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八十七話 帰還


「さあ、それを渡して貰おう」



「そうもいかないんだよな。ゲッゲッゲ」



ゼロと対峙するゲルムは余裕を見せながら笑った。虚勢というわけではなく、かなり自信があるようでもう一度笑ってみせる。それが本当だろうとハッタリだろうと、目の前の目的のものを得るべくどんどん近づいてくる。ゲルムは近づいてくるゼロを見ながら机の後ろにあるスイッチを押した。すると眩しい光に包まれてゼロの視界を奪った。



「めくらましか?」



「ゲッゲッゲ。そうだと思うか??」



光が消えると、もう武器を精製していた装置は跡形もなく消えていた。その場所にはポッカリと何も無い空間があるだけ。突然の事だったがゼロは顔色ひとつ変えずに白い炎で形成した剣を向けた。それに少しばかり焦りを見せるが、それでもゲルムは冷静にゼロの方をじっと見る。



「どこへやった?」



「それを教える必要があるか??」



「なら無理矢理聞くまでだ」



「やってみればいい」


「...俺が潰すのは人間だけだ。味方である魔物では無い。



そういうと炎を消してどこかに去ってしまった。何だったんだと呆然としていると今度は入れ替わりでアリスが出てきた。息を切らせながら入ってきたアリスはその状況が飲み込めずにあたりを見回す。



「何?どういう状況?」



「今、ギルメラを倒す秘策を作ってたところだ」



ゲルムがそういうとテティはあたりを見回す。だがその部屋に、その秘策を作っていたという形跡が全く無いのを見て「何もないじゃ無い寝ぼけてんの??」と文句を垂れた。

それを聞いてゲルムはこれからアリス達にやるべき事を告げる。


「ちと非常事態でな。今お前達の世界に、ギルメラを倒すための機械を送ったから、そっちに向かってくれ」



「と言ってもねえ」



「古い友人の所に送ったからな。変な笑い方をするが腕はいい。まあやってる事は魔物を作ったり改造したりと、ヤバそうなやつだがな」



「変な笑い...魔物を作る...」



「それってもしかして!」



アリスもテティも同じ人物を頭に浮かべてお互いの顔を見合う。ゲルムがバーリムを呼ぶとバーリムに元の世界に戻してあげるという節の説明をして、バーリムはそれに納得する。そしてまたあの他のところへと繋ぐ門をだすとその門は音を立てながら静かに開いていく。


「でも、他のアンバーグとかは?」



「他の奴らは見つけ次第事情を説明して戻しておく」



「分かった」



アリスはそう言った後に、小さく「アンバーグ...」とつぶやいた。






「ふー、こっちにくるのは久しぶりね」




「ええ」



そう言いながらアリスは伸びをした。見慣れた草原にやっているアリスは後ろにいるバーリムにお礼を言う。バーリムはニッコリと笑い、手を振りながら門の中に入っていった。バーリム門に入って数秒でそこ門は下の方から薄くなって消えていった。門が消える所を見ながらテティはフーッとため息をついた。

テティにとってはアリス以上に色々あった。ギルメラに絶望し、時を戻しここまで来た。もうここまで来たら後戻りはできない。あとはあのギルメラを倒すだけだ。



「ここまで来たのね」



「ええ」



「あとは回収してギルメラを倒すだけね



「行こう。これ以上同じ被害がでなおように」



しばらく歩き街に着く。アリス達のいつも使っているあの懐かしい街だ。何も変わっていない。前に1度七天星のラグナに壊されたが、それは時を戻したことで無かったことにになっている。そもそもずっと魔物の世界にいたため、ラグナと戦う辺りのくだりも全て無かったことになっている。

街に懐かしさを覚えながら目的地まで向かう。人で賑わっていて変わってないんだなとしみじみアリス達は感じていた。

角を曲がり目的の建物がある所までつくと、その建物は地下のため階段を降りて現れたドアを開けた。



「どうもー」



「あれ、アンタ今までどこいってたのよ」



奥から現れたバニアはアリス達を見つけると幽霊でも出たかのような反応を見せる。それを聞きつけてゴーン、カルラ、ピロンも顔を出してきた。全員アリス達を見て驚いたような感じだった。カルラに至っては大袈裟に「生きてたんスか??」と言っている。



「失礼ね!生きてるわよ!少しいなくなったぐらいで市んでるわけないでしょうが!!」


「あーくたばってくれてた方が口うるさい妖精の声を聞かなくてすんだのに」



「オバさんも相変わらずで結構なことね」



バニアとテティが火花をバチバチと散らしている横で、ゴーンは用について聞いてきた。アリスは今までの一部始終を話したが、ピロン以外は全く理解できていなく全くと言っていいほどよく分かっていないようだった。



「ピロロロ、なるほど久々にあいつからヘンなものが送られてきたと思えば何か大変な事になってるみたいだな。



「だからお願い!力を貸して!」



「頼み事をずるなんで珍じいな」




ピロン達はお互いの顔を見合わせる。正直ピロンですら今までの事を説明受けてもあまりよく分かっていない状況だ。だがアリス達は仲間では無いが一応協力したり色々今までしてきたし、承諾する。

なんだかんだの付き合いで、向こう側はどう思っているのかが分からないが。アリス的には結構打ち解けているような気はする。



「で、何をずればいいんだ」



「とりあえず、完成するまでここを守っててほしいの。私たちは色々な人のところへー」



「何か面白そうな事俺抜きで始めてるじゃねーか」



入口の方からの声が聞こえる。そちらを向くとそこにいたのはガーディスだった。



「ガーディス様!!またお会いできて良かったッス!!」



「ガーディス...」



「扉の向こうで話は聞いてたぜ。戦力になるいい奴がいる。ついてきな」



「誰なの?」



「お前も良く知ってる奴だ。まあ悪い意味でな」



言っている意味はわからなかったが、今は戦力が必要だ。ガーディスについていく事にした。ピロン達には留守番をさせ、アリス、テティそしてガーディスの3人で行くことにした。

街を出てしばらく西へと進む。ガーディス曰く結構距離はあるようで結構な距離を進んだ。途中休憩を挟みながら進むと大きな鉄でできた建物が建物が姿を表した。壁には窓ほどの大きさに鉄格子がかかっている。刑務所のような所なのだろう。


「ここなの?」



「ああ。ここは鉄の要塞アルカディオン



許可を取り中に入る。周りには鉄格子がたくさんあり中には極悪人そうな人らが疲れ切った顔をしている。その廊下を通り階段を降りる。ひたすら階段を降りさせられてアリスは「まだなの?」とガーディスに尋ねた。



「ここは下に行けば行くほどやばい奴がいるからな」



「って事は結構な大罪人?」



「まあ、そうなるな」



階段が終わると一本道が続く。そこには他の人などは一切おらず奥の方に1つだけ檻が見える。その中に誰かがいるようだが檻ですらギリギリで全くわからない。一体どんな奴なのだろう?少し怖いが道を進む。ガーディスが言うには悪い意味で知っている奴だというが、全く予想がつかない。



「着いたぞ」



「誰かいるようだけど...誰?」



奥の方にいる男は暗くてあまり顔が良く見えない。そいつはこちらに気づくとハイハイでこちらに近づいてくる。首や手につけている拘束具は鎖で繋がれていて、鎖のジャラジャラと言う音が聞こえてくる。その姿をあらわすと、アリスやテティの懐かしい顔を見た嬉しいのか、ニヤリと笑った。



「よお、元気そうだな」



「今日はなんか懐かしい顔があるなあ」



「アンタ...こんな所にいたの...?」



その男、ドカンはアリス達をマジマジと見ながらへへへ、と笑ってみせた。

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