリンを呼び寄せる目印にしかならない。
「た、頼む。 なんでもする……! 助けてぇ……」
「……へぇ、なんでもするといったな?」
「ああ! 服従する! 一生忠誠を誓う!」
「じゃあ精々、長く良い悲鳴をあげてくれ。お前が生きてる分だけ、ゴブリンの相手が少なくて済む」
「え?」
『気配感知』でゴブリンの少ない方向へと歩き出す。
呆けたレオルを尻目に迷宮を出ていくために歩いていく。
少し遅れて後ろで俺を激しく罵る声が聞こえるが、すぐに悲鳴へと変わった。
「た、助け……! ギャア! 離せ! 来るなァ!
痛ァァアアアア! ……ァ……ガ…………。 ……ェ…………ァ……」
最初は大きかった悲鳴が徐々に小さくなっていく。
やがて小鬼達の嗤い声にかき消されるようにして、レオルの悲鳴聞こえなくなった。
レオル バルテルは死んだ。
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