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八十六話 この命が果てようとも

 


「アンバーグ!!あまり期待はしてないけど...」



「おい、今『期待してない』って聞こえたぞ!!」



「お、アンバーグか。まあアンバーグぐらいなら増えても問題ないな」



「げげっ!ヴェラード!しかも今回は敵なのかよ!」



「アンバーグはヴェラードを何とか足止めしといて!」



「了解!」



アリスが魔物に勢いよく向かっていく。魔物の拳を避けながらアリスは魔物の左右の足の間を滑りながらくぐり抜けてその先にあるマックスヒーローズが使っていた剣を拾い上げる。そしてくるりと体の向きを変えて魔物の方へと向かっていった。



「魔封じの激昂!!」



そう叫びながら魔物を斬りつける。魔物に大ダメージだったようで大きく叫びながら傷口を押さえる。そこへまた別のスキル、天下無双を魔物にぶち込むととても効いているようで呻き声を上げながら暴れ回り始めた。




「よし!このままいける!」



アリスがそんなことを思ったのも束の間、その魔物は雄叫びをあげて頭の方から体の色が赤くなっていく。全身が完全に真っ赤に変わり、アリスの方を向くと手のひらでアリスを押しつぶそうとする。上からくる手を剣で防ぐがその力は強く押しつぶされそうな勢いだ。



「なに!?」



「言い忘れてたが、そいつは体力が1/4になるとかなり強くなるからおそらくその武器でやっと防げるぐらいだろう。普通はこのパターンに入る前に倒すんだがな」



「それを先に言いなさいよ!!」



「これ、やばいかも!」



アリスの床が、ミシミシと言いながらヒビが入っていく。そしてすぐにアリスの半径5センチほどの周りの床が壊れ、クレーターのような数ミリ程度のの円形の穴ができる。このままでは押しつぶされてしまう。



「天下無双!!」



迫り来る手にスキルをねじ込んで跳ね返す。だがもう片方の手が今度は握りしめた拳を振り下ろしてくる。それを避けるがまたもう片方の手が襲いかかってくる。

ダメージを軽減できるとは言え、一撃一撃が凄まじい火力で防ぐのが精一杯だ。



「俺たちは出番なさそうだな。ゲルムだっけか?のところに行くか」



「待て!!」


アンバーグが立ちはだかるが、ヴェラードはクイっと首をアリスの方向へと1回だけひねる。向こうの方では苦戦しているアリスが戦っている姿。それでも立ち退かないため、何が言いたいのかを理解してないのかわかってないようなアンバーグにため息をついた。



「あいつ助けないと死ぬぞ」



「たしかにお前の相手してるよりアリスを助けた方がいい。だがアリスはやってくれる!きっと!」



「もう満身創痍って感じなんだけどな」



たしかにアリスは防戦一方という感じでなかなか魔物へのダメージが1回も与えられていない。時々棘を飛ばしてはアリスに腕で攻撃したりと合わせ技までするようになって近づくことすらできていない。



「良いのか?あいつ死ぬぞ?」



「くっ...!」



「いけー!どっちも頑張れー!!」



応援しながら休んでいるルナをチラっと見てまたアンバーグはヴェラードの方を見る。たしかにあのままではアリスの勝機はないかもしれない。だがアリスを信じなくてどうする?今までいくつの難関を超えたのか...アンバーグはそう言い聞かせながら矢をヴェラードに向ける。



「ほー。アリスを信じると言うのか。だが見てみろ、もう終わりそうだぞ」



少し目を離した隙にアリスがやられそうな状況になっていた。アリスの方へと近づいてくる魔物。アリスの首を掴んで持ち上げる。そのまま締め上げるような勢いでその力はどんどん強くなって行く。まずい!アンバーグはそう思い杖を出して魔物を呼びかけた。それでも反応しないのを見て矢を1発放った。その矢は頭に直撃しアンバーグの方へと向いてくれる。アリスを掴む腕も弱まりアリスは腕から脱出に成功する。この



「おい!こっちみろ!!お前にとっておきをくれてやる!」



「アンバーグ!!」



「いつの間にかヴェラード達は居なくなってる!お前らは行け!!」



先程までそこに居たヴェラードはたしかにいつの間にかいなくなっていた。心配そうな顔をするアリスとテティに大丈夫だと言わんばかりの笑顔とサムズアップを見せる。



「え?でも!!」



「行っただろ?大丈夫だって」



「アンバーグ如きが大丈夫なの?」



「『如き』は余計だが大丈夫だ!安心しろ」




「じゃあ...わかった!!」



「必ず...来なさいよ」



「もちろん!」



アリスはそう言いながらアンバーグに背を向けて走り出した。テティもそれについていく。アンバーグはアリス達が完全見えなくなると、とある杖を取り出した。それは...。



呪われた杖(カースド・ロッド)



アンバーグがこの世界で手に入れた自分の命を使って呪いをかけるというもの。まさかこれを使おうというのか。

テティとアリスの静止を無視して杖を掲げる。「だめだって!」とテティが何度も言うが全く聞く耳を持たない。



「俺の魂をバトンとして受け取ってくれよ!」



一人でそんなことを呟きながら、杖から出た怪しげな光に魔物は頭を抱えて苦しみだした。杖は呪いで相手を大幅に弱体化したり苦しむものだったりと様々だ。魔物は錆のように腕や体が茶色くなっていき、体が粉のようなほどの小ささになりどんどん消えていく。その茶色くなっていくのは全身まで及び、そして全てが粉のように小さくなっていって消えてしまった。それを見たアンバーグは笑みを浮かべてその場に倒れ込む。




「あとは...任せたぞ」



それだけを言うと、アンバーグは動かなくなってしまった





「ここか」


ゼロは壁が完全になくなった部屋の真ん中あたりで白い炎で床をぶっ壊した。すると階段が現れた。その階段を下ると、階段には左右に青い炎が灯っている。しばらく進むとゲルムの姿があった。大きなカプセルに、武器がたくさん入っている。



「ほう?ここを探り当てるなんてな」



「ふん」



「どうするか...星7はもう使ってしまったしな」



「諦めろ」



「ゲッゲッゲ!秘密兵器があるから大丈夫だがな」



「秘密兵器..?」



「ゲッゲッゲ」


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