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九十七話 白き聖竜の焔


「記憶操作なんてモノがあるのはどっかで見て知っていたからね」



「ちっ...だったら力尽くでやる方が早いだろうな」



「ここにもいたか人間」



ガーディスとドカンが火花を散らしていると、その言葉で会話は中断された。そこに現れた一人の男...ゼロの登場にどちらもゼロの方を見る。威圧感でドカンやガーディスですら一歩も動けない。こちらに歩いてくるゼロをただただ眺めているしかなかった。

ゼロの登場にガーディスが冷や汗をかきながら「来やがったなバケモンが」とだけ言った。全くゼロのことすら知らないドカンはその圧倒的な圧力に押されながらも大きく出た。



「なんだ?こいつ邪魔すんなよ」



「貴様らだけか」



「ああ??」



「やばいやつが来たな」



どうやらゼロに何かを感づいたガーディスに、ドカンはその様子を不思議そうに見ていた。



「どういうことだ?」



「あいつ...ゼロ...はやばい。いや、ゼロというよりかはこう呼んだ方がいいか?て聖竜バルトラード」



「はあ?こいつがか!?」



その言葉にドカンが驚く。バルトラートといえば四獣の最強とも言われている魔物で、アリスなど人間の前に現れてはその強さで全てを破壊し尽くすと言う怪物並の強さを持った竜だ。姿が変わっているがガーディスは「間違いない...奴だ」と言い息を飲む。



「名前は聞いた事あるが、マジで本当にいるんだな...」



「ほう...そこまでわかっているのか」



「その感じからそうじゃないかとは思っていたが...俺がまだ闇魔を使ってた時にお前、俺の部下を倒しただろ?あの傷、それより前にお前と戦った時のものと同じなんだよ。お前と会った時の感じも全て...」



「ほう...」



物語で言ってしなえば最初のところ、アリスが闇魔と戦いはじめた辺りだ。ゴーンに圧勝し、あの時そこにいたアンバーグとルビスまでもを一瞬にして倒してしまったのだった。

ガーディスの元に運ばれたゴーンは炎でできた傷があり、それは普通の炎でのやけどではなくそれに加えて斬られたような跡も残っていた。その周りに火傷の跡も残っている。



「なんかめっちゃ強いやつなんだろ?四獣とかなんとかって言う」



「ああ。そういやその呪いとまだ同居してんのか?昔に戦った時にニアが残した呪いとな」



「これのことか」



ニアは昔ガーディスとやってきた幼馴染だ。その幼馴染を殺され、闇魔を手に取り打倒ゼロを掲げていた所をアリスに倒されたのだ。

呪いは魔物の世界でアンバーグが手にしていた呪われた杖(カースド・ロッド)と同じモノだが、あの杖とは違い自らを犠牲にするほどの強い力ではなかった。とは言っても周りを巻き込んで全てを無へと導くその杖はかなり強力な効果だった。アリスもそれに何度か巻き込まれそうになった事もあった。それもあり少しは弱体化しているとはいえ最強と呼ばれているだけあってその力は魔物の世界で最強のm七天聖の2位と3位であるヴェラードとラグナを圧倒したほどだ。その戦いは同じく1位のルナの乱入によってうやむやになったが。




「んで、そいつがなんの用だ?」



「人間を滅ぼす」



「はあ?」



「気をつけろ。こいつはやばい」



「わかってる。ワクワクするぐらい危険だと言ってる気がする」



ドカンの第六感のようなモノだろうか?「戦うな」「逃げろ」とドカンに何度も何度も繰り返している。だがドカンはそれには従わず剣を握りしめてじっとゼロの方を見ていた。

滅ぼすというだけあって本当にこちらを殺す気でくるだろう。そういうの含めてドカンは鳴り止まない鼓動を抑えながらもゼロと対峙していた。


「なあ、ここは一旦休戦と行かないか?三つ巴で勝てる相手じゃないのはわかってるだろう?」



「ああ、そうだな」



「んで、勝てる見込みはあるのか?」




「おそらく、ほぼないと言っていいだろう」



「0ではないんだな」



それを聞くとドカンはニッコリと笑い辺りを爆発させる。それはただに目眩しでドカンがどんどん攻めて行く。爆発を活用しながら押しているようにも見えたがただただゼロが攻撃していないだけで押しているわけではなかった。ゼロが白い炎で剣を生み出し簡単にドカンの攻撃を弾いてしまう。

ガーディスも槍を使って応戦するのだが、一度も攻撃が当たることはなかった。



「ははははは!!!」



「笑ってる場合じゃねえ!!」



「楽しくてな!!!こんなやばいやつと戦えるんだからな!!!」




ドカンが剣振り回しゼロはひたすらそれを避けたり受け止めたりしている。そして攻撃を行いながらドカンは急にまたあの技を繰り出した。



「ジ・エンドオブエクスプロージョン!!!」




その爆発は少し遠くにいたガーディスまでもを巻き込み辺り数メートルが煙に包まれた。自分にもダメージを追うわざとあってかなり効いている筈だ。だが煙から出てきたゼロは全くと言っていいほど効いていなかった。

それすらわかっていたドカンはどうしようもない事を悟ってただはは...というしかなかった




「ほう...」



それだけのあっさりとした感想にドカンは「やっぱ効かないよなあ...」と言いながらゼロを見た。今度はゼロが攻撃をしてきて、炎の弓を100ほど生み出しそれを一斉に放つ。反動ダメージを受けたドカンと、それに巻き込まれたガーディスはその攻撃をモロに受けてボロボロになっていた。



「くそ....俺の計画は達成できねえか!!」



「いや...まだ諦めるには早いと思うぞ」



そういいガーディス立ち上がるがよくてあと一撃だろう。



「どうするんだ?」



「もう一回アレ、いけるか?」



「ああ、何度でも倒れるまでやってやらあ」



ドカンはもう一度近づけるだけ近づいてから同じスキルを繰り出す。それと同時にガーディスの周りにバリアが貼られる。バリアはドカンの攻撃をどんどん吸収してガーディスの力へと変換していった。そしてガーディスは大きな声でそのスキルを叫ぶ。



「吸魔閃一鬼!!」



その凄まじい力はゼロに向かって行く...のだがゼロが多く白い炎を出すと一瞬にしてかき消されてしまった。

その一瞬に出来事に2人は何も言えなかった。ゼロはガーディスの大技を無効にするとドカンの方まで歩いていき剣でドカンをいたぶっていく。ドカンは痛ぶられ続けながらももうほとんど虫の息ぐらいだった。



「やはり人間に期待しただけ無駄だったな」



「人間って...もんは...やろうと..思えばもっと....出せるんだが...なあ?」



「ほう?」



「ドカン!くそ!!」


ガーディスはもう戦う気力すら残っていなかった。ただ喋るぐらいしかできない。ドカンが死ぬのを見ているしかない。今は敵とは言え昔少し同じところにいたドカンがやられる姿を見たくはないのだろう。



「終わりだ。消えろ!」



「それは...どうかな?」



そういうとゼロの足を掴んで逃さないようにし、ドカンは「着火!!!」とだけ言った。すると剣からドカンに全ての爆発のエネルギーが注入されて行く。ドカンは赤くなっていき、鼓動のようにドクンドクンと音が鳴る。



「ほう、最後の足掻きというわけか」



「最後ぐらいは...派手に行きたいからな!攻撃しても無駄だぞ?こうなったらもう止まらないし、攻撃も受け付けないからな!」



「何をする気だ!!!ドカン!!」



「これは俺に全てのエネルギーを注ぎ込み、大爆発を起こすんだ。お前らも運がなかったと思うんだな」



「バカお前!!!」



「目的は結局達成出来なかったが、最後に大きな花火を見せてやる!!!!ドカンは永遠に不滅!!!ははははははははははははははは!!!!」



その高笑いと共に当たりは先ほどの何十倍の大爆破が起こった。

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