七十三話 運命に抗う者
「酷い..ここもなの?」
「酷えな...」
ただただ「酷い」と言う言葉しか出なかった。もうすでにギルメラが荒らし回った後でボロボロの街だけが残っている。
魔物の気配も全くなく。おそらくほとんどギルメラにやられたのだろう。
「ユオは!?」
テティはそう言いながらキョロキョロする。ユオは生きているのか?それが真っ先に頭の中に浮かんで探すが、あの魔物で活気ずいた街に魔物一人いなかった。ただあるのは瓦礫の残骸のみ。
「こっちもあいつにやられてたか!って事は!!」
そういながらバーリムが何やら急ぎ足でどこかに走ってゆく。テティとアンバーグがそれについて行くと、大きな機械のある場所についた。だがその機械は壊れていて半分が鉄屑と化している。
「これ..なに?」
「これが...ゲルムが密かにギルメラを倒すために計画していた機械だ...だがもう壊れていて使い物にならないがな」
「そんな...!」
「とりあえず、誰かいないか探してみるか」
「ええ」
最後の期待を壊された意気消沈した。もうどのよううにしても、あのギルメラを倒す事はできないのか...。
「もう...どうしたらいいのか...」
「きっと誰か見つかればまた打開策が見つかるって!」
マブは常にポジティブというか、ただのアホなのかと言うか...。
だがそういう奴がいると雰囲気を少しずつ和やかにすると言うか...。テティも少しばかりは勇気づけられる。
「でもまたギルメラが来たら...どうするの?」
「そのときは...そのときだ」
これ以上あの化け物を止める手段は無いと言ってもいいぐらいだ。次来たら、もうおそらく...。
「こうなったのって、やっぱりあいつらにホワイを渡さなかったから...」
「でもあいつらを信じて渡してたらもっと良い未来になってたってのか?」
ただそう言っても結果論でしかない。こういう時、過去に戻れたらと思ってしまう。過去に戻れたら、もしくは...。
「この辺でいいか。少し休んだほうがいい」
「ええ」
そういえばギルメラからずっと逃げていたのでだいぶ飛んだとは思うが、そのぐらい飛んだのだろうか..?
疲れを意識すると、どっと溜まってきた疲れが押し寄せてくる。ああ、目を閉じてまた開けたらこんな世界じゃなくなっていたら...。
そう考えているうちに眠りについていた。
「アリス!」
目の前にアリスがいた。草原で手を振っている。何だか嬉しそうな顔でルビスもアンバーグもマックスヒーローズの3人もバニアもピロンもみんないる。オノマトピアのドカン以外のみんなもユオも何故かヘントールも...みんなが向こう側で笑顔でテティを待っている。
「アリス!!なんでここに??」
「何でって、言ってる意味がよくわからないんだけど?」
その質問にアリスは不思議そうに返す。なんだ、今までのが夢だったのか。今までにはは全て悪い夢。ギルメラに襲われ、みんな消えていって...。
「夢だったのね」
「テティ、へんな夢見てたの?」
「そうみたい」
「行こう!」
そう言いながらアリスはみんながいるところへ向かって行く。テティもそれを追いかけるがゲームがバグを起こしたかのようにノイズ音がして目の前の風景がメチャクチャになる。
「テティ!!」
その声でテティは目覚めた。あたりを見渡す。またあの地獄のような光景。先ほどのが夢だったのだと解ると、テティはぁ、とため息をついた。
「大丈夫か?うなされているようだったけど」
「ええ」
「で、これからどうするか?やっぱり生存者を探すのを続けたほうがいいのかな?」
「うーむ...」
「何だぁ?お前らだけか」
その事ともに現れた男は腕を組んでこちらをみていた。
その見覚えのある顔は会いたいかと言われるとおそらく誰も「会いたくない」と答えるであろう人物。
「リグ!!」
リグはアリスが居ないのを確認すると不思議そうに、こんなことを尋ねてくる
「おやおや、アリスが居ねえけど、どうしたんだ?」
「うるさいわね!」
「まあいい。無理やり聞きだすからな」
「あんたこの状況が分かってんの??」
「アリスがいりゃどうでもいい!アリスがいればこの世界がどうなろうと俺の知った事じゃねえ!!アリスはどこだ?アリスはどこなンダと!!アリスゥ!!!!!」
どんな状況に置かれてもアリス一筋なのはブレないというかなんというか..正直狂気以外の何にものでも無いのだが。
「ほんっと相変わらず気持ち悪い奴」
「なんだと?」
「それは同感だな」
「リグ...あんたの目的のアリスは...どこにいるか分からないのよ」
「うるせえ!!アリスの場所を教えてもらうまで引かねえからなあ?」
リグは狂ったようにこちらに向かってくる。今のパーティではリグを相手にまともに戦えないだろう。
ここに来てギルメラの他にも厄介な奴が来てしまった。
「へへへへ...アリスゥ!」
「本当厄介な奴が来ちゃったわね..!」
「任せろ!!」
そう言いながら意気揚々とマブが前に出る。こういう時は何故かいつもこのように前に出たりする。
「お前強いのか?」
「もちろん!」
バーリムの質問に自信満々に答える。そんな嘘をどこから...まあ本人は嘘だとは思っていないのだろう。自分を強いと過信しているのだろう。
いったいどうする?テティは解決策を考えていた。このまま戦わせたらおそらく勝てないだろう。一体....そうだ!
「分かった。アリスのいる場所に案内する。それでいいでしょ?」
「ああ」
そういうとリグは剣をしまって、歩き出したテティについて行く。横からマブが小さい声でコソコソとテティに話し出した。
「大丈夫なのか?さっきアリスの場所なんて知らないって!そっちが嘘だったのか」
「いえ、本当に知らないわ」
「じゃあ!」
「そうでもしないと!...もう誰も失いたくないから...」
その珍しく真剣なテティにそれ以上マブは何も聞かなかった。だがテティだって咄嗟に出た言葉でただのその場しのぎでしか無い。その後の事など何も考えてすらなかった。
「教えてくれるんだろうな?」
「ええ」
ただひたすら歩きながらこの後をどうするかをテティは考えていた。さて、どうしてものか...。
「グオオオオオオオ!!」
突然聞こえてきたその声はテティに再び恐怖を植えつけたあの声が。
空が割れ黒い異空間が現れる。そこから現れた声の主はこの全てが壊れた魔物の世界に降臨する。
「またきたの..?ギルメラ...」




