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六十九話 疑いの眼差し



「ギルメラ...ってあの!?」



「そう。四獣の中の1匹『冥界竜ギルメラ』奴が来て、あの世界は終わりを告げるだろう」



「尚更、行かなきゃっ!」



「行って何になるというの?あいつが暴れ出したらもう何も残らないのよ」



「それでも..みんなが心配だから...!行かないといけないの!」



そう言うアリスに手をそっと差し出し顔の前を通過させる。するとアリスは眠るように目を閉じて動かなくなってしまった。その様子を見て女の霊は安心したようにアリスを見る。



「よかった。これでいいの...これで...」






「おい、どこまで続くんだ?これ」



「さあな?」



奥まで進んだというのに、全く先が見えずにいるのはルビスとヴェラードの2人。アリス達とは違って、選んだ道が悪かったのか全く進めている気配がない。1時間以上は歩いているはずだ。



「なあ」



ルビスがそうヴェラードに呼びかける。前にいるヴェラードは「なんだ?」とルビスの方に向かずに歩きながらそう返す。



「お前って、あのラグナだったか?の味方なのか?」



唐突なその言葉にヴェラードは立ち止まる。唐突なその言葉に「何行ってんだよ?」と愛想笑いを浮かべながらルビスの方を見る。だがルビスが真剣な顔でヴェラードを見ている。



「あのラグナって奴が現れた時...」



『俺はァ!七天聖の序列2位!聖刻のラグナ!お前が星7を連れてるって言うやつだな?』



「この言葉、よく考えるとおかしいじゃねえか?あの時点で、一緒に居たのは俺とアンバーグ、アリス、テティと...そしてお前だ。あたりを見回したが人っ子ひとり居ない。だがあいつは一瞬で俺たちの中にホワイの存在...いや星7の武器の存在を認識した。なんであいつがアリス達が連れてるって知ってたんだ?」



「さあな!見てたか、誰かから聞いたんだろうな。きっとどっかで」



「あの時点で聞けたのは...あそこであの男の足止めをしていたお前だけじゃないのか?」



少しの間沈黙が起こる。疑われているというのにヴェラードはいつもの調子で表情一つ変えない。



「再開した時、結構ボロボロだったよな?でもおかしいんだよな」



「おかしいって?」



「戦ったにしては明らかに傷が浅すぎる。それはまるで...戦ったようにみせたかのようにな。そしてこの洞窟に入る時だ。あの時は岩の存在に驚いていたのもあったがあの数なら洞窟に入らなくても大丈夫だ。だがお前は真っ先にこんな感じの事を言ったな。『洞窟に逃げこめ』と。まるで閉じ込めるかのようにな...だからあえてお前と同行した」



ヴェラードははあ、と言いながらルビスの方に近づいてくる。もしかしたら証拠を隠滅するために抹殺を...。

と思ったが何も言わずにヴェラードは先に進んでいってしまった。


「おい!」



肯定も否定もせず歩き出すヴェラードをそう言いながら追いかける。何も答えぬまま歩くヴェラードを呼び止めるルビス。



「まあ、お前が好きなように思えばいい」



「お、おう...」



ヴェラードという男がルビスにはよく分からなかった。疑われても口封じなどはなく、ただ平然としている。




「あれ?」



向こうから聞き覚えのある声が聞こえてくる。少し遠くで見にくいが近づくとだんだんその姿がはっきりしてきた。



「ヴェラードとルビス?」



「テティにアンバーグ...とラグナのところの奴!何でこんなとこに?」



「まあ色々あってね...ってあんた達はまだここに居るのね」



「こいつが分かれ道で右っていうから」



「左は絶対違っただろ」



そんな掛け合いをしながらルビスはチラりとヴェラードを見る。本当に...怪しさはあるのだがいつものヴェラードだ。ヴェラードからテティ達に視線をもどして話を続ける。



「まあ、少しアクシデントが起きてな。まあここは一時休戦として、歩いてるところだ」



「そうなのか...」



敵だというのにそれを鵜呑みにして一緒に歩くなんて、お人好しさもアリスにだんだん似てきたような気がする。

見た感じ危なそうなものを持っていないし安全だと完全には言えないが今は大丈夫そうだろう。



「出口はどこにあるんだか」



「さあ?今は地下っぽいところだし歩いてればそのうち着くんじゃないの?」



「そんなうまくいくか?」



「わからないけど...うまくいくでしょ!」



そう言いながらアリスは手をグッと握りしめた。何だかこういう行き当たりばったりなところもアリスに似てきたような気がする。アリスとずっと一緒にいるとこうなってしまうのだろうか。

なーんてどうでもいい事を考えている暇はないのでとりあえず歩き出した。この辺は道が広めでレールのようなものはないが所々石が積み上がっているのが見えた。4つ...3つ...2つと上の段に行くたびに黒い石は数が少なくなるように積まれていて少し力を加えればすぐに倒壊してしまうだろう。



「上に行っている気がするが、本当に大丈夫なのか?」



進みながらアンバーグがそう、ぼやく。テティ達が落ちた場所...おそらく地下といったところから登っている感じはするがあまり出口に向かっているという感じがない。



「そーいやこの辺でたむろってるんだからお前はこの辺の地形分かんねーのか?」



「ああ」



アンバーグがゲイナスに聞いても全くあてにもならず「何だよ...」と不満そうにいいながら前を向く。



「くそう、何だってんだよ!」



「おい待て!」


見えない出口に走り出すアンバーグとそれを止めるヴェラードの声。

その時、アンバーグの目に前に凄まじい音とともに何かが通過した。それはすごい速さで通過し、そのなにかが通った後には全て消えて無くなった。



「は?」



何が何だか分からなかった。目の前にあった洞窟の続きは全て無くなり更地となった。今いる洞窟は半分だけが洞窟の状態という奇妙な姿になっている。果物をナイフで果物を半分にしたかのように、綺麗に何もかもがなくなっているのだ。取り除い洞窟の切断面は綺麗に残っている。外は夜になっていて月夜が綺麗に輝く。



「お、おう...とりあえず洞窟が消えて出口になったな」



「おい!あれ!」



ヴェラードが指先す方を見ると、何やら黒い獣のような怪物が大暴れしているのが見える。大きさはかなりのものでヴェラード達の位置からでも見えるぐらいの大きさだ。



「あっちの方って...ラグナタウンとか言うところがある場所じゃないか」



急いで向かうと、大きな黒い獣が大暴れしているという光景が見えた。


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