六十三話 破壊と絶望の使者
「...きろ!...起きろ!
「ん...あれ?」
「その声でアリスが目を覚ます。その声の主、アリスはピロンを見て奥の方に倒れているガーディスとルビスに目が入る。ガーディス達も起き上がってどちらも目をこすりながら「うーん?」と間の抜けた声を出す。
「おい、ホワイが居ないぞ!」
「何行ってるの?ラグナって奴がもうとっくのとうにホワイは...」
「いや、お前らが来るまでは奥の方に...なあ?」
そういう遠くの方からゴーンの声が聞こえる。その後に何やらドタドタという音がして、奥からゴーンとカルラが出てくる。
「ああ、たしかにここにホワイが...!」
「ああ、なるほど...そういう事か」
ルビスが何かが分かったようにそう言いながら頷く。
「どういうこと?」
「要は、誘導されたって事だな」
「誘導?」
「嘘でも俺たちに『ホワイを捕まえた』と言っておけば、嘘だと思ってもどこか不安を感じるだろう。そして確かめに来たところを...かっさらうっていう感じだろう」
「くそ...あいつら...!!!」
「でもどうするの??そいつらって強いんでしょう?」
「オバさんは黙ってて」
「オバさんですってぇ!?」
「また始ったよ」
バニアとテティのいつものやりとりを見ながら少し場が和やかになる。テティとバニアのやりとりをもながら、ふうと息をつく。
「それで、どうやってあいつから取り返すんだ??」
「うーん...?」
「ヴェラードと一緒に倒せば...」
その言葉が最後まで言い切られる前にコツ、コツ、という階段の音によりその話は中断される。誰もが階段に目を向け、そこからくる者を待つ。階段を降りてきたその男は誰もがこちらを見ているのを確認し「なんだ?」とだけ言った。
「あんた...ヴェラード!」
その男、ヴェラードは先程までラグナと戦っていたと思えないぐらいあまり傷がついていない。
手や足、顔などに少し付いているぐらいだ。
「あんた!無事だったの?」
「ああ、まあな」
「あなたがいれば勝てるかもしれないの!力を貸して!」
来てから唐突にそんな事を言われて、ヴェラードは少し困惑するが、すぐにその答えを出した。
「わかった。あいつのやり方には少しやりすぎなところがあるからな」
「おいおい、なんでそんな簡単に了承しちゃってんだよ」
その了承に口を挟んできたのはルビスだった。
「だって、お前もあいつと同じ目的なんだろ?それは裏切りになるんじゃねえのか?」
「あいつの言動には目に余るものがあるからな。あのお方もあいつの行動には目をつけてるんだ。やつのこうどうには
「あのお方?」
「あ、いやこっちの話だ」
「で、どうするんだ?ヴェラードが加わったら勝てる確率はだいぶ上がるだろうが、あんなバケモンを倒せんのか?」
「ああ、俺を含めて何人かでやれば...な」
「よお、どうした?揃いも揃って」
ホワイを連れたラグナは、メイキス、クラウ、ミーシャ、ノーブルの4人に遭遇すると、そう言いながら手を上げて横に振る。
「ラグナ!お前それ、星7の!!」
「さすが序列2位でアールな」
「これであのお方もお喜びになる」
「じゃあ」といいメイキスは手を伸ばす。だがラグナはその手を振り払ってしまった。
あ予期せぬ事態のメイキス達もラグナの方を睨む。
「お前らに渡すとは言ってねえ」
「はっ?」
「こいつは俺が貰っていく」
「今までの命令無視に加えて、裏切る気か!?」
まさかのラグナの一言に激昂するメイキスに両手でそれをなだめる。だがメイキスの怒りは収まらない。
「なんだと!」
「ルナはどうだ?あいつは自由にやってるじゃねえか」
「あいつは...特別だからねえ?」
「あいつが好きにやってんだから俺も好きにさせてもらう」
「いいのか?あのお方がなんて言うと思う?」
その言葉に今まであんなに言っていた威勢は一気に静まった。
あなんだか少し震えているようだ。
「う、うるせえ!あのお方がどう言おうが、俺の好きにさせてもらうぞ!」
「何をするつもりですか?」
「させるかァ!!」
メイキスが剣で攻撃するがホワイを連れたまま、簡単に避けられてしまう。ピョンピョンと飛ぶように後ろに下がりながらメイキスの連続して振られる剣を避ける。
メイキスに気を取られているうちにクラウも参加するが、攻撃が当たる寸前で、ラグナはフッとそこから姿を消した。
その姿を消したラグナは、攻撃を最初に避けた所に姿をあらわす。
「お前らだって知ってんだろ?俺のこの槍をよお」
「ちっ!どういう仕組みかは知らないがそいつは本当に厄介だな..!クラウ!ノーブル!一気に行くぞ」
「了解ー」
そういうとクラウは天から大量の隕石を降らせてくる。その大きさはそこまで大きいものでは無いが、何十もあり避けるのは相当困難だろう。
「おい!それ私達も巻き添えじゃねーか!」
「メイキスとここで同じ墓に入るのでアールな!」
「んなもん嫌に決まってんだろ!!」
ラグナは走りながら隕石を避け、当たりそうになるとまるで瞬間移動かのように後ろへと下がる。
それを繰り返すことで簡単に避けてしまう。
「この野郎が!!」
メイキスも隕石に当たらないように近づきラグナに攻撃を入れようとする。だが隕石が邪魔するのもありなかなかたどり着けない。
「そんなに会いてえならお前んとこに行ってやるよ!」
ラグナがそう言うとメイキスのとことまで行き槍を腹のところめがけて突き刺す。腹部からは、血が流れてくる。メイキスが攻撃を仕掛けようとしてもラグナは腹に刺した槍もろとも消え、メイキスの少し手前のところにまた現れる。
「ほんと何が七天聖だ。俺とヴェラードだけで十分なのによお」
「もう許さんのでアール!」
ノーブルは少し小さめの杖を取り出し本を朗読し始める。
「あの..ノーブルさん?あなたのそれって...」
「ああ、確か『未来攻撃』だったね。数分または数時間後にノーブルの攻撃が来るっていう」
「つまり...今は意味のないということですね」
それを聞いたラグナは笑い転げてしまう。ピンチな状況で役に立つものでは少なくともない。
「ははは!ほんとお前のは相変わらず面白いよな!」
「ラグナ!いい加減やめましょう!!」
「おっと、いいのか?」
そう言うと倒れているメイキスに槍を向ける。ラグナは本気のようだ。先端をメイキスの首に刺して、そこからも血が流れ出してる。
「あなたは、何故こんな事をするのですか?」
「お前らには関係ねえ」
「誰かの命令ですか?」
「お前らには関係ねえ」
「一体何を!?」
「俺はただ、破壊をするだけだ。全てを壊し欲しいもんは手に入れる」
何を言っても同じ事しか言わないラグナに、ミーファはため息をつく。
「これは警告だ。次に邪魔をするというのなら...今度は容赦しねえからよ」
そう言ってホワイの手を掴んだままどこかに行ってしまった。
「で?これでいいのか?」
「ああ、上出だ」
ラグナのその言葉に、その魔物の女はそう言って舌舐めずりをした。
武器の説明コーナー
雷神冥
メイキスの扱う雷を纏わせ戦う武器。技も雷技がほとんどだが。違うものも。
メテオロッド
クラウの扱う武器。隕石を好きな時に降らせる...のだが広範囲すぎて仲間や自分にも被害を被る事のある少し厄介な武器
未来攻撃
ノーブルの扱う武器。数分や数時間後に攻撃を行うと言う少し使いにくい武器。これで七天聖まで上がれたのだからすごい事この上ない。




