八話 全てを滅ぼす竜の力
「ふふふ、どうするの?お嬢ちゃん」
アリスと対峙している余裕そうに笑みを浮かべながらバニアは杖をこちらに向ける。スキルを使えなくしてコピーする恐ろしい闇魔...くっ、と睨むようにバニアを見る。
「このオバさん...強い!」
「そのオバさんっていうのやめなさいよ」
その言葉に、先ほどの余裕の表情から少しむすっとしたような顔に変わる。どうやらテティに「おばさん」と言われたのを根に持っているいるようだ。バニアはこちらに歩いてきては「まあいいわ」とだけ言い自分より背の低いアリスを見下す。
「おばさん」
「なっ!!もういいわ!!あんたまでそう言うならとっとと始末してあげるから」
バニアがアリスに杖を向ける。その時、地鳴りとともに地面から何かが姿を現した。それは大きな岩でできたゴーレムで、巨人と言えるほどの大きさはある。お腹には赤い丸いものがはめ込んである。そのゴーレムはこちらを見るとその岩でできた腕を振り上げて勢いよく地面を叩く。そして再び重そうに腕を持ち上げる。
「なに?こいつ!!」
「こいつは...!ロックゴーレム...!」
ロックゴーレム、聞いたことがある。この付近にしか数体しか生息しておらず通りかかったものに襲いかかると。その石で出来た体は物理攻撃など全く効かず、杖の魔法弾かスキルの遠距離攻撃しか通用しないのだという。
飛びかかり斬ろうとするが、キン!と硬い音だけが響く。やはりその情報通り、頑丈で物理攻撃は効かないだろう。ロックゴーレムは腕を振り回し攻撃を仕掛けてくる。これでは戦いどころじゃない。
「邪魔ね...そうだ!おばさん!一緒にこいつを倒すってのはどう?」
「おば....まあ、こいつがいちゃ邪魔くさいからしょうがないわね」
アリスがロックゴーレムの周りを走り出し気を引こうとする。作戦通りロックゴーレムは自分の周りをチョロチョロと動き回るアリスを追うように顔を動かしている。その間にバニアはアリスのスキルでロックゴーレムに攻撃を仕掛けた。雷がロックゴーレムに直撃し動きが止まる。「「今よ!スキルでやってしまいなさい!」と言うバニアの声が聞こえる。
考えてる時間はない。一か八か、スキルを使ってみる。雷が出てそれうぃサンドゴーレムに打ち込んだ。バニアも再度使えるようになったようで2人の雷をサンドゴーレムに叩き込む。大きな音と共にサンドゴーレムは粉々に砕け散った。
「スキルが出た!」
「とっさにリセットしたからね」
「すごい!あんな奴倒すなんて!!なんだかんだでいいチームワークだったし!」
アリスはバニアも手を掴んで喜んだ。敵だと言うのに、手を掴んでまで喜ぶアリスに調子を狂わされるバニアは、困惑した表情をしていた。
バニアは手を振り払い杖を向ける。本来は敵同士だと言うことを知らしめたかったのだが。興奮冷めやらぬアリスにはあ、とため息をついた。
「あーあ、なんか調子狂うわ。今日は見逃してあげるけど、今度はそうはいかないわよ」
そう告げてどこかの行ってしまった。どこか行ってしまう。アリスはただそれだけを見ていた。
「なんだあいつ?」
一方、倒れているゴーンと、その近くに謎の男が立っているというその異様な光景にルビス、アンバーグ、テティの3人は、そう言うしかなかった。闇魔のゴーンが倒れている。その近くには黒い髪の不気味な男が立っている。肌は少し黒く白い線が頰のところについている。その男の近くにいるだけで威圧感に押しつぶされそうなぐらいだ。その男はルビス達を見つけると白い炎で剣を作り出しこちらに歩いてくる。
「な、なんなんだ?お前は」
「ゼロ...人間を滅ぼす者」
「ゼロ....?」
この感じ、人の形をしているがおそらく人間ではないことはわかった。だがそれ以外の情報は全くわかなかった。人間を滅ぼすと言っているのでこちらを狙ってきているようだが。そのゼロという男は歩いていた足を駆け足に変え。剣を振りかざす。ルビスは防ごうとするがすごい威力で、その一振りすら防ぐことができない。
「てめえ!俺のダジャレ弓を食らいやがれ!!!」
アンバーグが弓を構える。「電話にでんわ!」と勢いよく叫んで放たれたその矢は氷をまといゼロという男の方に勢いよく向かう。だが白い炎で防がれ簡単に弾かれてしまう。
「なに?その変な弓」
「これは俺のダジャレの弓だ!!ダジャレで氷を纏わせて攻撃する画期的な弓なんだ!!」
テティのその質問に自慢げに答えるアンバーグに「そう」とだけ言った。ダサいとか色々と言いたいことはあるが。戦いの最中なのであとで言うことにした。アンバーグは再び弓を構える。
「『航海』って言う字はこうかい?そんなこと言ってると後悔するよ!」
放たれた矢は先程より多いダジャレの数で氷に覆われさらなる威力を増していた。だが威力が増していようと変わることはなく、飛んで行った矢は案の定と言うべきか、白い炎によって無力化される。ゼロは白い炎を伸ばし近くにいたルビスと遠くにいたアンバーグを狙い打ちし始めた。
「ぐああああ!!」
叫び声とともに白い炎とともにルビスとアンバーグが上空へと吹き飛ばされる。
「くっ...そ!なめるな!」村雨っ!!
空中からスキルを打ってみる。だが、そのスキルも簡単にかき消されてしまう。強さは圧倒的と言えるものだった。
「そんなものか?今度はこちらが見せる番だな」
そういうと白い炎は渦のようになる。それは地上に着地したルビスとアンバーグを包み込めるほどの大きさであっという間に渦の中に閉じ込められてしまった。
「白炎ノ渦」
その紫の炎はこちらに勢いよくこちらに来る剣で受け止めようにも、四方八方から押し寄せてきて防ぎようがなかった。あっという間に2人は炎の中に投げ込まれ、しばらく白い炎が回転すると次第にそれは収まって行き、やがて全て消えるとボロボロになって倒れているルビスとアンバーグの姿が見えた。
「つまらん。もう終わりか?つまらなすぎるぞ」
ルビスもアンバーグもピクリとも動かない。ゼロはテティの方に向く。殺される。直感的に頭の中の自分が危機を知らせる。動けと命令しても、恐怖全く体が動かない。体が震えてまるで蛇に睨まれた蛙のようにその場で固まることしかできない。このままでは..!
「ぐっ...くそ!」
そのときだった。突然ゼロが苦しみ出した。なにが起こったのかわからずゼロの方を見る。とても苦しそうな表情
で胸に手を当てている。そのままたおれこみ、さらに苦しそうな表情を浮かべる。突然のことに何が何だか分からずテティはただ呆然としている。
「ぐっ...忌々しい呪いが今になって...」
その苦しみはさらに増していき、ついには「ぐああああああ!」という悲鳴をあげる。テティは今のうちだと倒れているアンバーグとルビスを持とうとするが普通の人間の1/4程度しかないテティには運ぶことは困難だった。
ゼロからは黒い霧のようなものが出てくる。ゼロの近くにあった黄色い花は霧に当たるとすぐに枯れてしまう。おそらく、いやこれは確実にあたってはいけないものだ。
「ちょっと起きなさいよ!!ちょっと!!」
テティが呼びかけるも反応がない。黒い霧が刻一刻と迫って行く。どうすれば...。
「え?」
ゼロの下には大きな穴が空き、ゼロはそこに吸い込まれていった。ゼロは何が起こっているのか分からず苦しみで抵抗することが全く出来ずただ穴に飲み込まれていく。沼のようにその穴はどんどんゼロを飲み込んで行く。ついにゼロは穴の中に消えてしなった。それと同時に黒い霧も消えてゆく。
「ピロロロ!これは絶好のチャンスじゃないか..!ピロロロロ!」
そこにいたのは倒したはずのピロンだった。手に持っているのは...カルラの迷路のある穴に飲み込むと言う闇魔。そうか、さっきの穴はカルラが持っていた闇魔だったのか。だが、なぜピロンが..?
「あんた!変な笑い方のキモ科学者!なんで!?」
「ピロロロ」
ピロンはただ笑っていた。
ーー
「へえ、永遠の力を持つ宝珠...ねえ」
誰も使っていない家で、その男はそう呟いた。バタバタという忙しい音が聞こえ、バタンとドアを開けて一人の女が入ってくる。
「ガーディス!!!」
「なんだ!騒がしい」
その入っていきた女...バニアはハァ、ハァと息を切らしていた。手には体から血を流したカルラを抱えている。
「何があったんだ」
「分からない!!カルラが血を流して倒れていて..!闇魔も消えていて..!」
そのガーディスと呼ばれた男は「はあ」とため息をついて立ち上がる。
「とりあえずお前はそこでそいつを見てろ」
そういうと椅子にかけていた上着を着て、外に出た。
武器紹介的な
浄化の槍
レア度☆☆☆
焼きを浄化するという槍。なんだか使いどころがほとんど限られていて何にために生まれてきたのか正直わからないレベル。