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六十八話 月光煌めきし獣魔


「えー?なになに?なんか面白そうな事してんのー?ねえねえ混ぜてよー!」



その元気な声はラグナをさらに苛立たせる。この底抜けに明るい声は突き抜けるように響く。

耳と尻尾を動かしながらラグナの方に歩み寄る。



「ルナ様ぁ!待ってくださいよ!」



その後を追って赤と青の悪魔が付いてくる。その悪魔達はルナに追いつくと。はあはあ、と息を切らしている。

この獣の耳の少女は七天聖の序列1位のルナ。その子供っぽい見た目と性格からそうは見えないがヴェラードやラグナより上だ。


「レフっちもライライも遅いよー」



「なんでお前がこんな所に居るんだって聞いてんだよ」



「なんでって...なんとなく?」



「なんとなくだと...?前からお前のそういう何も考えてないようなのが嫌いだったんだよ!」



「なんだよーボクだって色々考えてんだよー!何して遊ぼうかなーとか、何食べようかなーとか!はー考えたらお腹減って来たなぁー」



「テメエ!!」



ラグナはルナに向かって剣を振る。ルナは軽い身のこなしでそれを避けてしまう。

隣にいた悪魔2人は突然の攻撃にラグナを叱責するが。「ああ?」と返すだけで明らかに聞く耳を持たない。



「お前らは確か...赤いほうがレフとかいう奴で青いほうがライとかいう奴だったか?」



「え、ええ」



「お前らもルナの腰巾着で気に入らねえんだよ!」



「ラグナ様おやめください!あなたの身勝手な行動は毎回誰もが困ってるのですよ!」



「それじゃあ聞くけどなあ...ルナ(そいつ)はいいのかあ?あぁ??」



その言葉にレフもライも黙り込む。この2人はずっとルナという少女のお供をして来たためにルナも勝手なことばかりしているのは分かっているのだ。



「そういえば、潜入捜査の時に連れて行ったら一人で勝手に潜入先に突っ込んでいって潜入どころじゃなかったでアールな...」



「そうですね...ある時は勝手に何処かに行って一週間かえって来なかったりもありましたね...」



「ある時は敵の方につくこともあったな...お前は」



ノーブルやミーファ、メイキスがルナの勝手な行動を語って行く。そう言われてもルナは「そうだっけ?」と全く覚えていない様子だ。



「それでも誰も咎めない...いや『咎められない』のですからね」



「正直あの子に勝てるやつを探すほうがほぼ無理なレベルでアールからな...」



ヴェラード曰く「こいつを除いた七天聖の6人でかかってもまず勝てる見込みは無い」と言わせるほどの強さらしい。

話を聞きながらラグナのルナへの怒りはさらにまして行く。ラグナは黙ったままルナに近づき攻撃をまた仕掛ける。



「テメエはここで潰す!!」



「ラグりん、また遊んでくれるの??」



「その奇妙な呼び名をやめろ!」



「遊んでくれるって!行くよ!」



そう言うとルナは杖を空へと突き上げる。するとルナとレフ、ライの3人は緑の光に包まれる。

レフもライもラグナに向けて攻撃を仕掛けて行く。



「このクソが!!」



「ラグナの攻撃は確かにレフ、ライの両者に当たった。ニヤリとするラグナ。レフもライも何事もなかったかのようにラグナに攻めてくる。



「なんだあ?お前と一緒にいる事なんてほぼ無かったからお前のそれを知らねえなあ...」



「あは!ボクも遊ぶ!!」



杖を横に傾けて魔法弾を何発か打つ。ラグナはお得意の力を使わずその場に留まりながらその攻撃を弾く。

レフもライもすかさず攻撃を仕掛ける。ラグナはその場から全く動くことなく大きく剣を振りかぶって下に下ろした。大きな音を立ててレフもライも巻き込んで大きく衝撃を起こす。

だがレフもライもダメージを受けている様子はなく、ラグナの方に突っ込んできた。



「なっ!」



動揺したのかレフとライから一撃づつ貰ってしまう。くっ...と歯を噛み締めながら後ろに下がる。

おかしい、さっきも今も、致命傷までとはいかないがダメージは与えたはず。ラグナはそんなことを考えているうちにレフもライも一気に間合いを詰めてくる。少し後方に移動し距離を取りながら大きくラグナはスキルの名を叫んだ。



「柳斬気!」



そう言いながら振ったその剣はたしかにレフとライに直撃する。しかも致命傷ほどのあたりだ。これで終わった...!ラグナはそう思っていた。



「その攻撃じゃ...効きませんよ!」



スキルでできた煙の中からレフの方が何食わぬ顔でこちらに向かってくるのを見たラグナは少し横の方に移動した。だがその先にいたのは...。



「はああーっ!!!」



ライだった。ライはラグナに斬りかかるとラグナの肩から血が飛び散る。

ラグナは膝をつきながら肩を抑える。結構なダメージが入ったようだ。



「テメエ...なんで...」



「先程から移動する場所が、移動する軌道上なのが分かりました。そして自分達の攻撃を受けた時...あなたはそれを使わなかった」



「つまり自分が動いた軌道上で動いた少し前の位置に移動するのではないか...と」



「そうだ...俺のこれは5秒前の位置に移動できる...だがテメエ...ら...なんで平然としてやがる!」



ラグナは攻撃を仕掛けるのだが力も見破りられなんだかヤケクソになっているようだった。太刀筋も無茶苦茶だ。



「そもそも、能力が見破れなくても、あなた様には勝つのは不可能ですがね」



「なんだと...あまり調子に乗んなよ...!」



ラグナは何回も攻撃を行う...のだが全く効いている様子がない。力も知られて焦っているのか動きが少しぎこちなくなる。



「クソがあ..!」



移動を何回か行うが能力が割れている以上移動先に来ることが分かっていたのでレフが攻撃を行ってくる。



「この野郎が!!」



攻撃がヒットし体に傷がつくのだが、すぐに5秒立たずに修復されてしまう。



「なんだあ?」



「これがルナの加護...星7、『月夜ノ命』でアールな」



「あいつのは攻撃を受けてもその攻撃を上回る回復量ですぐに回復しやがる。ほんと敵じゃなくてよかったぜ」



「ええ...あの回復力を上回るのはほぼ無いと言えるので...無敵と言えるでしょう」



「メイキスも加護で回復してもらうでアール」



「なんであいつのを...!」



とメイキス達が会話しているうちにあっという間にラグナは追い詰めれられてしまう。何度攻撃してもその回復はあっという間にダメージを超えて完全に回復してしまう。

一方でレフとライはラグナに少しづつ攻撃を行っていく。



「終わりです!!」



そう言いながらレフとライで剣と槍を同時に振り上げる。ラグナはその場に倒れこんでしまう。



「これで...終わりですよ」



トドメを刺そうとレフとライはラグナに剣を向ける。だが後ろから聞こえた声でレフもライもそちらの方に向いてしまう。



「はーお腹減った!!!なんか食べに行こ!!!」



まだ戦闘中だというのにルナはそう言いながら回復をやめ杖をしまうと、何処かに去って行こうとする。突然のその発言にレフもライも話し合いを始めた。



「まずい!いつものルナ様の悪いクセが始まってしまった!どうする?」



「どうするも、ルナ様はああなったら戦いなんてするわけないだろ!!」



ラグナは隙をついて攻撃をしようとするが間一髪で2人に避けられてしまう。ハァ...ハァ...死にそうな顔で立ち上がりフラフラになりながら「来いよ...」とだけ呟く。



「運が良かったですね...今日はルナ様が許してくださるそうです」



明らかにそんなようには見えないがそう言いながらルナの元に走っていった。



「相変わらず...何考えてるのか分からないでアールねえ?ルナは」



「だから私もあいつは苦手だ」



「クソ...クソ...歩きながらメイキス達の方へ向かう。すると目の前に扉が現れ、中からゲノム達が現れた。アリス達を魔物の世界から脱出させた時にも使った、バーリムの持ちどこにでも移動できるという能力の武器の力だ。



「ゲッゲッゲ、見にきてみれば...無様だな」



ゲルムはバーリムと一緒にボロボロのラグナを見て嘲笑うような顔で見る。



「テメエ...」



倒れてはぁはぁ言っているラグナを見下ろして剣を取り出した。



「もうおそらく戦力にはならんだろう。消えていいぞ」



そう言うとゲルムはドラゴンバスターでラグナを一刺しした。ラグナは全く動かなくなってしまう。そしてまた扉に入り、その扉は消えていった。








-



「ここは?」



アリスが目を覚ますと不思議な空間にいた。周りは水の中のような雰囲気だ。息ができるのを見ると水の中では無いようだ。



「私が...助けたの」



前を見るとアリスを取り込んだ女性の霊がそこには立っていた。



「なに?どう言うこと!?あなは誰???」



「...シナ」



その名前を聞いてアリスは「え?」と返す。アリスはその名に聞き覚えがあるのだが、イマイチ思い出せない。



「あなたの事を知ってる!のだけど分からない!」



「もうすぐ来るから...災いが...」



「災い?」



「ギルメラが...もうすぐ来る」

武器紹介


魔移の剣


ラグナが使う武器。普通に攻撃をするほか、スキルで5秒前の位置に移動することができる。

能力と序列が見合った力なのだが、5秒なので見破られるとほぼ使いものにならな


月夜ノ命

星7の、ルナの杖。回復というありふれたものだが、回復量とスピードが凄まじすぎて攻撃してもすぐ無傷状態に戻せるぶっ壊れ武器。明らかにバランスがおかしすぎる

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