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七十四話 全てが終わった日


「また...ギルメラ」



その姿はテティの心の中にある恐怖をまた呼び起こす。ギルメラはただ人間を見つけて滅ぼそうとする。またか...また同じなのか?テティはそう自分に問いかける。



「なんだあ?俺はアリスにしか興味はねえよ」



ギルメラ...なんでここに!?ここはもう破壊し尽くしたんじゃ無いの!?」



だがそんな事に応える事なく、また一度雄叫びを上げた後に手を地面につく。その動作だけでも凄まじい衝撃が少し遠くの位置にいたテティ達にも伝わってくる。



「いや、あいつはフラフラと色んなところをウロついてはただ破壊をするだけのやつだ。あいつにそんなものは通用しないさ」



「またあいつに...仲間を...」



マブに励まされたとはいえ仲間を次々と葬られたテティの精神はもう限界と言っても良かった。テティはよろよろと前に出る。今度こそ..今度こそ楽に...。



「うひゃー!あいつ街をめちゃくちゃにした奴!とにかく逃げるしかねえな!」



バーリムは門を出すとテティとアンバーグをその中に放り込む。そして自分もその中に入りすぐさま門を閉じる。

門の先には海が広がっていた。



「逃げ切ったのか?」



「いや」



そのバーリムの言葉通り、数分するとまた空が裂けてギルメラが現れる。

ギルメラはリグを簡単に始末してこちらにきたのだろう。

ギルメラが砂浜に降りると大量の砂が飛び散る。



「あいつはどこにでも移動できるからな..その場凌ぎにしかならないって事だ」



「おいおお!ゲートは意味ねえっってのか!?そりゃ無いぜ!」



ギルメラは舞い落ちると数分ほど直立していた。ゲートで移動してから5分ほど経つと再び咆哮を上げてこちらに向かってくる。



「どうするんだ?」



「どうするって...逃げるしかねえだろ!あのさっきのやつ出せ!」



「お前、使うにはインターバルってもんがだな!」



「危ない!」


テティのその声でそう言い争っていたバーリムとマブはギルメラの方を見る。するとギルメラの大きな足が2人に向かって襲いかかって来ているのが見える。2人はダイブするように左右によける。大きな音とともに砂浜に大きな衝撃が走る。砂浜に大きな足跡が残る。



「少しの間時間を稼いでくれ」



「そんな!」



そう言うがマブはギルメラの前に立つ。まだギルメラはその場で止まったままだ。



「一発ギャグ!コンビニ!ウィーンいらっしゃいません!って来ないのかよ!」



マブが手で自動ドアの真似をしそう挨拶して一人で突っ込む。その場はシーンと静まり返った。

あまりにもしょうもなかったのか、ギルメラは勢いよくマブに突っ込んでくる。


「よし!入れ!!」



その合図とともにバーリムが門を開きテティ達がその中に逃げ込む。今度はまた魔物の壊れた街に着く。だが同じことをやっても結果は全く同じ。また空から裂け目を作りギルメラがやってくる。ギルメラはまた数分その場で静止すると同じように襲いかかって来た。

テティ達は全速力で逃げる。後ろからドシドシと音を立てて向かってくる。流石にこのままでは追いつかれてしまう。



「やっぱダメだな」



「ダメだな..じゃねーんだよ!」



「普通にまずいよなあ...これ。何か解決策はないのか?」



「と言っても...」



走りながら何か案を考える...のだがやはりこれと言った案が何も思い浮かばない。後ろを見るともうすぐ近くにギルメラが迫って来ている。



「くそ!もうこうなったらヤケクソだ!」



マブは体をギルメラの方に向けそう呟いた。まさか戦う気なのか?勝てるわけがない。もう誰も失いたく無いのに...もうこれ以上...。



「ダメ!!ダメ..!」



そう何度も呟きながらギルメラに向かうマブを見る。

マブはバーリムに扉を作らせると、テティを掴んで扉の方に放り投げた。



「ダメって言ったってもうこれしない。アルやホーの仇...俺たちはマックスヒーローズだぁぁぁぁぁぁ!!」



「ダメぇ!!」



マブはテティを逃すように扉の方に投げると、そういう叫びながらギルメラの方へ向かって行く。だが、その勇気も無慈悲にのギルメラの人踏みで消えてしまう。マブはギルメラの足の下敷きになる。血が沢山流れる。バーリムの扉で場所を移動する前に見えた最後の光景は、マブの勇姿だった。




「また...また...」



扉の先は全くどこかすらわからなかった。もう何も言えなかった。また一人になりとんでどこかに向かう。だがどこに向かう?行く宛もなくフラフラと彷徨うテティにはもう限界になっていた。結局誰も救えず一人になる。これの繰り返し。ワンパターン。自分が無力だからだ。

無力なのはわかっている。だがどうにもならないのだ。



「もう....どうしようもないよ」



どうしようも無い。ただそれだけが残っている。テティの心には何もないのだ。知り合いも消えてゆき空っぽになった器には何も残っちゃいない。

あるとすればそれただただ空虚なだけ。

もう生きる気力も消えかけていた。「何で」と何度も繰り返す皆はなんで無力な自分を残したのか。自分など何もできないというのに。

悔しい。悔しい。悔しい。この世界が憎い。自分も消えて仕舞えば楽だったのだがそれをさせてくれない。なんせなんでなんでなんで何で...。


「あの。すみません」


打ちひしがれるテティに誰かが近づいて来た。もう心が崩壊寸前のテティは逃げようともしない

テティがその者の方に向くとそいつは魔物だった。ピンクの色をした不思議な見た目の魔物。人型で目は2つある。一体何者何だ?変な杖を持っている。テティはそっとしておいてほしかった。だがその魔物は奇妙なことを口走り始める。


「あなたは...いい目をしています」



「...え?」



突然のその言葉に困惑する。まだ生き残りがいたのかという考えすらも既になくなぜこの終わりの世界にこちらに向かって来てそんな意味不明なことを言っているのか...?



「あなたなら、戻ってやり直せそうですね」



「戻る?やり直す?」



「ええ。あなたはやり直す事ができるでしょう。再び、このようなことにならないように...」



「え?待ってください!何を言って?あなたは一体??」



その質問にその魔物は黙ったまま杖を振る。白い木で出来ていて、先端が渦巻き状になっていて、その部分の真ん中当たりには赤い球体のようなものが嵌っている。なんだか不思議な感じがする。すると周りの様子がおかしい。いつの間にか周りが白くなっていきだんだん意識が遠のいて...。



「あなたなら未来を変えられる。そう信じています」



最後にその声だけが聞こえた。




✳︎


人間(ムシ)がいっぱいいるなあ」



「あ...え?」



「なんなの?あんた達!!」



気がつくと、アリスがゲルムに向かってこのような事を口にしていた。あれ?何で目の前にアリスが?そしてゲルムや七天聖の面々もいる。あれ?これって...。



「私の名はゲルム」



この見覚えのある光景は...。もしかして...。

いや...まさか?だがこの状況がそれを物語っている。なぜならここは、アリス達が魔物の世界に行く前なのだから。



「時が...戻ってる」




目の前のアリスやゲルムの面々を見て、テティはただそう呟いた。

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